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はじめに
音響性能の優れたMEMSマイクを求めて2019年におこなったのが、「その時点で世界に存在するアナログMEMSマイクを全メーカー、ほぼ全品種でスペックを中心に」可能な限りの実態調査したことです。
数あるMEMSマイクの中から数品種のパフォーマンスが一般コンデンサマイクとしても優秀な内容であることがわかった。
(ICS-40720、ICS-40740、ICS-40300、ICS-40619、ICS-40730)。
それはすべてInvensense社(米)であったのはただの偶然ではなかった、といまあらためて思います。
(「TDK Invensense」とは言うがInvensense製品とTDK製品では格の違い歴然たる別物)
数日後にはUSAより机上に届き、実用実験を開始した、これが筆者の「MEMSマイク第二ステージ」のはじまりでした。
「ICS-40730」の音を聴いた瞬間、ただものでない「高級マイク」を指向できる事を確信し、その実用性を探っていった。
昨年2022年新発表されたInfineon社(独)のIM73A135V01」の登場はこのジャンルに選択肢と厚みを加えてくれた。
それはICS-40730同等またはそれを超える内容も持ち、「米粒大」サイズはMEMSマイクのMEMSと言える象徴となりました。
この2品種はこの1年でMEMSマイクの2巨塔としてヨーロッパ製高級マイク並みのパフォーマンスをもって自作マイクの世界に定着しました。
今回のIM73A135V01を使ったラベリアマイクはいずれも「高性能マイクロトランス」を使った2種類、「73Amems」を発展させ長距離延長を可能にしました。
1.「Micro73A mems」(セパレート型)
やはりMEMSマイクの存在意味はその「マイクロサイズ」にあるはずです。
今回は超小型ラベリアマイクのロングラン定番、SANKEN COS-11と同一サイズのマイクロホン「Micro73Amems」を製作しました。
【セパレート型】
トランス式の送出部を持つ超小型ラベリアマイクとして完成しました。
2.「Micro73A mems」(一体型)
【一体型】
ミニXLRコネクタの扱いは結構難儀します。
分離できない一体型ならこの点は楽になり、基板はXLRコネクタに楽に収まります。
「Micro73A mems」の製作記録
「出来るのか?」ではなく「出来る!」と声に出して言えばたいていのことはできる。
自分の脳も周囲の条件もそれによって一方向に「ととのう」ことは実に不思議です。
「Micro73A mems」は4mm SUパイプの中にSUメッシュ包みの「IM73A135V01」を仕込むことがハイライトです。
4mmパイプの内径:3.2mm
IM73A135V01の幅:3.0mm、厚みがあるのでこの限りではない。
SUメッシュ60の厚み:0.12mm X2=0.24mm
内径の3.2mmを超えるため絶対に収納できないことになります。
さらにそれををパイプ内で移動させ、所定位置に問題なく固定させるなど理屈では「不可能」。
しかし「魔法のコトバ」は己の行動を含めあらゆることを「可能」にすることにだけ向けてくれますのでこの程度のことであきらめる必要はありません。
筐体・実装
1.IM73A135V01に対しケーブル(MOGAMI 2879=3芯シールド線)に直接半田付け。
2.紫外線硬化接着剤でハンダ付け部を絶縁保護。
パイプ端面・内面をととのえて、このまま差し込む。(内径:3.2mm)
半田付部は紫外線接着剤で絶縁されSUメッシュと短絡することはありません
寸法上は絶対にできませんが・・・「事実は小説より奇なり」、この通り問題なく正規位置におさまりました。
(「出来ない」と思った瞬間から出来なくなるから不思議です)
回路図・基板
XLR出力回路はトランス式(高性能マイクロトランス)
伝送能力とノイズ耐性の強いものになりました。
1.セパレート型
自作感バリバリのXLR送出部。このあと樹脂モールド。
長さ限界13mmにつき、「あれやこれや」でこうなりました。
ミニXLR4P使用
普通版XLRとはピンNoがちがいます。
2.一体型
一体型基板
TR、FETなどのアクティブデバイス不使用
やはり半導体式同様、回路図通り配置すると小さくまとまりますね。
マイクロトランスがあまりにも優秀な為、MEMSマイクの相乗効果(シナジー)をもっと求めてよいと考えています。
基板長はノイトリックXLR収納・魔法の315mm、角を落とせばジャストフィット、基板にケーブルストッパー穴はほしいので改善した。
測定を含めた出力インピーダンスについて
トランスタップの切り替えにより、出力インピーダンスが可変できますがTAP 5が正解です。
(出力インピーダンス測定): 簡単です
出力インピーダンス測定の様子(抵抗置換法)
出力インピーダンス測定に使う置換抵抗(VR)はローインピーダンス出力のマイクの場合、1KΩまたは500Ωが使いやすいです。
出力電圧が1/2(電圧比6dB)低下したVRの抵抗値を測ります。
今回参考にした「SANKEN COS-11」について
SANKEN「COS-11」は1991年、TV画面には無骨なRCA BK-5の置き換えとして「NHK技研」と「SANKEN」により開発されTV用「アナウンサー襟付マイク」として誕生、TVニュース画面はスッキリ一新され、30年以上現在なお「ピンマイク」の代表として、放送用マイクの歴史を変えた名マイクです。
アナウンス用途だけでなく、クラシック録音で優秀なパフォーマンスを示すことが知れ渡り、高価ながらアマチュア録音家にはいまだに人気のあるロングセラーマイクロホンです。
2020年度アカデミー科学工学賞を受賞するなど、現在なお評価の高いマイクです。
このマイクの実現を支えたのは外形4mmの制約の中、角型ダイアフラムのECMを音の進入方向と直角にすることにより、ダイアフラムの大型化を実現した画期的な「発想の転換」があり、DPAなど欧州製品にもその影響は及んでいます。
内部構造
あとがき
COS-11と同サイズ、といわれる直径4mm死守した。
材料を決めているときパイプ径に「4.1mm」というのが結構あり、「こっちにできればどんなに楽か・・・」と、感じたが自分の意地が許さなかった。
完成後、なんとなくCOS-11現物にノギスをあてた。
なんと「4.1mm」あるではないか、いやこの0.1mmの差は天地を分けるほど作業手順・難易度が異なります。
そんな、こんなのマイクロサイズ手仕事であった。
#2につづく
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