手間がかかるからこその独自資源(ベクタービアファクトリー)【他社戦略】 | 経営戦略で進むべき道を照らす!迷える後継者専門、「福井県後継者軍師」谷川俊太郎のブログ

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先代後継者との間の経営方針の違い、承継した会社の舵取りに迷う、そんな迷える後継者に経営戦略で進むべき道を照らす!福井県の迷える後継者専門軍師の谷川俊太郎です。経営戦略、経営お役立ちブログを毎日更新中!公認会計士・税理士・中小企業診断士の資格も保有してます!

こんばんは!

経営戦略と戦略会計で会社を変える、FSAコンサルティング株式会社社長の谷川俊太郎です。

 

今日は水曜日ですね!【他社戦略】更新していきます!

 

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【記事要約(平成29年8月25日 日経MJより】


個性豊かな味と香りを楽しめるクラフトビールの専門店が急増している。クラフトビールとは小規模で生産されるビールのことで、麦やホップのほかにハーブ、果実などの副材料を加えることで、様々な風味が楽しめるのが特徴。たるで仕入れ、何種類もの銘柄を味わえる専門店の登場でファンが定着している。

 

東京・新宿にある「ベクタービアファクトリー」は、店内にクラフトビールの醸造施設を併設する。自店醸造の強みをいかし、高品質のビールをてごろな価格で提供し、連日盛況だ。オープンは2014年12月。73平方㍍、43席の店舗ながら、月商は450万~580万円と好調。都内を中心に飲食店経営の他、コンサルティングもする「ライナ」が運営する。

 

注目すべきはその価格で、一般的にクラフトビールはパイントで1000円を超える店が多いが、同店ではグラス(295ミリリットル)が450円、パイントで750円と割安。

 

「購入している銘柄の原価率は7~8割になるが、自社醸造の銘柄で原価率を抑えられるので、全体として収益がでるようにしている」と話すのは奥村翔太統括店長。

 

自家醸造にはメリットが多いが、醸造を始めるにあたっての初期投資は大きい。同店の醸造室でも設備をそろえるだけでも約1200万円ほどのコストをかけた。また、酒税法がからむので、醸造免許の取得には手間と時間がかかる。

(記事要約終わり)
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自家醸造のビール!いいですね~。できたて新鮮なのでしょうね。飲んでみたいな、と思います。それが安く飲めるのであれば、消費者としてこれ以上嬉しいことはないですよね!ちなみに、「パイント」ってなんだろう?と思いましたが、リットルなどのよな単位のことで、主にビールなどの量を図る際に使われるようです。英国などで使われているのですね。大体570ミリリットルくらいのようです。

 

クラフトビールというのは原価率が高いですね。仕入れると7~8割が原価となると書いてあります。1000円で販売しても残る粗利は200円のみ。これでは儲けなんて少ないですよね。でも、自家醸造ならばこれをグッと抑えられます。変動費は麦芽やホップなどの材料費と酒税といったところでしょうから、原価率は3割程度になるでしょう。値段を下げつつ粗利も稼げるようになりますよね。

 

手間と時間がかかる自家醸造(主に免許の面で)ですが、とてもメリットがありそうです。

 

では、今回注目した点は以下のことです。


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【記事で特に注目した点】
手間と時間をかけて、「自家醸造」という独自資源を確保していること
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<注目した背景>

今回これに注目した理由の理論は佐藤義典先生の、「戦略BASiCS」からです。以下、「戦略BASiCS」を簡単に説明します。

*例によって、理論が分かりにくかったら、 佐藤義典先生の理論のせいでなく、私の説明の力量不足です。
 その場合は、佐藤義典先生の著書を是非読んで下さい。

 

戦略BASiCSの解説

 

この「戦略BASiCS」は、佐藤義典先生の中核的な理論です。ですが、この理論、見た目は簡単でも、非常に奥が深いです。ですので、ここで書くのは、あくまでもさわりのところだけです。詳しく知りたい方は是非佐藤義典先生の本を読んでみて下さい。

 

「戦略BASiCS」とは、経営戦略・マーケティング理論は世の中に数多ありますが、まとめると5つのパターンに分類され、それを再構築した経営戦略理論です。そして、その5つを一貫性と具体性を持って考えることで強い経営戦略ができるという実践理論です。その5つは以下の通りです。

 

attlefield (戦場・競合)

sset (独自資源)

trength (強み)

i

ustomer (顧客)
Sellingmessage (メッセージ)

 

頭文字をとって「BASiCS(ベーシックス)」です。それぞれを簡単に説明すると、

 

 :自社が戦っている戦場・戦っている相手(競合)を明確にし

 :競合が真似できない強みをささえる資源を構築し

S :資源を強み(自社から買ってもらえる理由)にし、

 :自社の強みを選んでくれるお客様に対し

Sm :メッセージを伝えて選んでもらおう

 

とこのような考え方で構築される理論です。「お客様(C)が、競合(B)でなく、自社を選んでもらう理由を強み(S)とし、それを独自資源(A)で支え、それを伝えよう(Sm)」という言ってみれば当たり前のことです。ですが、これを自社で考えると難しいです。この理論、すべてにおいて「一貫性」を持つことが重要です。例えば、とても高品質なワンピースを作れる縫製技術(A)があるが、それを「ウチの強み(S)は『安さ』です!」といって売り出していたらどうです?『安さ』といっても、高品質なものです。ユニクロと比べて安いのでしょうか?しまむらと比べては?こう考えると、この会社は、「独自資源(A)」と「強み(S)」の一貫性がとれていないですよね。

 

一貫性を5つ全てにおいてとるというのは、非常に難しいです。この一貫性ですが、以下の「3つの差別化軸」で考えると一貫性を取りやすくなります。


※3つの差別化軸

 

佐藤先生の理論では、上記強み(S)のパターンは大別して3つしかないそうです。

 

①商品軸:(競合より)高品質・新技術

②密着軸:(競合より)個別ニーズに対応

③手軽軸:(競合より)早い、安い、便利

 

強みはこの3つのパターンしかありませんので、これを考えることで一貫性をとっていくことができます。
例えば、先ほどの縫製技術の話でしたら、他社よりも「破れにくい」という強み(S)を生み出せる技術力(A)があるなら、安くするのではなく、高くても「破れにくい服を欲しがるお客様」(C)を探す。といった感じです(具体性はないですが…)。これは①商品軸の例ですね。このように、自社が戦える(戦いたい)軸は何かを考え、それに合わせて一貫性を取った戦略を作っていけることで、BASiCSの一貫性がとれるようになります。

 

非常に難しいですが、できれば、とても強い経営戦略となります。そうしたら自信を持って、経営戦略を遂行していくだけです!是非この「戦略BASiCS」考えてみたいですね!!

 

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では、戦略BASiCSでみていきましょう!今回は独自資源(A)についてです。ユニークな飲食店は多くできていますが、それを維持する、マネされない独自資源まで考えている人は少ないのではないかと思います。この独自資源を持っていないと、他社からマネされてしまいます。まあ、独自資源だけあってもそれが強み(S)、すなわちお客様が競合ではなく自社を選ぶ理由になっていないと意味がないのですが…。今回のベクタービアファクトリーさんはちゃんと強みに転化していますね。自家醸造からできる美味しくて安いクラフトビール。強みに転化された独自資源を持っていると強いな、と思います!

 

戦略BASiCSで見てみると、こんな感じでしょうか

 :新宿近辺の居酒屋戦場

 :自家醸造のための免許、設備、醸造技術(人材)

S :普通なら1パイント1000円はする美味しいクラフトビールを安く飲める

 :クラフトビールが好きで様々なクラフトビールを飲んでいるお客様

Sm :当店自慢の自家醸造クラフトビールが安く飲めます!クラフトビール好きな方、ぜひ来てください!

 

独自資源の醸造免許などは本来簡単に取得することはできないでしょう。「独自資源」と言えそうですね。ですが、このような自家醸造施設を持った飲食店は最近増えているとのこと。ただ自家醸造だけでは選ぶ理由にはちょっと弱いかもしれません。なので、自家醸造で美味しく作る技術というのが本当の独自資源になっているのではないかと思います。

 

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【会計的な効果】

自家醸造と仕入れではどのように違いがあるのか考えてみましょう。

 

・仕入れ(原価率70%)の粗利(1パイントあたり)

 1,000円×(1-70%)=300円

 

・自家醸造(材料比率20%、酒税125円)

 750円×(1-20%)‐125円=475円

 

自家醸造の方が6割ほど1パイント当たりの粗利益が大きいですね。このザックリとした計算ですが、1パイント当たり175円の粗利益の差額が生じています。この自家醸造設備にかけた費用は1200万円ということですので、その元をとろうと思ったら、自家醸造クラフトビールが約70,000パイント販売できれば良いということになります(1200万円÷175円)。リットルで39,900リットルというところでしょうか。人気が続けばペイできるのではないかと思います。

 

また、自家醸造の美味しいクラフトビールが安く飲めるとなったら、お客様も増えるでしょうし、客数増加の力もありそうですね。

 

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【自分ならどうするか?】

結局頼みは自家醸造技術ということになるのではないでしょうか?クラフトビールは麦芽のほかに色々な副材料を加えて作るもののようですので、期間限定のクラフトビールなどを作って、そのクラフトビールは通常販売しているものよりも少しだけ高くする(例えば800円くらい)ということを考えるかと思います。まあ、このくらいのことはすでにやっていそうですが。

 

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いかがでしたでしょうか?酒税法という法律に守られた醸造免許を取得することによって、それを独自資源として強み(美味しいクラフトビールを安く)に転化していったことがわかりますね。月商も上々のようです。強みに転化できる独自資源、皆さんも考えてみてくださいね!

 

 

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