ゴジラXコング 新たなる帝国

GODZILLA X KONG:THE NEW EMPIRE

 

〔勝手に評価 = ★★★★ = 潔い!!〕

 

2024年/アメリ映画/117分/監督:アダム・ヴィンガード/製作:メアリー・ペアレント、アレックス・ガルシア、エリック・マクレオド/製作総指揮:アダム・ヴィンガード、ジェン・コンロイ、ジェイ・アシェンフェルター/脚本:テリー・ロッシオ、サイモン・バレット、ジェレミー・スレイター/撮影:ベン・セレシン/出演:レベッカ・ホール、ダン・スティーヴンス、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ゲイリー・ホトル、アレックス・ファーンズ、ファラ・チェン、レイチェル・ハウス、ロン・スミック、シャンテル・ジェイミーソン ほか

 

【気ままに感想】

 

原産国の日本が描くゴジラの姿が『ゴジラ-1.0(2023)』で原点である『ゴジラ(1954)』に回帰し、人類の味方としてではなく禍々しい悪魔として、怪獣映画という視点よりも人間ドラマを重視しようという今この頃にあって、アメリカ、ハリウッドの『モンスター・ヴァース・シリーズ』がどんどんと“怪獣映画としてのゴジラ”の道を突き進んでいる…あらためて言うまでもありませんが、ベクトルが真逆に近いくらいに違っていることが、何とも不思議な感じをぬぐえません。

ほとんど同時期に別物、と言ってよい“ゴジラ映画”を日米それぞれの作品で観ることができる…今まで考えられなかった…というと大げさですが、感慨深いものがありますね。

もともと、ゴジラという水爆核実験で生まれた“怪獣”は、その生まれのサガからも「人類世界をリセットするほどの脅威」となった核兵器のメタファであったのですが、昭和のゴジラ映画は、いつの間にやらそんな“出自”がどこかに行ってしまって、むしろ「人類世界をリセットするほどの脅威から人類を守ってくれる」…人類というより単なる1種のみではなく地球環境そのもの、と言った方が正確ですが…立場が逆転していきました。

アメリカ映画、というと「アメリカン・ニュー・シネマ」や“9.11”の影響を受けた作品群のように決してハッピーではない作品も結構作られ、好まれる傾向がありますし、“冷戦”の後遺症による“異世界からの侵略者”恐怖症作品も多いですが、やはりどちらかというと、単に“残念!”で終わるよりも、ハッピー・エンドとまでは言わずとも何らかの明るい兆しが好まれる…のではないかと思います。

そんな風土からも、“恐い”だけのゴジラより、結局は“敵を倒してくれる”ゴジラ像の方が受けが良いのでしょう。

ゴジラが“アメリカが造った水爆”で生まれた怪獣という出自(モンスター・ヴァース・シリーズではこっそり設定が差し替えられていますが…)からしても、辛気臭い“日本の”ゴジラにはむしろ違和感があるのかもしれません。

 

とは言うものの、

“日本の”“昭和”ゴジラが、作品を重ねる度に、いつの間にか“正義の怪獣”となって“悪者”を倒す、いわゆる「怪獣映画」となって、さらに対象となる観客ターゲットもどんどん「低年齢化」していって(サイケでキッチュ(褒めてます)な『ゴジラ対ヘドラ(1971)』を除く)、お子さまたちの年中行事『東宝チャンピョンまつり』へと移行していったのと同じように、モンスター・ヴァース・シリーズもどんどんと“怪獣だらけ(だけ)”の作品と化していったのは…ちょっとあきれるくらいに“いさぎよい!!”

もう『ハリウッド・チャンピョンまつり』と言って過言ではありません!(誉め言葉になってないけど)

怪獣たちが大暴れすればするほど、人間ドラマの部分がおざなりになって行き、現実的な世界観がどんどんと歪んで行くのは…ちょっとやりすぎじゃね?とは思いますが。

ついに本作においては、“孤独”が身上?だったキング・コングのはずなのに、「おっきなおさるさん」が大挙して出てきて、(俗世的な)文明と切り離されて生きてきた人間を支配しかねない脅威となっているシーンはすっかり『猿の惑星』関連作品。

海の中に大きな穴が開いていて、その先に地底世界がある…というのはまだしも、そこに行くのには何だか異次元トンネルみたいなものを潜らないといけない(なぜ??)、怪獣がそのトンネルから出入りするその様は…言わずと知れた『パシフィック・リム』シリーズ。

『ジュラシック・パーク(ワールド)』シリーズのまねっこはもちろんですが、いつかどこかで見たビジュアルが、ブラッシュアップして(さすがにビジュアルの技術的進歩はスゴイ)見せられているような感覚がず~っと続く作品です。

そんなデジャブ感覚満載の作品ですが、飽くことなくほぼ2時間を過ごすことができるのは、まさに、ほとんど何も考えなくていい…怪獣さんたちのプロレス!!

ホントウに困った作品です。

怪獣さんたちが、歴史的建造物や文化財、世界のシンボルなどを…というか“などに限って”壊していくのは我が国の怪獣映画の伝統?をきっちり受け継いでいるので、観光パンフレット的な意味でも関心を保つことができるのですが、さすがに、ゴジラがイタリアのコロッセオに「くるん!!」って収まっている姿は、わんちゃんやねこちゃんの“おうちでねんね”みたいで、緊張感が失われ、思わず「ゴジラが媚びをうってどうする!!」と、いらぬ恫喝(ツッコミ)を与えてみたくなるのは致し方ありません。

エンドロールには続編をうかがわせるシーンはなかったのですが(版権の関係もあるのかもしれませんが)「隙あれば続編を!!」と考えていそうなレジェンダリー、もしも続編があるのであれば、このまま「怪獣プロレス」を続けていくのか、それとも“多少は”原点回帰の?シリアスドラマを取り入れるのか??

日本のゴジラも動向があやしい感じがする(笑)中、今しばらくは怪獣映画のバリエーションを楽しめる機会があってもいいのかな~、と思いますね、日本人としては…。

なお、コング(手にはアーマー)とゴジラが並んで突っ込んで行く姿を正面から描いたポスターなどのビジュアル…言うまでもなく、ロボットアニメや戦隊シリーズの“決めポーズ”そのもので、やっぱり『チャンピョンまつり』を意識しているよね~、『チャンピョンまつり』愛(?)を感じる作品です。その点も“潔い”と言えます。

 

さて、ほとんど怪獣(プロレス)以外に語る要素は何もない感じがする(科学的な設定やメカなどに関してもイイ加減)本作ですが、俳優についていくつかコメントを。

まずは、コングのお友達、ケイリー・ホトルちゃん。前作に引き続き、人間の言葉を話せないコングとは手話を通じてコミュニケーションする少女を演じていますが、すっかり大きくなりましたね。

聴覚に障がいがある俳優さんだそうですが、そのせいか表情は豊かで、ほとんど1人で「人間ドラマ」部分を担っていたように思います。

演じることができるキャラの幅は限られてしまうかな?(もっとも、今の映像技術なら彼女くらいの演技ができれば違和感なく“しゃべっている”シーンも簡単にできてしまうのでしょうが)とも思いますが、一方で聴覚障がいがある方を扱った作品も結構コンスタントに創られているし、障がいや人権に関する意識や関心が向上していることを考えると、活躍の場も増えるのではないか??

期待の若手の1人かもしれませんね!

その他の俳優さんたちは…すっかり怪獣さんたちにお株を奪われてしまって、ほとんど記憶に残らない…(笑)…何だか「ワーワー」言っているだけ?の演技になってしまったのは…これは脚本のせいでしょうね。

その中でも、やっぱりこの人!

ブライアン・タイリー・ヘンリー!

本シリーズの主要登場人物という役柄に加えて、『エターナルズ(2021)』『ブレッド・トレイン(2022)』など、ときどき目にするようになった、おもろいオッサン。

シリアスな役もちゃんとこなせて、多彩。普通、多彩な役者さんって、かえって没個性的になってしまう感じがしますが、この人はちゃんと存在感を示す人ですね。

ああ、あと、あっさり“〇んでしまう人”アレックス・ファーンズ!

こういうパニック系の映画には欠かせない、キャラ!!

危機的状況の中でも頼もしい、知恵とテクニックを持っている“頼れるキャラ”…なんだけど、途中であっさりと…というか思わぬシチュエーションで○んでしまう人。そのことで、中だるみ感を払拭して緊張感を維持してくれるキャラクタです。

こういう人がちゃ~んと居てくれることで、ご都合主義だらけの本作も一定の緊張感は保てました。

貴重ですね!

とはいうものの、やっぱり本作の主役は“怪獣さん”たちです。

新しく登場した怪獣さん、倒されたはずの怪獣さんの復活、そしてお馴染みの怪獣さんなど…本作にはたくさんの怪獣さんたちが登場します。

まさに、大進撃!

コングに(血縁関係はないけど)小さな子どものおっきなおサルさんのお友達ができたのですから、次回作ではいよいよゴジラには○ニラが…次回作ありますかね??

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

★     失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5