【ご注意】
★情報はどんどん発信していきます。ご覧いただき、アレンジも良し、パクリもOKです。
ただし記事から得た情報の利用公開については出典・引用をあきらかに、管理人の指示に従ってください。
Oktava MK-012 コンデンサマイクの正規化
今どき、ロシア製マイクの話題など「空気読め」と言われるかもしれませんが・・・
今般、クラリネット奏者で録音技術者である大友様のご厚意によりOktava MK-012の何本かを分解・改善調査する機会があり、このマイクの稀に見る魅力と、そして重要な改善点があることをを発見しました。
その記録を含め、正規化についてご報告いたします。
(この記事は大友様の承諾を得ております)
筆者(Shin)のセットではC-451Bと同一価格帯ですがカプセル3種類と10dB PADが一式になっている、またカプセルごとの実測データシートが付属しています。
正統派のコンデンサマイクです
「Oktava MK-012」は決してあなどれない実力派、ヨーロピアントーンの優れたマイクロホンです。
低価格、といっても中華製とは一線を画し1927年(昭和2年)創業のメーカーによる正統派コンデンサマイクです。
MK-012は個性的デザインとボディの表面仕上に特徴がありトータルでよくまとまった内容、またカプセルごとの実データ添付は几帳面な一面を見せております。
「Oktava」は日本では比較的、表舞台に登場することの少なかった東側(ロシア)の業務用マイクロホンメーカーで100年近い歴史を持ちます。
正規化したMK-012、その音はスモールダイアフラムの定番ヨーロッパ製品に決して負けていません。
しかしそのまま使う限り「逆相音」となるか、他のマイクとの複数使用の場に問題を起こす使いづらさを経験することになるでしょう。
このため手にされても多くの場合、本来の良さを体験することなく中古市場に投げ売りされる個体もかなり存在するはずです。
MK-012各種のセット
付属カプセルの個数やセット内容により各種あり価格幅も結構広い。
シルバー(金属色)とブラックモデルの一例
ウクライナ戦争の影響により、ロシア製工業製品の入手などはこの先どうなるかは不明、そんな中にあります。
基板内容
基板を見ると独 Vishay、米 KEMETと選りすぐられたパーツが採用されており、抵抗1本に至るまで世界レベルの気合が入っています。一説にはドイツの品質管理・生産管理という情報もあるが真偽の程はわかりません。
ボディカラーに「シルバー」と「ブラック」があり、基板はどちらも同一です。
「2種類の基板」の噂があるとすればカプセル受け部の「ネジあり」と「ネジなし」程度でしょう、トランスはありません。
その音を聴いて
無指向性カプセルをセットして「マイボイス・リアルタイムモニター」によるこのマイクの評価テストを始めました。
その瞬間「ウッ!」という違和感から始まった。
(筆者の場合、「相」に対しとりわけ過敏に反応します、これは一般には感じられないレベルなのかもしれません)
レベルを上げれば上げるほどエネルギーを失っていく「脳内引き算」、そう「逆相音」です。この結論に達するまで10秒とかかかりません。
極性反転した正相の音は
「Reversアダプター」で反転=正相にしてもう一度モニター、今度は別世界が開けた。
当然吹かれやすく「ずいぶん超低域まで伸びている」という印象、スペアナ観測ではキッチンの冷蔵庫の動作音(10~20HZにピークのある唸り音)まで豊かに拾うあたりはDPA 4006AやProbeⅡ(inf)などと同一、はからずもMEMSマイクの立ち位置を再認識するというおまけまで得た。
可聴域の音はヨーロッパ製高級スモールダイアフラムマイク特有の品格を持つ。
「無指向性」カプセルを基準として「単一指向性」「ハイパー・カーディオイド」ともに各指向性の音質は見事なまでに統一されている。
スモールダイアフラムのド定番C-451Bなどとは一線を画し、C-391や上位機であるC-480Bとも格の違いを見せるという普通ありえない「価格との逆転現象」が起きている。
当然、残念ながら国産メーカーのマイクが届く分野ではない。
ここまで10分以内、Shinの「マイボイス・リアルタイムモニター」による判断は楽音を一切用いません。むしろ楽音を用いた場合ファクターが分散し、入り混じり、こうしたキッパリとした判断は不可能となるでしょう。
致命的問題と手直し
1.逆相(3番HOT)仕様である。
2.プリアンプ部はロットによりEMC上の問題をかかえている。
上記2つの問題が短期間に発見されました。
手直し1(逆相)
【変更前】
【変更後】
逆相の手直し(3番HOTを2番HOTに)
これは必ず基板止めネジをはずしておこないます。
未知のマイクではリード線の色にまどわされることなかれ。
【図解】
なんと基板シルク印刷の通りに接続されていないので、XLRコネクタのNoと同一に直すだけ。
手直し2(EMC)
写真のようにカプセル受け部に「浮いている金属ネジ」がある場合ノイズ発生の原因となります。
「金属ネジ」のないロットではこの対策は必要ありません
接地(仮想)されない2個の金属ネジは装置(マイク)内で高周波的ハイインピーダンスを持ちEMC(ノイズ)トラブルの大きな原因となる。
★先端部は素手で触れないことですが、現実的には素手でないとこの作業は不可能です。
これは改善対策後の様子です、黒色線、緑色線の部分を加えました。
カプセル受け部の2個のネジは未接地のため高インピーダンス金属としてマイク内に残ります。
EMCイミュニティを極端に悪化させますのでGNDに落としました。
パターン上のGNDがあまりにも細く大きなインダクタンス成分となるため緑のGND母線(AWG24)を引きGND強化しました。
ネジ部に追加した黒線も緑線同様に太線が望ましいところです。
ネジ部にはワッシャを割入れて半田付けを可能にしました。
ネジなしタイプもGND強化の為、緑色線追加でインダクタンス成分低減をおこないました。
それは限界環境できっと「鼻の差」「首の差」以上のものがあると信じています。
かならず必要なこと
◎これができない場合手をつけるべきではありません。
先端部は高抵抗と絶縁物により緻密に設計されている部分です。
湿気に弱いのもこの部分があるからです。
素手で触れないことですが、現実的には素手でないとこの作業は不可能ですので、事後の清掃がきわめて大切です。
①基板左1/3を中心にエアダスター(スプレー)で異物を強力に吹き飛ばす。(手動エアブローでは役立にたず)
②カプセル受け部を中心に手で触れやすい部分を「無水エタノール」でアルコール洗浄する。(メタノール禁止)
先端の透明アクリル表面は丹念に、手で触れたあたりを含めて「無水エタノール」を使ってティッシュや綿棒を交換しながら拭きとります。
「無水エタノール」は「メタノール」=「燃料アルコール」の2~3倍の価格です。
「無水エタノール」以外、他の「アルコール類」はお薦めできません。
(清掃は基板左1/3が対象です)
成極電圧はギガオーム単位の固定抵抗で45V程度が供給されています。
したがってわずかでも素手でさわった部分は数100MΩ以下に低下し、不安定な抵抗体に変化しています。
ギガオームに対し数100MΩがパラに入るため、成極電圧が下がり感度の低下と低域の減衰が起こります。
指紋の付着により不安定ながら「電解作用」も発生します。
したがって、なんとなく「ブツブツ」や「ボソボソ」といったランダムノイズで困っている場合この清掃法で解決する可能性が高いです。
カプセル付け外しの際、指が触れて不安定になったものが解決する事は少なくないはずです。
★今回そのノイズに遭遇しましたが処置後、音はすっかりキレイになりました。
★カプセル裏側(電極側)も同様に清掃をお薦めします。
マイクの正相・逆相確認法
①まず相=極性の正しいリファレンスマイク、これはC-451Bなど既知の正相マイクをCH-1に接続
②相のわからないマイクをCH-2に接続
③モノラルにしてヘッドホンモニターする
④CH-1のマイクでしゃべる
⑤CH-2のマイクをそこに近づける
⑥モニター音量が増加すればCH2のマイクは「正相」、減少すれば「逆相」です。
音量が上がる・・・・・正相
音量が下がる・・・・・逆相
ここで気をつけなければならないのは、2つのマイク両方とも逆相の場合は異常を発見づらいことです。
かならず「確実な正相マイク」をリファレンスに用意しなければなりません。
(筆者の経験より)
・サウンドハウス・・・位相(極性)管理されています。
・Ali Express・・・・・・正相・逆相入り乱れ状態です。
・AMAZON・・・・・・・ 正相・逆相入り乱れ状態です。
・イ○○楽器・・・・・ 位相(極性)管理されていません。
(位相=極性の信頼できるメーカー)
Shure(現行製品のみ)、AKG(現行製品のみ)、ゼンハイザー(現行製品のみ)、DPA(現行製品のみ)
オーディオテクニカ、SONY 番外でShinさんのマイクすべて
以上
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【おことわり】
★ここで公開している回路・写真・説明文などは音響家の方、アマチュアの方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。
★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。
★第三者に対する販売等の営利目的としてこのサイトの記事を窃用する事は堅くお断り致します。
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