監護者母・父との面会交流補足,監護者母・親権者父という場合について~序論② | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

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石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

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このシリーズ
1 面会交流について悩んでいるお母さんたちへ
2 『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』から
3 監護者母の場合の父との面会交流,子の評価①~人数,割合の紹介 
4 監護者母・父との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介① 
5 監護者母・父との面会交流なしの場合の子の意見~子の声の紹介②
6 監護者母・父との面会交流あり・なしの子の意見について~私が感じたこと
7 監護者父の場合の母との面会交流,子の評価②~人数,割合の紹介
監護者父・母との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介③
監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-1 
10 監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-2
11 監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと①
12 監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと②
13 監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと③
14 監護者母・父との面会交流補足,監護者母・親権者父という場合について~序論①

 前回記事で,『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』 (FPIC調査研究)の中の,監護者母,親権者父と親権者と監護者を分離した場合について,そのような親権者と監護権者の分離は子の福祉にとって好ましくない場合が多いと考えられることを紹介しました。
 この記事では,FPICの以下の解説について,私が感じたことを書いて行きます。

 私がとりあげるFPIC解説は,以下のものです。

☆☆☆引用開始☆☆☆

 離婚には合意しても子どもの親権を主張したり,監護をめぐって対立する場合に,子どものためというよりも,離婚という結論を優先しようとして親権と監護権を分けてしまうことがある。そのような妥協をしてしまうと,離婚後の新たな紛争要因になりかねない。

☆☆☆引用終了☆☆☆ 


(1)
 まず,私は,監護者父・親権者母はFPICの調査研究では0であるのに対し,監護者母・親権者父というケースが4人(約5%)もあるということに着目したいです。
 先の 『子の監護をめぐる法律実務』(編集 冨永忠祐(弁護士)・新日本法規)の100頁でも,監護者母・親権者父の場合しか書いておらず,監護者父・親権者母というケースは全く想定していません。

(2)
 次に,私は,先のFPICのように解説をするならば,親権者と監護者の分離が生じるケースについては,次の3類型に分けて考える必要があるように思いました。

①どちらかというと妻・母の方が夫・父に対して離婚を求め,子の親権で争われ,妻・母が離婚を優先するために,子の監護権者を確保しつつ子の親権者は父という妥協をした場合

②とちらかというと夫・父の方が妻・母に対して離婚を求め,子の親権で争われ,夫・父が離婚を優先するために,子の親権者を確保しつつ子の監護権者は母という妥協をした場合

③離婚自体は双方完全に同意で争いはないが,子の親権が争われ,双方が離婚を優先するために,子の親権者と父,監護権者と母とする妥協をした場合


 前記事
監護者母・父との面会交流補足,監護者母・親権者父という場合について~序論① で「大阪家審昭50・1・16家月27・11・56」を紹介しました。
 その審判決定では,「(親権者と監護権者を父と母に)分属せしめた場合に,通常その円滑な行使は期待し難く,子の福祉に反する結果を生ずるから,特段の事情のない限り,監護適格者に監護権はもとより親権をも行使させるのが妥当で,早晩にその一本化を図るべき」としています。

 このような考え方からしますと,子の監護適格者を母する以上は,父は,基本的に,親権主張を引っ込めるべきということになります。子の監護適格者を母としつつ,それでもなお父が親権を主張する「特段の事情」があるのかどうかを,親権主張する父の方が,「子の福祉」の観点から,しっかりと考えるべきです。
 もっと言いますと,監護適格者が母であるという前提で考えるなら,親権者と監護権者の分離という決着が図られる場合で,子のことを考えていない問題性は,強硬な親権主張を行い続けた夫・父の方にあるのではないか…そのように私は感じました。


 私は,先に,親権者と監護権者の分離が生じる場合について,大ざっぱに3つの類型に分類しました。
 そして,これは私の想像ですが,実際に親権者と監護権者の分類は,①の場合,つまり妻・母の方が夫・父と離婚したくて,夫・父は,どちらかというと離婚に反対または消極的同意という態度,その中で子の親権が争われるというケースが多いのではないでしょうか。
 ①類型が多いのではというのは,繰り返しますが,私の想像です。FPIC調査研究の4例がどうかまでは明言されてませんが,なんとなく,先のFPIC解説は,①の場合を念頭に書かれているような気がするのです。

 そして,この①の場合で,さらに,夫・父がDV夫・モラハラくんとなりますと,私は,そのようなDV夫・モラハラ君が,子を妻に対するコントロールの道具として使い,子を弄んでいる場合がそれなりに多くあるように思います。

 このようなケースで先のFPIC解説のように言われますと,DV被害者の妻は,とんでもない罪責感にたたき込まれてしまうでしょう。
 真の問題の所在はDV加害者の方にあるのに!

 そこで,次の記事では,DV夫・モラハラくんが,離婚前後において,子をDV支配のための道具として利用することがそれなりにあるということを紹介しつつ,FPIC解説の問題点に踏み込んで記事を書いていこうと思います。
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