マッドマックス:フュリオサ
FURIOSA:A MAD MAX SAGA (PG12)
〔勝手に評価 = ★★★★ = 殺伐とした世界でのピュアなお話〕
2024年/アメリカ映画/148分/監督:ジョージ・ミラー/製作:ダグ・ミッチェル、ジョージ・ミラー/脚本:ジョージ・ミラー、ニコ・ラソウリス/撮影:サイモン・タガン/出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース、アリーラ・ブラウン、トム・バーク、チャーリー・フレイザー、ラッキー・ヒューム、ジョン・ハワード、ネイサン・ジョーンズ、ジョシュ・ヘルマン、アンガス・サンプソン ほか
【気ままに感想】
ジョージ・ミラー御年79歳!!
超高齢化社会…というか『人生100年時代』にあっては、まだまだ“若い”…と言えるのかもしれませんが、でも、もうほぼ80代。
それでいて、一貫してテンション高い作品を創ってしまうなんて…というか、むしろシリーズ第1作『マッドマックス(1979)』の方が大人しいくらい??
もちろん、映画技術や社会環境の変化は著しい…何せかれこれ半世紀近く!前の古い作品ですから、第1作はすっかり「いわゆる『名画』」骨董品…比較するのは野暮とはいうものの、本作の迫力は半端ありません。
エネルギーに満ち溢れた本作を、老人パワーで創ってしまった…ということについては、素直に驚くべきでしょう。
特に、冒頭の情け容赦のない残酷シーン、どんどん出て来る汚くてムサくて○ったおっちゃんたち、食料も水もない世界でしぶとく生きていくマッチョな人々と砂漠の中のユートピアといったイイ加減な設定…目を覆うばかりのトンデモなシーンが連続して、マッドマックス魂に溢れた始まり方(に止まりませんが)は一見の価値あり。
むしろ、イマドキのクリエイタの方が大人しくて理性的なのかもしれません。老害が進んだ方が、もしかしたら過激になってしまうのかも??
このままお話が進んでいったら、いったいどこに行ってしまうのか???と、ある種の不安さえも覚えていたら…何と!!!
純愛と家族愛の世界へ!!
80歳のお爺さんがやりたかった作品のテーマが、純愛と家族愛…まさに“愛”だったなんて…まるっきり梶原一騎(やはり古い)の世界に迷い込んだかのような錯覚と戸惑いを感じること、間違いありません。
泣く子も黙るフュリオサ大隊長が、金髪の原子爆弾シャーリーズ・セロンからキッチュでバービーなアニャ・テイラー=ジョイにチェンジして、その華奢な身体つきから不安を感じていた人も多いと思うのですが、意外に問題とならなかった(いや、問題にはなったか…(笑))のは、その“眼力”!
アニャ・テイラー=ジョイのバービーな瞳に見つめられたら、シャーリーズ・セロンとは違った意味で「参りました!」
男どもの戦意は別のものに代わってしまう…。
どうしてシャーリーズ・セロンのフュリオサをチョイスしたジョージ・ミラーが、ほぼ真逆のようなキャラクターのアニャ・テイラー=ジョイを本作の主役に選んだのか…?
それはまさに、本作のテーマが純愛と家族愛…“愛”だからだと、(一応)納得するわけです。
と、言う風に考えると、本作において最大の“欠点”…というか批判の嵐を受けている点である、「クライマックスの戦闘シーンがすっかり省略されてしまっている!!」というのも、実はジョージ・ミラーにとっては、「いや、そこんところは、本作のテーマと直接関係がないから省いただけだよ」という感覚であって、少しも“非難されるべきことではない!”という、ことなのでしょう。
実際、フュリオサにとっては、クリス・ヘムズワースを罠にかけたところで「大隊長」としての役割は終了しているわけで、その後は集団戦より、むしろ個人的な恨みを晴らすためにタイマンできっちりケリをつける…が最も重要なイベントであったわけです。
その点では、ジョージ・ミラーは徹底して“フュリオサの物語”を語っているのであって、観客としてはガックリしたかもしれません(これは間違いないけど)が、作品としての欠点には決してならなかったはずなのです(おそらく…)。
とはいうものの、やっぱり、2時間以上にわたってシビアで乾いた戦闘シーンを見せつけてくれたジョージ・ミラーには、ないものねだりをしたくなるのがサガ。
本作が思ったほどヒットしていない…という残念なニュースも耳に入って来ています(正確には、ネットに溢れています)が、そのこのところは製作陣とファンとのすれ違いが起きている、ということでしょうか。
世界を原始時代にリセットしてしまった大戦争からしばらく後、地球上のほとんどの地(もしかしたらオーストラリア限定…かも?)が荒れた砂漠になってしまった中で、誰も知らない水と緑が豊かな場所『緑の地』を少数の女たちが守って暮らしていた。
ある日、『緑の地』をバイクに乗ったならず者たちが発見!
ならず者たちを発見した少女のフュリオサ(アリーラ・ブラウン)は、『緑の地』を人に知られてはいけない、と一人で果敢に戦うが、ならず者たちにあっさりと攫われてしまう。
娘を奪還し、秘密を知ったならず者たちの口封じをすべく、フュリオサの母、メリー・ジャバサはライフルを抱えてバイクで追いかけ、次々にならず者たちを射殺していくが、惜しいところで、2人取り逃がし、ならず者たちの親玉、ディメンタス(クリス・ヘムズワース)と凶悪で自分勝手なバイク乗りたちがたむろする野営地にフュリオサは連れていかれてしまいます。
人肉さえも食料とするバイク乗りたちがディメンタスにフュリオサを差し出しますが、実は幼い娘を亡くしていたディメンタスはその凶悪な性格とは裏腹に、フュリオサに娘の姿を見出して、勝手に『リトルD(ディメンタス)』と名付けた上に、娘の形見である“くまちゃん”のぬいぐるみを与えて養おうとします。
しかし、フュリオサが捕まったその夜、激しい砂嵐の中、メリー・ジャバサは母親のカンをフルに活用してフュリオサが軟禁されているテントに忍び込んで娘の奪還を果たします。
ですが、さすがに多勢に無勢。
○ったバイク集団は逃げる二人を執拗に追いかけ、メリー・ジャバサの背中を燃やし、負傷したメリー・ジャバサはフュリオサを逃がすけれどもディメンタスの一味に捕縛され、磔にされてしまう。一旦は逃げ出したフュリオサだけれども母を助けんがために危険を冒してディメンタス一味に立ち向かう。けど、あっさりと捕まってしまい(子どもだしね)、目の前で母を惨殺される。
母の惨殺を見せつけられたフュリオサはリトルDとして生きることを断固拒否!檻の中の生活となります。
一方、『緑の地』の秘密を守り通したメリー・ジャバサとフュリオサ。ディメンタスたちは何とかして『緑の地』を探そうと躍起になるけど、その途中で真っ白いお兄さんに出会い、ほかにも水と緑が豊かな『シタデル』という場所があることを知ります。
おびただしい数のバイカーを引き連れて『シタデル』の乗っ取りを試みるディメンタスたち…だったのですが、○ったバイク野郎どもが“普通の人”に見えるくらい、けた違いに異常なイモータン・ジョー&ウォー・ボーイズの姿にビビったディメンタスたちは、『シタデル』奪略に失敗した腹いせに未だに石油の供給を続けている『ガスタウン』を乗っ取り、イモータン・ジョーとの共存を交渉します。
イモータン・ジョーはディメンタスの提案を受け入れますが、その代わりに『リトルD』ことフュリオサをディメンタスから取り上げ、イモータン・ジョーの花嫁の間に押し込めます。
囚われの身となったフュリオサは、内部の助けも借りて何とか逃げ出し、ウォー・ボーイズの中に紛れ込んで身を隠し、成長をしていきます。
すくすくと成長して、やがて、ウォー・ボーイズの中でも頭角を現すようになったフュリオサは、男たちに負けない戦闘能力の高さとメカにめちゃ強い技術力を活かし、護衛隊長のジャック(トム・バーク)の信頼を勝ち取ってその片腕となっていくのですが…。
製作費がなかったからこそ、殺伐としたオーストラリアの大地を背景に製作したであろう『マッドマックスシリーズ』(マジでオーストラリアの砂漠は厳しい…)。
そのご都合主義?の設定が、今ではすっかり“未来の地球”として受け入れられていることが何よりもスゴイ!ことであった(=逆手に取った画期的な手法だった)のですが、それが今の映像技術を駆使して創られると、説得力が際立ってきて『マッドマックスシリーズ』が示した未来の姿がリアルなものとして伝わって来ることにあらためて感銘します。
『マッドマックス2(1981)』と『ブレードランナー(1982)』が相次いで公開されてからは、それ以降は、世界の未来は『マッドマックス的未来』か『ブレードランナー的未来』のどちらかに枝分かれしていって、まあ、ほとんどどっちかしかない未来…になってしまいました。
その、元祖“世界の未来”である『マッドマックス』シリーズがこのように続いていくことが、まずもってビックリするのです。
実際、ありがたい話であります。とはいえ、そろそろ誰か、『マッドマックス』でも『ブレードランナー』でもない未来を描いてくれないですかね~。
そんな変な期待も感じてしまう作品でした。
登場人物については、何といっても『リトルD』こと、アリーラ・ブラウンちゃん。
NETの情報によると2010年生まれということですので、御年14歳。本作への出演時は10歳ちょっとだったと思いますが、その可愛らしさだけでなく、眼力についてはかなりのもの。アニャ・テイラー=ジョイにしても、前作のシャーリーズ・セロンにしても『フュリオサ』役には“眼力”が必要、それだけで多くを語る能力を求められますが、しっかり応えていました。クリス・ヘムズワースならずとも、思わず“リトル○”と名付けてしまいたくなる美少女です。
オーストラリア出身の俳優さんということで、今後どのような活躍をさせるのか、ということですが、本作がステップになってくれれば…と思います。
あと、語るべきは…事情アリのフュリオサを庇って自らの相棒(色々な面で)であり、後継者として育ててきた、大隊長ジャック役のトム・バーク。あまり見なかった役者さんですが、本作で見事大役を務めました。
素顔では結構優しそうなオジサマですが、寡黙で頼れる、アクションだってこなしている本作…大変だったかもしれませんね。
ジョージ・ミラー大先生は、それこそメル・ギブソンを発掘した人ですし、前作のシャーリーズ・セロン、アニャ・テイラー=ジョイとこのトム・バークのカップルにしても、役者の意外な面をうまく活かしてキャスティングしているような気がします。
トム・バークもこれを機に、役者としての活躍の場を広げてくれるといいですね。
そして、最後に、クリス・ヘムズワース。
『ソー:ラブ&サンダー(2022)』では、実の娘と共演して見事なマッチョのすっぽんぽんを晒したり、三枚目を突き進んでいるように見えましたが、さらに、本作でも一皮むけました??
汚くて、○った人々にも決して負けないインパクトを与えることができました。
これだけ濃いキャラクタが大挙して出て来てる本作において、“キャラが負けない”というのは大したものです。何せ、『イモータン・ジョー』を差し置いて、本作の“敵役”を演じきったのですから。
もう、恐いものはありませんね(笑)。
★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品
★★★★ 傑作!こいつは凄い
★★★ まあ楽しめました
★★ ヒマだけは潰せたネ
★ 失敗した…時間を無駄にした
☆は0.5