梅の鑑賞「探梅」「賞梅」「送梅」の違いとは?
梅を鑑賞する呼び名には、「探梅」「賞梅」「送梅」があります。
これは、梅の花の咲くタイミングによって呼び名が変わります。
「探梅」(たんばい)
まだ固い蕾が多い中、早咲きの梅を一輪一輪探しながら楽しむこと
「賞梅」(しょうばい)
中咲きの時期、たくさんの梅が咲き競う見事がさまを楽しむこと
「送梅」(そうばい)
遅咲きの梅の香りを楽しみつつ、散りゆく梅を惜しみながら愛でることで、去りゆく梅の季節を見送りましょうという意味
このように、春を待ちわびつつ、段階を踏んで変化を楽しみ観賞するのが梅見のポイントです。
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「探梅の魅力」
梅の木の間をそぞろ歩きながら、梅の香りを楽しむ梅見。探梅(たんばい)と呼ぶほうがしっくりくるが。梅は別名、「匂草」(においぐさ)。「香散見草」(かざみぐさ)、「香栄草」(かばえぐさ)などという洒落た別称もある。かつては、新しい着物を着て出かけたようだ。着物に梅の香りを移すためだ。また通は、昼間ではなく夜梅見に出かけた。香りをより深く楽しむためだ。
「白雲の 龍をつつむや 梅の花」(嵐雪)
この梅は、亀戸梅屋敷の「臥龍梅」(がりょうばい)。白雲のようなまわりの満開の梅が、臥龍梅という竜を包んでいるように見えることを詠った句だ。
「実に龍の臥したるがごとく、枝はたれて地中にいりて、また地をはなれ、いづれを幹ともさだめがたし。」(『江戸名所花暦』)
露沾(ろせん)はその姿を見事に形容した。
「登る花 くだる花もや 臥龍梅」
素丸(そまる)は、その素晴らしい香りが消えないことを願ってユーモアあふれる句にした。
「この梅に 散らぬ鍼(はり)する 人もがな」
この「臥龍梅」。外国でも結構知られている。歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」をゴッホが模写(「花咲く梅の木」)したからだ。広重は、画面手前に梅の枝を大胆に配置した対角線構図、「前景ー後景」対比といった印象派の画家たちに多大な影響を及ぼした構図をとっている。ゴッホはトレース素描まで行ってその構図はそのまま採用したが、色彩は原画から自由にゴッホらしく表現。さらに画面左右に漢字を配置し、エキゾチックな効果も加えている。
まもなく桜の季節。喧噪の季節がやってくる。その前に静かに香散見草を楽しみたい。
(歌川広重 「江戸名所 亀戸梅屋舗)
