こんばんは!
経営戦略と戦略会計で会社を変える、FSAコンサルティング株式会社社長の谷川俊太郎です。
先週親知らずを抜いたことを書きましたが、幸いあまり痛みはでませんでした。ですが、抜いたところに違和感があります。痛いわけではないんですが。鬱陶しい感じですね。他も抜いたらどうなるんだろう…。
そんなことはいったん忘れて、今日は水曜日!【他社戦略】更新していきます!
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【記事要約(平成29年11月24日 日経MJ P5 より】
パイロットコーポレーションのこすると消える筆記具「フリクション」シリーズ。主力のボールペン「フリクションボール」は2017年に国内発売10周年を迎えた。画期的な機能が受け、ビジネスパーソンや学生を中心に広く浸透した大ヒット商品の起源は30年余りの歳月を遡る。
フリクションの消える仕組みはインクにある。インク自体を取り除くのではなく、熱による反応で無色透明に変える。
1975年に開発したインクは粒子が大きく、ペン先から出すのは難しい。筆記具には向かないため、玩具や飲料の包装などに使われてきた。その後、極小粒子の開発に成功し、02年にようやく温度で色が変わるインクのボールペンを初めて売り出した。黒いインクが摩擦で赤や青に変わるペンは子供に面白がられたものの、商品としては「一時の流行にとどまっていた」(営業企画部の渡辺直美係長)。
「別の色ではなく透明に出来たら間違いなく売れる」。行き詰っていた状況を一変させたのは欧州拠点でマーケティングを担当するフランス人社員の一言だった。
フランスでは子供の学習用筆記具に万年筆が使われている。修正には消去ペンを使うものの、重ねが気ができないため、上書き用に油性ペンも必要になる。消して上書きもできるペンがあれば、3本の筆記具が1本で済むことになる。
製品化で求められたのはインクの温度変化への耐性を高めること。温度の変化に敏感すぎると、知らない間に文字が消えていたり、消した文字が復活したりする。5度の違いで色が変わっていたインクを改良し、05年にセ氏65度で完全に消え、マイナス20度まで色が戻らない「フリクションインキ」を開発した。
17年4月末にはシリーズ全体で世界の累計販売本数が20億本を突破した。
「広く受け入れられたのは便利を売ったから。他にも消えたら便利と思われる商品にチャレンジしたい」(渡辺係長)と野心的なパイロット。消えることが売り物のフリクションに対し、消費者からは「文字を消えなくできないの?」という難題が寄せられている。
(記事要約終わり)
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「文字を消えなくできないの?」ってだったら普通のボールペンを使おうよ…。でも、そんな声を受けて今度は一定時間後には消えなくなるインキを開発できたりして。それは便利なような、不便なような。
フリクションは私も愛用しています!ペンをくるっと回して後ろのラバーで擦るだけで消えるのですごく便利なんですよね。手帳とか、メモ帳とか、そういうものに使っています。もちろん、消えたらまずいものには使わないようにしていますが。このフリクションの開発、30年あまりの歳月がかかっていたんですね。あきらめずに開発した、そして最初の販売(色が変わるボールペン)であまりうまくいかなかった経験にも負けず、「便利」なことを訴求してヒットさせたのはスゴイと思います。
「広く受け入れられたのは便利を売ったから。」という点がミソです。最初は「面白文具」なだけだったのに、「便利」を売ることで累計20億本のヒット商品になりました。きっとお客様がこのフリクションを使う姿をイメージしながら作ったのでしょうね。
では、今回注目した点は以下のことです。
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【記事で特に注目した点】
お客様のTPOを考えて商品開発をしている点
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<注目した背景>
今回これに注目した理由の理論は佐藤義典先生の、「戦略BASiCS」からです。以下、「戦略BASiCS」を簡単に説明します。
*例によって、理論が分かりにくかったら、 佐藤義典先生の理論のせいでなく、私の説明の力量不足です。その場合は、佐藤義典先生の著書を是非読んで下さい。
戦略BASiCSの解説
この「戦略BASiCS」は、佐藤義典先生の中核的な理論です。ですが、この理論、見た目は簡単でも、非常に奥が深いです。ですので、ここで書くのは、あくまでもさわりのところだけです。詳しく知りたい方は是非佐藤義典先生の本を読んでみて下さい。
「戦略BASiCS」とは、経営戦略・マーケティング理論は世の中に数多ありますが、まとめると5つのパターンに分類され、それを再構築した経営戦略理論です。そして、その5つを一貫性と具体性を持って考えることで強い経営戦略ができるという実践理論です。その5つは以下の通りです。
Battlefield (戦場・競合)
Asset (独自資源)
Strength (強み)
i
Customer (顧客)
Sellingmessage (メッセージ)
頭文字をとって「BASiCS(ベーシックス)」です。それぞれを簡単に説明すると、
B :自社が戦っている戦場・戦っている相手(競合)を明確にし
A :競合が真似できない強みをささえる資源を構築し
S :資源を強み(自社から買ってもらえる理由)にし、
C :自社の強みを選んでくれるお客様に対し
Sm :メッセージを伝えて選んでもらおう
とこのような考え方で構築される理論です。「お客様(C)が、競合(B)でなく、自社を選んでもらう理由を強み(S)とし、それを独自資源(A)で支え、それを伝えよう(Sm)」という言ってみれば当たり前のことです。ですが、これを自社で考えると難しいです。この理論、すべてにおいて「一貫性」を持つことが重要です。例えば、とても高品質なワンピースを作れる縫製技術(A)があるが、それを「ウチの強み(S)は『安さ』です!」といって売り出していたらどうです?『安さ』といっても、高品質なものです。ユニクロと比べて安いのでしょうか?しまむらと比べては?こう考えると、この会社は、「独自資源(A)」と「強み(S)」の一貫性がとれていないですよね。
一貫性を5つ全てにおいてとるというのは、非常に難しいです。この一貫性ですが、以下の「3つの差別化軸」で考えると一貫性を取りやすくなります。
※3つの差別化軸
佐藤先生の理論では、上記強み(S)のパターンは大別して3つしかないそうです。
①商品軸:(競合より)高品質・新技術
②密着軸:(競合より)個別ニーズに対応
③手軽軸:(競合より)早い、安い、便利
強みはこの3つのパターンしかありませんので、これを考えることで一貫性をとっていくことができます。
例えば、先ほどの縫製技術の話でしたら、他社よりも「破れにくい」という強み(S)を生み出せる技術力(A)があるなら、安くするのではなく、高くても「破れにくい服を欲しがるお客様」(C)を探す。といった感じです(具体性はないですが…)。これは①商品軸の例ですね。このように、自社が戦える(戦いたい)軸は何かを考え、それに合わせて一貫性を取った戦略を作っていけることで、BASiCSの一貫性がとれるようになります。
非常に難しいですが、できれば、とても強い経営戦略となります。そうしたら自信を持って、経営戦略を遂行していくだけです!是非この「戦略BASiCS」考えてみたいですね!!
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では、戦略BASiCSでみていきましょう!今回はちょっと視点を変えて、「商品開発」について。実は戦略BASiCSは商品開発にも使えるんですよ!例えばA(独自資源)から商品開発した場合は、自社が保有する技術などから「作れる製品」を開発することになります。パイロットさんも最初はそうだったようですね。「擦ると色が変わるペン」というのは20年以上開発してきたインク技術という独自資源から開発された商品でしょう。
ですがこの「作れる製品」を開発したのでは、お客様に受け入れられない可能性があります。最悪、全くニーズのない商品をお金と時間をかけて開発するということになってしまいかねません。ですので、戦略BASiCSの他の視点からの開発も考えてみましょう。「強み(S)」からの商品開発ですと、競合との差別化を意識して、お客様が選ぶ理由から考えることになります。「折れないシャーペン」などは、他社と比較して「折れない」で選ばれる理由にしようとして開発されたのではないかと思います。こちらの方が大ハズレになることは少ないでしょう。
顧客(C)から入るときは、お客様の顕在・潜在ニーズを考え、そのニーズを満たす商品を開発することになります。今回のフリクション開発の話なんかはまさにここですよね。「透明になったらフランスの子供たちが複数の筆記具を持たなくて済む」というニーズがあって、そのニーズに合わせて開発された商品と言えるでしょう。戦略BASiCSは商品開発にも使える戦略理論なんですね!本当に考えやすいツールです。
今回のフリクションの開発は、顧客(C)から入ったのだろうと書きましたが、さらにすごいことはTPOを考えていることです。きっかけはフランス人社員の言葉だったようですが、きっと「授業中に(時間:T)、学校で(場所:P)、テスト中に万年筆で書いたものを消すという場面(状況:O)」から、「3本もペンを使わず、1本で済む」というニーズを把握したのでしょう。顧客(C)から考える場合、このようにTPOからニーズを考えることがとても有用です。偶然かもしれませんが、フランス人社員の一言をきっかけにニーズを把握して商品開発にこぎつけたパイロットさんはさすがですね。
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【会計的な効果】
会計的な効果ですが、これは商品開発にかけたお金を回収できるかという視点になるでしょう。
おそらく、今回のフリクションは当初開発した製品(擦ると色が変わるペン)では商品開発にかけた資金が回収できなかったのでしょう。ですが、顧客ニーズを把握して、「消えるペン」としたら10年で累計20億本を売るヒット商品に育ちました。これなら、商品開発にかけた投資の回収は十分できているのでしょうね。
このように、商品開発はその投資回収ができるかが重要になります。とはいえ、投資回収ができていないからといって、開発した商品をニーズがないのに広告費をかけて販売をしていっても傷口を広げるだけになってしまいます。どこでかけた投資をあきらめるかという、「見切り」も時には必要でしょう。パイロットさんも「擦ると色が変わるペン」にこだわって販売促進していたら、大きな傷になっていたかもしれません。
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【自分ならどうするか?】
おそらくやらないと思いますが、私なら「消えないフリクション」の開発はやめておきます。「消える」がウリですもんね。例えば一定時間経ったら消えなくなるペンを開発したとしても、「消えないペン」はすでにありますので、買った人を混乱させるだけになってしまうかもしれません。フリクションのイメージを壊してしまいそうなので、その方向の開発はしないでしょう。
もしかしたら、今なら「擦ると色が変わるペン」のニーズも出てきているかもしれませんね。「擦る」というのはフリクションのおかげでかなり浸透してきています。擦ると色が変わるなら、手帳に予定を書き込んで、終わった予定は擦って色を変えておくという使い方もできるかもしれません。
古くて新しい商品として、小さく再販売してみるのも面白いかもしれません。
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いかがでしたでしょうか?一口に商品開発といっても、色々な視点の商品開発方法があります。やりがちなのは「自社の技術で作れる商品を開発」してしまうことです。結局ニーズがなく、売れないということが往々にしてあります。そればかりではなく、顧客(C)から考える、お客様のTPOを意識した商品開発も視野にいれてみてください!
【FSAコンサルティング主催MGのご案内】
おためしMG
FSAコンサルティングが「お試し版」戦略ゲーム研修(通称:MG)を開催します!「MGってよく聞くけど、どんなのだろう?」「興味はあるけど、いきなり長時間は難しいな・・・」という方向けにおためしでMGを体験してもらう機会を用意しました!
おためしとはいえ、ちゃんとゲームもやりますし、講義も一部ですがしますよ!この機会に是非、体験してみませんか?
このMGは通常、2日かけて実施していく研修で、最低でも丸1日(3期)は体験して高い効果が得られると考えていますが、やったことがない研修に丸1日も時間を確保することが難しい方に是非おためしで体験してもらいたいと思います。MGとはどのようなものか、どんな経験ができるのか?この「おためし」で経験してみませんか?
<開催日時・場所・講師>
日時:平成29年12月13日(水) 13:30~17:30
場所:カフェあんのん(福井市北四ツ居2-7-17)
講師:谷川俊太郎(西研究所MG公認インストラクター)
<参加費>
お1人様:5,000円
<申し込み方法>
下記メールアドレスまでご連絡下さい。
メールアドレス:fukui-strategy@fsa-c.com
<カリキュラム>
13:30~13:45 MGについての説明
13:45~15:00 第1期(練習期)&ルール説明
15:10~17:00 第2期&決算
17:00~17:30 戦略会計入門 講義
※研修の性質上、終わりの時間が前後することがあります。ご了承ください。
<Facebookイベントページ>
https://www.facebook.com/events/523452048013269/
1日MG(3期)
通常のMGは2日かけて実施して
<開催日時・場所・講師>
日時:平成30年1月13日(土) 9:00~18:00
18時以降交流会予定 ※場所
場所:福井商工会議所 2階A会議室
〒918-8580 福井市西木田2-8-1
講師:谷川俊太郎(西研究所MG公認インストラクター)
<参加費>
お1人様:15,000円
<申し込み方法>
下記メールアドレスまでご連絡下さい。
メールアドレス:fukui-strategy@fsa-c.com
<カリキュラム>
9:00~9:15 MGについての説明
9:15~11:15 第1期(練習期)&ルール説明
11:25~12:30 第2期&決算
12:30~14:00 昼食&第2期決算
14:00~15:00 講義
15:00~17:00 第3期&決算
17:00~ 表彰式&感想文
※研修の性質上、終わりの時間が前後することがあります。ご了承ください。
<Facebookイベントページ>
https://www.facebook.com/events/1489010344509702/