2414 :マイクロトランス型/ファンタム式パナ改マイク「LZ-T」発表 | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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  マイクロトランス型/ファンタム式パナ改マイクLZ-T

2年ぶりの「ファンタム式パナ改」となりました。

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その音FetⅡLzⅡLzⅡb と同一の高品位音

 

 

「マイクは無指向性に始まり無指向性に終わる」

 

 

 

ファンタム式パナ改マイク LZ-T (トランス型低インピーダンス長距離用)

 

パーマロイ・マイクロトランスの採用による基板の小型化で外観上はFetⅡLZⅡ(b)と同一、おなじみのデザインで誕生しました。

 


 

 

最大の特徴

 

クラシック録音でパフォーマンスを示す「自作マイク」として定評のある FetⅡ およびLZ-Ⅱ(b) 低インピーダンス長距離伝送用)を代表とする半導体平衡型が定番でした。

 

そもそも自作マイクは机上でどんなに優秀であっても延伸してなんぼ、それが「マイクロホン」という機材なのです。

 

延伸距離が10mなのか、100m以上なのかそこから始まる設計の大きな違いがある。中には「机上での性能」に終始し、伝送を一切考えない例まであるが論外です。

 

「ファンタム式パナ改マイク」には14年前、FET差動AMPによる平衡出力回路タイプ、そして12年前遠距離用の「LZ 系」 をオリジナル開発しました。

LZ系は設計上、1Km延長も可能な方式です。

 

設計開始から各種試作を経るものの、理想に届くことはなく、1年半を悶々と明け暮れした。

 

LZ系では、それまで誰もが信じて疑わなかった「コンデンサマイクのワールドスタンダード回路」、あの「SCHOEPSサーキット」、その内容に疑問を投げたことに始まる「LZ回路」が健闘する。

 

そんなバイポーラTR回路を開発しました、2012年のことです。

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それは案の定、音質・SN比、極超低ひずみ、ダイナミックレンジで群を抜き、長距離伝送を可能とすることが分かっていきました。

 

 

 TODAY'S
 
DNAはトランス回路に受け継がれた

このノウハウを「トランス」回路に置き換え、DNAを引き継いだ高音質Lo-Z出力回路は高実績を積みながら浸透しつつあります。

 

これによりホール3点吊り収音において、半導体平衡方式ではどうしてもノイズ問題の避けられない悪条件現場でも安定した300mの伝送が可能です。

 

マイクロトランスによる効果は、「高音質」だけでなくCMRR向上や「コモンモードノイズ」除去、「Normal」(ノルマル)モードノイズ排除能力が絶大、アイソレーション能力がきわめて高く、優れたEMC耐力を持ちます。

 

 

 

(さらに)

 

同じマイクロトランス式の「Probe-T 」での強電界雑音試験の様子、

とてもマイクのテストには見えないが、「やりすぎ」ではない。

 

 

 

 

 

 

(回路図)

 

出力インピーダンス対周波数特性 (抵抗置換法による実測)

200HZ:248Ω

400HZ:251Ω

1KHZ :253Ω

10KHZ:256Ω

(可聴域ではフラットですね)

 

 

4Pトランスでは出力Z=525Ωであったため採用を見送った。

 

 

 

 

 

カプセルはマイクの命、「互換品」・「相当品」の拒絶

WM-61Aはパナソニック純正の秋月電子パック品を頑固に継続使用。

 

 

アクティブ素子の存在しないコンパクトな基板

 

 

 

(トランス) 4Pか5Pか

一昨年末、偶然発見したこの最小トランスは期待を裏切る良い音。

これは新デバイスの発見にひとしいエポックになりました。


このマイクロトランス(SMD ED8  4P&5P) 600Ω:600Ω1年半の採用経緯でやはり最初の判断、Probe-T の誕生で感じた通りです。

 

 

昨年発見した事実。

現在でも訂正されてないが、この点はトランスの初歩的カナメです。

 

 

 

※ SMD-ED8トランスに関して記事: 2314に詳細があります。

 

 
 
 

だから音がいいんだ・・・

さらにこのトランス特有の素晴らしいパラメータを発見しました。それは「ブッチギリ」であった。
それは国内・海外専業メーカーのそれをあっさりと超えます、次々回記事までにまとめてご報告します。
 
 
事後記事「2416記事」より(2024.7月)

 

 

 

 

 

 TODAY'S
 
そもそもパナ改マイクとは

ドイツ系米国人技術者だった「Siegfried Linkwitz」氏提唱によるパナソニックWM-60ATやWM-61Aカプセルのソース~GND間を切り離した「ソースフォロワー改造」によりひずみ率の低減を目的とした改造カプセル自作マイクの事をいいます。

ひずみ率低減と同時に耐音圧の約10dB/A UPをを可能にし、世界のマイク自作者の熱い支持を得てきました。

 

「Linkwitz Mod」は日本では「パナ改」と呼ばれ、個人録音ファンを中心に15~20年ほど前、この改造とマイクシステムの自作が流行したことがあります。

 

しかし、別箱に9V電池と回路を常に背負っており、不安定な3.5mmミニプラグ(モノ・ステレオ)の細ケーブルが使用されること、さらに「プラス接地」というシステム上のハンディも抱えていた。

 

音質の良さに反して、しばしば録音中に音切れや接触不良雑音を起こすことで様々な二次的問題を起こすことが構造上の宿命的泣き所であった。

これは「プラグインパワー」方式でもまったく同様である。

 

このブログ記事を参考に「Linkwitz Mod」=「パナ改」を試みる方は多く、しかし発生する欠陥問題が深刻なため当ブログでは、「Linkwitz Mod」=「パナ改」記事には注意書き」を加え整理したが・・・

 

それでも残った断片が最後の望みのように使われるため、昨年、この方式の優位性だけを引き継いで、このブログにあった「パナ改」関連記事はその片鱗すべてを削除した。

 

 

 

 

 

STEP.1ファンタム式パナ改マイクとは

 

筆者は前述の欠点すべての解決を大きなテーマとした。

「パナ改」マイクシステムから大きな電池箱や不安定なミニプラグ・ジャックを取り除き、一般コンデンサマイク同様に「ファンタム電源」動作を基本に据えた。「業務用マイク」にする、という目標を立てて取り組んだ。

 

当然それは「プラグインパワー勢」からの攻撃対象となったが、「パナ改勢」からは歓迎されるも、批判は受けた覚えがない、みんな何とかしたいという共通の思いがあったのだろう。

 

 

 
そして2009年11月6日記事「0921」で「ファンタム式パナ改」第1号機の発表に至りました。 © 2009-2024 Shin's PA Workshop. All rights reserved.
そして、この日付の当記事をもって「○田式」回路教祖の特許申請に特許庁が「待った」をかけた。
取り巻き連中から私に対して、いやがらせ記事がネットにあふれたた経緯があります。
筆者は「全公開」のチカラを初めて知った。

 

そこから新年を挟んだ数か月の間、手を変え品を変え「完成度UP」に挑んだ。

 

もっとも注力したのは「シンプルさ」「業務用互換性」です。

そして、「大音圧でも簡単にはひずまない130dB/A (1% THD)」の実現を至上命題として取り組んだ。

そして完成が確認できた。(2010年2月14日)

FetⅡ試作品で130dB/A SPL時のTHD測定中(2010年2月14日の写真より)・・・

指針が130dB超えを指しており、騒音計の先にFETⅡ がテープでくくりつけられている。

このときのひずみ率(THD)は0.4~1%間でゆれていることを目で確認し、3~4秒で音を止めた。

それが精いっぱいです。

 

今ではこんな事はできません、90dB/A近くの音漏れにすぐ110番されるでしょう。

それよりヤバイのは部屋の中、測定者の耳へのダメージだ。

「130dB以上は一時的または永久に聴力を失う場合がある」といわれており、実験中は思考力がきびしい状態になっているのを感じながらであった。

事後、極度の難聴、吐き気から翌日、一週間とたち耳は正常に戻っているのを確認された。

 

130dBA SPL下といえば 空港地上作業で787やエアバスA320など大型旅客機のエンジン音を「イヤマフ」(防音耳栓)ナシで浴びながら作業するのに等しい。

今は昔、当時よくこんな蛮行ができた、と感心するだけですが、この時のノウハウだけは頭の中で生きています。つくづくと、やれた時代にやっておいて良かったと思います。

 

 

完成度も次第にUPし、FetⅡを代表とする「ファンタム式パナ改マイク」は自作マイクの完成形として、マイク自作者の方向性を変え、業務用途でも歓迎されるようになりました。

同時に市販民生レコーダに大きな変化を呼び、XLR入力、ファンタム電源搭載が標準仕様になっていき、フラグインパワー機は売れなくなった。

 

やがて国内では、「パナ改」という用語は「ファンタム式パナ改」を指すようになっていき、同時に原形「パナ改」は、この流れからフェードアウトした。

 

 

 

STEP.2超高級マイクとの鳴き合わせ逸話

 

2010年2月9・10日開催されたある有名音響技術者セミナー、主催者から提供を求められたのが開発途中のFetⅠ、これは2日目にサンプル紹介が予定されていた。

 

国内大手マイクメーカーのキモ入り新製品である6桁価格の超高級マイクの発売前デモが予定されており、ステージのピアノに仕込まれていく・・・

 

参加技術者から「あのマイクの音も聴きたい」の声、同調する声も上がり、デモマイクのマウンターにFetⅠ輪ゴムでひっかけられ、ピアノのPAが両マイク・同条件で実施されたのが運命的事件となった。

 

「大手マイクメーカー超高級新製品」と個人による「開発途中手作りマイク」の鳴き合わせガチ勝負、その結果は火を見るよりあきらかのはずだった、誰もがそう期待・想像もしただろう・・・

 

筆者は2日目のセミナーには参加せず会場前で失礼してその場から去っていたのでその場面には居ないが、なんと結果は逆だった。

「会場ではこの驚愕の事実に大いに沸き立った」と聞いている。

 

そして大手メーカー営業担当者は「すっかり肩を落として力なく、ブースの撤収をおこなっていた」という話をその晩、主催者からの連絡で知った。

 

予想できる修羅場から予め退出したのは、いうまでもなく専門メーカーに対する「自作マイク製作者」としての敬意、礼儀と仁義から自分をそうさせました。

 

 

それでも「自作マイク」が、あきらかな形でメーカー製高級マイクに勝てたことは大きな自信となり、FetⅡ はこのときの参加技術者の指摘に答え、ブラッシュUPした作品として12日後に当ブログ登場させました。

 

 

シンプルな回路にも関わらず、許容音圧もこの時点の自作マイクとしてはブッチギリの130dB/A SPL(0.4~1% THD)という値を目標通りはじき出したが、10%AOLで考えれば133dB/A SPL程度と読み替えることもできる。

 

ここまでのステップは「マイク作りは耳でおこなう」という手法だからこそ得られたものです。

 

回路シミュレータと測定器に委ねた方法によればこのレベルに達することは絶対にあり得ず、人を感動させるマイク作りとは観点がまったく異なる。

神経質かつ無機質なマイクがお好みならば、測定器を積み上げて微に入り細に入り測定・調整しながら追い込むとよいだろう、それはかつて「音はとれるが音楽はとれない」、と日本製マイクが欧米から嘲笑され、世界から相手にされなくなった、という試されつくした衰退の道をみずから辿ってみるのもよいだろう。

 

 

 

メーカー・個人問わずマイク作りの要は「耳」と「音楽脳」、これしかない。

 

 

 

むすび

「ホール3点吊り回線には魔物が住んでいる」と言われるほど理屈と現実は異なります。

概して40年前の古い回線のままでは問題が起こらず、改修を繰り返したり比較的新しい回線でノイズトラブルが起きやすかったりする。そういうホールを録音ファンや技術者は「劣悪ホール」と呼び、共通認識で、利用する際は独自の工夫で切り抜けている。

 

超高級マイクも年代の新しい機種は「原因不明」とされるノイズで悩まされることが多いので、そんなときはトランス式の旧型マイクに替えるのが安全優先策とされている。

 

 

また在京民放キー局音声技術者の職場に伺った際、、機材倉庫の大小さまざまなトランスを前に、「これがなかったらオレ達の仕事は成り立たないんだ、神様さ・・・」という特別扱いが印象的だった。


 

 

「マイクは祈って吊る」

 

 

 

 

なお、このLZ-T は個人のかたに限り製作・領布を承ります お問い合わせください。

 

 

以上

 

 

 

 

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虹 おしらせ

MEMSマイク使用、話題のProbeⅡ Probe-T  L-730mems など、読者のみなさまからのご注文により優秀機種の手づくり製作・領布を承っておりますのでお問い合わせください

またFetⅡなど純正WM-61Aのファンタム式パナ改マイクも継続中

 

モノ作り日本もっと気出せ 

 

 

  
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