※ この記事は2010年のものです。公開から13年以上経過している点にご留意ください。
2024年1月追記
☆このマイクロホンはご注文によりお作りしております
fetⅠの体験した思いがけない機会と高いご評価に驚いており、新しい可能性と責任をひしひしと感じております。
「ファンタム式パナ改マイク」という得体の知れない手作りマイクを ピアノのPA(SR) という形で超高級マイクとの比較試聴を多くの専門家の皆様を前にしてこの世に初めてご披露した瞬間でありました。
(2月9・10の両日お世話になった主催者・ 関係各位には深く御礼申し上げます)
アマチュア録音の世界で久しく人気の高いマイクとして、知る人ぞ知る手作りマイクの名機「パナ改」、
それをプロフェッショナル・アレンジして整え、すっかり姿を変えてデビューさせた瞬間でもありました。
昨秋より「パナ改」の業務用途へ転用を模索しながら「ファンタム式パナ改」の研究を行っておりました。
11月の初モデルで、その音の素直な透明感と姿かたちからは想像も出来ないドッシリ感に手ごたえを得て、この改良を手探りで進めてまいりました。
このファンタム式パナ改マイク最大の特徴は一切の外部電源などを使わず、卓接続のみで使える超小型コンデンサマイクである事です。
しかもガムテひとつでどこにでも仕込めるなど無限の可能性と活躍の場を手に入れることが出来るという点。
そして何よりも既成のXLRコネクタの中にマイクAMPまで仕込んでしまう為この種のマイクロホンシステムにありがちな、余計なものの接続や大げさな部分が全くないイージーさが決定的だと思います。
そして1型からⅣ型へと、また測定用、fetⅠと進化をとげて来ました。
(チップ部品を使ったⅢ型だけは失敗作でした)
このfetⅠにさらに磨きをかけた fetⅡ を登場させました
(進化のポイント)
・ECM電源をAMP回路から独立させ、供給電圧を適正化
・プリAMPの理想的な動作への追い込み
・130dB/SPL迄の高音圧への対応
・想像をはるかに超える低雑音化
・使用MFコンデンサの聴感選択による変更
・「ノイズ発生器=ツエナーダイオード」の使用を拒絶した頑固設計
fetⅡ 外観 (写真左はタイピンクリップおよびウィンドスクリーンを装着しました)
姿かたちは「ファンタム式パナ改Ⅱ」以降変わらないShinさんオリジナルデザインです。
(業務用パナ改 fetⅡ 各スペック)
形式 : 超小型コンデンサマイクロホン(ECM)
使用ユニット : パナソニックWM-61A (ソースフォロワ改造)
指向性 : 無指向性
最大音圧 : 130dB/SPL(1% THD時 )
適合ファンタム電圧 : 18~50V DC
<各サイズ>
マイク部 : 長さ27mm(後部スプリング除く)×直径8mmφ
AMP部 : ノイトリック3Pオス(新・旧)内に収容
重量 : 72g (ケーブル3m含む)
適合WS : REXSER RZM804LWS(上写真本体の上)
適合タイピンホルダ:AUDIX MC20
(ご注意)非業務用のマイクアンプやオーディオI/F、格安卓など低品質のファンタム環境での動作は保障できません。
(前回からの改良点)
①ECM電源をAMP回路の定数まで変え寄生虫のようにパクる事をやめ、独立回路とした。
②それに伴い、AMPはFETの最適動作領域での使用を実現した。
③上記①②により最大130dB/SPLを許容する爆音対応を可能とした。
④前回のMFコン(AVX社製)をWIMAのMKS2またはMKS4使用とし、固有のクセを鎮めた
⑤オペレーション上の配慮により、出力レベルは「マイクレベル」とした。
⑥部品の厳選とシンプル回路・オリジナル実装法によりノイズレベルを極限まで押さえた。
回路は少し込み合ってきましたがほぼ完成形ではないでしょうか。
極小電流で高音質を得る極小AMPであること事がこの部分の条件、IC化など出来ないのがつらい所。
「XLRコネクタ・シェルに収めきる」というプレッシャーがあるのでパーツ1つでも熟慮しながら決めて行きます。
使用電流も最小に押さえるため余分なものは何1つ使わない事が実は良い結果につながっていると思います。
こだわりは・・・①ディスクリート回路で挑む ②ツエナーダイオードを使わない の2点です。
基板サイズは10×7.5(16穴)または10×10(20穴)に全てを収め、最後に余分な部分を切り落とす
↓↓
(MKS2使用の基板) (MKS4使用の基板・・・1ピッチ分長くなる)
赤い部品がWIMAのMFコン、左2つがMKS2、右側の横長がMKS4です。
左2つの基板は写真合成ではなく3個並べて作ったうちのた2つです、製造仕様書を作製した手作りのためかなり時間短縮され、そういう事も可能になりました。
※しかしここまで来ても基板起こしは必要ないと感じる(16穴と20穴の実体マップで十分)
※このコンデンサの位置と高さがコネクタシェルへの実装で非常に大切(シェルのこの位置にコンデンサがドンピシャ納まる溝がある)なのです。
MKS2だと高さが苦しいし、MKS4だと1ピッチ長くなる、一長一短である。
この写真は値が違うがどちらも優秀なコンデンサです
【製作考察】
①やはりECM電源を独立させることで最も大きなメリットを得た。
AMP(FET)のバイアス値まで変えてECM電源を得る寄生虫方式の限界は承知していた為、これで心置きなくすべての音と向き合える。
②AMP動作は微調整を行いながら、バイアス電圧・消費電流と波形・ひずみ率を観測しながらベストな値を決めて行き全ての目標値をクリアさせていきました。
③MFコンはセラミックコンデンサのような圧電作用がないため振動ノイズには強いはずだがfetⅠで使用したAVXのMFコンは衝撃に対し700~800HZ付近にピークを持つ波形と異音が観測された。
このためWIMAの2種類に目をつけた、MKS4及びMKS2ではコンデンサに強い衝撃をかけたとき発生する音はデッドニングされたような「ゴツッ」という感じであり、本当に僅かなものであることとカラーレーションは全く感じない。
④出力レベルはAKG C-451とほぼ同一とし、オペレーション上の配慮に努めた。
⑤他マイクとの比較ではC-451(単一指向性)とは近接では大きな違いを見せるが30cm以上離れれば
結構比較ができ、451は超高域にわずか上昇があるがこちらはフラット、ボイスでは優劣つけがたい。
何よりもSN比の高さは半端ではない所まで達し、非常に研ぎ澄まされたマイクに脱皮した。
⑥マイクカプセルに対する独自のフローティング構造とボディの剛性によってタッチノイズ・ハンドリングノイズは極少に押さえてあります。
(あのベリンガーECM-8000との比較ですが・・・・)
fetⅡ・C-451共にフェーダーを上げていくと「ファーッ」と音声だけが立ち上がっていくのに対しECM-8000は大きなホワイトノイズを背負って出てくる貧粗な音声信号が気の毒にさえ思えてくる。
もはや、ここまで来ると全く比較の対象ではない基本性能と歴然たる品位の差を見せます。
(但し激安の卓などではこの比較は困難ですので念のため)
(今後)
ものごと、99%でSTOPすれば何もやらなかったのと同じ。
1%のふんばりで天地を分けるのが常でありますが、現在90%の点までたどり着いている感触です。
ここから先も初めて経験する手探りばかりでありますが、先人の知恵を頂きすべてが目的地まで無事到着したいと思います。
◎次回予告:今回書き切れない「測定用ファンタム式パナ改」のバージョンUP模様を追って行きます。
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【おことわり】
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