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※管理人Shinは知財保護において個人による「特許」のようなものを好まず、「全公開」を旨とします。
MEMSマイク単一指向性化 第3の方式
「MEMSマイク単一指向性化」
前回までにMEMSマイクにて「音圧傾度型」と「仮想音圧傾度型」を実験試作してまいりました。
Shure BETA87をシミュレートした「音圧傾度型」単一指向性ではYOUTUBEでご確認いただける通りBETA87との違いがわからない程良い結果となり、業界初の「MEMSマイクによる単一指向性マイク」が実現しました。
次のステップは「オフマイク」用だ。
しかし案の定「単一指向性マイクのオフマイク適正」創りは安易ではありません。
「業界初」のさらに向こう側にゴールがあります。
「そうだ!アレがある」とアイデアが浮かんだ。
温故知新
♢複合プロセスによる単一指向性化
Western Electric 公表資料を使わせていただきました。
639(A/B)に学ぶ
Westan Electric(WE)の「639(A/B)」それは当時RCA 77のシャッター式指向性切替方式のパテントを踏まずに単一指向性を得る方法でRCAと同一結果を得ることに成功しています。
それはリボンの「双指向性」と「無指向性」ダイナミック型の信号合成(ベクトル合成)で「単一指向性」を得る方式です。
デザインはその普遍性と尊厳を主張するかぎり時空を超えることができる。
だから90年前の新型マイクは現在でも新しい。
(639B:1940年のELECTRONICS誌より)
上は
Western Electricの639Bの広告ページです。
「639(A/B)はALTEC製」というのが一般的ですが、当時の資料や歴史を年表にして振り返るとむしろWE製品が先である可能性が高いと筆者は考えています。
ちょうど当時1930年後半、独占禁止法にさらされて、1940年ごろ音響部門を解散し、1942年「ALTEC LANSING」社に引き継がれたとされる文書もあります。
この話の真偽のほどは不明ではありますが。
この為、639(A/B)はWE、ALTEC両製品が存在します。
(639A/B:1942年 ALTEC LANSING創業時のカタログより)
(参考品 筆者の670A)
別にビンテージファンという訳ではないのですが、なぜかこういう博物館モノがいろんな機会を通じて私のところへ集まってきます。
639A/Bの後、1950年代に製造されたリボンマイク、 ALTEC「670A」が良コンデションで私の手元にあります。この場合はRCA77パテント(シャッター、ラビリンス音響回路方式)の指向性切替型リボンマイク、このため77D(X)同様に筐体の上部1/3が音の入り口となり、音質は639(A/B)が踏襲されています。
複合方式でないため小型化され、ゴツさも軽減されて細顔の鉄仮面となっています。
639を見慣れている人には物足りなさを感ずるかもしれません。
筆者のALTEC 670A (可変指向性リボンマイク)
おおむねこのあたりまでに今回の課題のエッセンスが詰まっていると思います。
MEMSマイク複合構造による「単一指向性」構築
「単一指向性マイク」は小口径になる程、LF(最低共振周波数)が高くなり中~低域の収音が制限されます。それが指向性マイクの物理的宿命と言えます。
「出ないならイコライザーで上げればいい」、という考えもあると聞いていますが、それはもはやマイクロホンとは言えない邪道です。
かつて米S社にイコライザー内蔵というマイクがそのライナップに存在していましたが当然ながら業界・社会に認められることのないまま40年ほど前に製造中止になりました。(当時のS社カタログにあり)
現在では盗聴用の「コンクリートマイク」があるぐらい、音響的には誰も認めないでしょう。
MEMSマイク特有の課題を乗り越える
「単一指向性型」を作り出しても、「MEMSマイクと」いう極小かつ、音響構造の異なるマイクロホンでは「近接効果」のない環境、つまりオフマイク時には一般構造のコンデンサマイクカプセルとはかなり異なるふるまいが見えてきました。
特に「仮想音圧傾度」では一般カプセルに比較し、周波数依存性・外観形状依存性により広い帯域で十分な前後比を得るのがきわめて難しいことも分かってきました。
「そうだ、アレがある・・・・・」とひらめいた「ベクトル合成方式」で試作してみました。
そこで次回は第3の方式を登場させます
次編につづく
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