監護者母・父との面会交流補足,監護者母・親権者父という場合について~序論① | 金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

金沢の弁護士が離婚・女と男と子どもについてあれこれ話すこと

石川県金沢市在住・ごくごく普通のマチ弁(街の弁護士)が,日々の仕事の中で離婚,女と男と子どもにまつわるいろんなことを書き綴っていきます。お役立ちの法律情報はもちろんのこと,私自身の趣味に思いっきり入り込んだ記事もつらつらと書いていきます。

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このシリーズ
1 面会交流について悩んでいるお母さんたちへ
2 『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』から
3 監護者母の場合の父との面会交流,子の評価①~人数,割合の紹介 
4 監護者母・父との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介① 
5 監護者母・父との面会交流なしの場合の子の意見~子の声の紹介②
6 監護者母・父との面会交流あり・なしの子の意見について~私が感じたこと
7 監護者父の場合の母との面会交流,子の評価②~人数,割合の紹介
監護者父・母との面会交流ありの場合の子の評価~子の声の紹介③
監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-1 
10 監護者父・母との面会交流なしの場合の子の評価~子の声の紹介④-2
11 監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと①
12 監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと②
13 監護者父・母との面会交流あり・なしの場合の子の意見について~私が感じたこと③

前回記事までで『離婚した親と子どもの声を聴くー養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究』 (FPIC調査研究)を紹介しつつ,監護者母で父との面会交流についての子の意見,監護者父で母との面会交流についての子の意見を見ていきました。
ここでは,監護者母の場合70人で父との面会交流ありの41人(80%)のうち,特殊なケースとして,親権者と監護者の分離,すなわち,離婚の際に親権者父,監護者母と定めた場合について紹介したいと思います。


 監護者母の総数70人のうち,親権者が父であるのは4人ですから,全体の約6%になります。
 また,監護者父の人数は17人ですから(FPICの解説を読む限り,監護者父で親権者母というケースはないようです。),監護者母・父の総数87人で考えますと,親権者・監護者分離の4人は約5%になります。

 FPIC解説ですと,親権者父・監護者母の4人は,全員が父との面会交流ありです。
 そりゃそうでしょう。だって父は親権という強力な権限を確保しているんですものね。


 まず,FPICが親権・監護権分離について解説している内容を紹介しましょう。

☆☆☆引用開始☆☆☆

 離婚には合意しても子どもの親権を主張したり,監護をめぐって対立する場合に,子どものためというよりも,離婚という結論を優先しようとして親権と監護権を分けてしまうことがある。そのような妥協をしてしまうと,離婚後の新たな紛争要因になりかねない。

☆☆☆引用終了☆☆☆


 まず親権者と監護権者の分離というのは,イレギュラーで,基本的に好ましくありません。
 たとえば,『子の監護をめぐる法律実務』(編集 冨永忠祐(弁護士)・新日本法規)の100頁では,以下のように書いてあります。

 ☆☆☆引用開始☆☆☆

 親権と監護権が分属する方が良い状況も,もちろんあります。
 しかし,「子の福祉」の観点からすれば,一般的に,親権者と監護権者が父母に分属している状態が最善とはいい難い場合も多く経験します。
 実際上も,妥協策として,離婚調停において子の親権者を父親,監護権者を母親と分属させて離婚し,以後母親が監護権者として子の監護養育に当たっていたというケースで,母親から親権者の変更が申し立てられた結果,審判で親権者を父親から監護権者である母親に変更した事例があります(大阪家審昭50・1・16家月27・11・56)。この理由の中でも,①親権者と監護権者とを父母に分属せしめる合意は,父母双方の子に対する愛情を満足させるために,離婚の成立との兼ね合いから,やむを得ない妥協的措置として成立することが多いのが実情である,②分属せしめた場合に,通常その円滑な行使は期待し難く,子の福祉に反する結果を生ずるから,特段の事情のない限り,監護適格者に監護権はもとより親権をも行使させるのが妥当で,早晩にその一本化を図るべきである,(3)特に,子の氏の問題で同居生活上支障を来し,扶養手当,税金,健康保険や母子関係の福祉の面で事実上不利益を被っているなど,分属による弊害が生じているような場合はなおさらである,と判示されています。
 親権者の指定についての紛争が激化している場合に,親権者と監護権者を分属するという形で妥協的に親権争いを調整しようとする場合がありますが,この際にも「子の福祉」の観点からそのような解決が本当に良いのか,今一度考えるべきです。

(太字下線部はしもちゃん)

☆☆☆引用終了☆☆☆

 そして,このように,親権者と監護権者の分離ということが基本的に子にとって好ましくないということを踏まえて,FPICの先の解説を読みますと,私は,そのそのFPICのこの解説に物足りなさ一杯というか,軽い憤りを感じました。
 次の記事でその憤りの理由をお伝えしていきます。

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