>オリジナルフルアルバム

>タイトル:Discovery

>アーティスト:Mr.Children

>リリース日:1999年 2月 3日

>記事作成日:2022年 4月 26日

>1回目の感想はコチラ






久しぶりに聴きました!


ぼくが、小4頃から今の今に至るまで、ずーーーーっと「一番好きなアーティスト」。

そこまで好きなアーティストの作品は、音源聴かなくても脳内再生出来るレベルだし(笑)、曲の楽しみ方もどんどん“特に好きな曲だけ集めたマイベストを作って聴く”とか“参戦したライブの曲順通りに並べたプレイリストを聴く”とかになってきがちで。だから、アルバムをアルバムのまま“通し”で聴く事って、中々ないんですよね。

今回も、アルバムとしてはえらく久しぶりに聴きました。そうやって久しぶりに聴いた時に何が起こるかと言うと…聴かなくたって“分かってる”と思っていた作品の“勘違いを正される”という事(笑) 長い月日の中で、勝手に拡大解釈したり勘違いしたり過小評価に陥っていたりしたところが、“原寸大”に正されるんですよね。その感覚は、新作を初めて聴いた時にも似ていて、素敵な体験なんです。




『Discovery』

のっけから、それまでのミスチルにはまったく無かったような、気だるく、ラウドで、ひねくれていて、クセが強いロックチューン。ぼくは洋楽を一切聴かないので分からないんですが、アレンジはレディオヘッドの影響を強く受けているそうですね。きっと、令和の今新譜でそんな事をやったら途端にパクリだなんだと袋叩きになるんでしょうねぇ。当時既にトップアーティストだったミスチルな訳なので、「パクってやろう」というスタンスでそれをやったらどんな事になるかくらいは当人たち、プロデューサー、周辺スタッフが揃いも揃って気づかない筈がない、つまりは「パクってやろう」じゃなくて無邪気に「いい感じのアイデアを自分たちのバンドに落とし込んでみよう」という事だったんだろうなと思います。ミスチルの(主に桜井さんの)時々見せる、無邪気過ぎる遊び心が炸裂しているんだと思う。

閑話休題。

本作は、活動休止明け一発目のアルバムですね。活動休止前は、子どもだったぼくにも察せられるくらいに混沌とした雰囲気を放っていたミスチル。この曲も、ある意味で混沌としていてドロッとしていて爽やかさのカケラもないワケなんですが(笑)、でも、休止前の混沌とこの曲のソレは雰囲気が全然異なっている事はよく分かる。休止前はミスチルの“中の人(たち)”の疲弊が感じられて心配だったけど、この曲は“ダークな曲をパフォーマンスしている”という感じで、だから安心して聴けたんだよなぁ。“中の人(たち)”の不健康さが感じられちゃうと、「解散するかもしれない」「トラブル起こすかもしれない」みたいな心配が先に来ちゃって、楽曲を楽しめないんだ。

あと、今回聴き返して感じたのは、アレンジが凝っているという事。ミスチルなので、当然といえば当然なんだけど…ガキの頃は「なんか重たくてダークな曲」くらいにしか思ってなくて、何となくその第一印象をずっと引きずってここまで来たんだけど、時間を置いて久しぶりに聴いたら、複数のギターがそれぞれ全く異なる“キャラクター”を与えられている事とか、それらが重なり合う事で重層的な世界観が生まれている事とか、リズム隊の音がギターに合わせて(かどうかは知らんけど)凄く乾いていて武骨さと聴き易さの両立を実現している事とか、そして何よりもストリングスがロックしている事とか。

…あぁ、一曲目だけでこんなにダラダラとした長文になってしまっている…。


『光の射す方へ』

シングル曲。少なからず、当時のぼくには衝撃の曲。ミスチルが、シングルで、こういうのを切るという衝撃。ガキンチョの頃には、この良さは正直分からんかったなー(笑) 『everybody goes』にしろ、『マシンガンをぶっ放せ』にしろ、この曲にしろ…クラス1の優等生がある日突然茶髪にしてきた時に「君が求められているのはそういう事じゃないよ」と思う気持ちみたいな。『innocent world』こそが、『花-Memento Mori-』こそが、『Everything(It's you)』こそがミスチルだと思っていた視野の狭いガキンチョのぼくには、ちょっとついていけなかった記憶。今は、この曲にしろ『マシンガンー』『everybodyー』にしろ、むしろ大好きな曲なんですけどね。

MVで、サイケな世界観でキーボード弾いてる桜井さんに「かっけー」とは思った。


『Prism』

シングル『終わりなき旅』のカップリング。

これもまた、そこまでのミスチルには無かったタイプの曲ですね。繊細で、物凄く神経質な雰囲気ではあるんだけど、一方でバンドのダイナミズムも感じられる。正直派手さには欠けるんだけれども、その分バンドの“素”を感じられる気がします。

ぼくが“それまでのミスチルにはなかった”と感じたのは、歌詞にも理由があるかもしれない。内省的である意味女々しさみたいなものがあるところはそれまでのミスチルを踏襲していつつ、でもこの曲には皮肉とか毒っ気がある。ちょっと投げやりなというか、優しくないところがある気がして、そこに新鮮味を感じたのかもしれない。


『アンダーシャツ』

これもちょっと、武骨ではあるけどスコーンと抜ける感じとは言い難い独特の湿度感を放つロックチューン。

この曲の何が良いかって、イントロのカッコいいギターが意外と簡単にコピー出来ちゃうところ(笑) ギターをかじった程度でも、充分に“ミスチル気分を味わえる”。

桜井さんのボーカルが、ちょっぴり粗野で、荒々しくて、男性的で…ドキドキしちゃいますね。

そして、ミスチルあるある的な“今聴いても全く違和感のない歌詞”ね。普遍性ってよりも、もはや予知に近い…。「どこかの国では宗教がらみの正義をめぐってしかけるプラスティックボム」…現在のウクライナ情勢は、宗教を絡めて考える事でその実体が見えて来るという記事をどこかで読んだんですが、そのロシア-ウクライナ戦争にしても相変わらず安定しない中東情勢にしても、無宗教者のぼくにしてみたら「神様なんて居ないほうがよっぽど平和になるのでは?」と思うような争い・諍いが多くて悲しくなりますよね。また、続く「ご飯は残して外国から仕入れて平和でいいな戦争のない国」という歌詞も…それこそ、産油国そして農作物の輸出国としてのイニシアティブを最大限に使って侵攻を進めるロシアを見ていて、まさにこの歌詞にあるようなこの国そして自分自身の在り方に、なんか急に焦りを覚え始めている今日この頃な訳で。ぼくが働く福祉業界も、そして第一次産業界隈も、社会構造を変える事でもっと自給率を上げたり雇用の創出が出来たりする気がするんだけどなぁ(少なくともうちの現場は、“桜を見る会”に費やす予算があればかなりの人材確保が出来て、支援の質の向上を見込める。“桜を見る会”の規模の予算を「少額」と認識するから、おかしな事がいっぱい起きるんだよ)。


『ニシエヒガシエ』

この曲を本作に入れたんだ〜…というのが、最初の印象。活動休止中にノンプロモーションでポンとリリースされた、“活動休止前の空気感”を持った曲。

この曲は、凄くロックンロールではあるんだけれども、でも“バンドの音圧でバーン”というよりは“ギターが前線でバーン”って感じのバランス。だから聴き心地が特殊なんですよね。極端に例えると、“白身魚にデミグラスソース”みたいな(笑) 曲自体は凄く“整った”感じがしてるのに、ギターのみ気を吐いているような。悪くはないんだけど、凄く独特。

だからぼくは、スタジオ音源よりライブのほうがダントツで好きです。ライブだと、ギター以外のパートも全部が全部怪気炎を上げているから。オリジナルに忠実な“間奏3拍子ver”も、いっときよくやってた“間奏4拍子ver”も、『シフクノオトTour』でのナカケーさん主役バージョンも、『Sprit of Difference』のプラス隊バージョンも、全部好き。


『Simple』

前曲の激烈コッテコテロックンロールからの、この曲の優しいイントロ。そのギャップに、今でもキュンとしてしまう。当時のぼくの中で、“ミスチルといったらこの感じ”のまさにど真ん中。『星になれたら』が好きな、『my life』が好きな、『over』が好きな、『ありふれたLove Story』が好きなぼくが「Yes!!!!」とガッツポーズをするような、そんなタイプの曲。実際、初めてこの曲を聴いた時のぼくは、「あぁ、遂にミスチルが“帰ってきた”んだ」と感涙してしまいましたからね(音楽で泣いたのって、あの時が多分人生初)。復帰第1作シングルの『終わりなき旅』を聴いた時よりも、第2弾の『光の射す方へ』の時よりも、この曲を聴いた時のほうが断然「ミスチル、本当に帰ってきたんだなぁ」という気持ちになりました。

優しく、とにかく優しく、冬の夜のスープみたいにあったかくて沁みる、そんなミドルバラード。言葉も、メロディも、演奏(アレンジを含む)も…そのタイトル通り凄くシンプルで、だからこそ胸の芯の芯にピンポイントで刺さってくるんだ。


『I'll be』

この曲が、この時のミスチルの“等身大”だったんだろうなぁ。4人のアンサンブルが中心にあって、余計な装飾が廃されたシンプルかつ骨太なサウンド。ウッディな質感で、“太い”んだけど“丸い”音。そよ風のように優しく軽やかな入口から始まって、終盤にはアツく激しく力強い“総力戦”へ。

もちろん、リズム隊のパワフルでアグレッシブなプレイも良いんだけど、アコギとピアノとボーカルとが中心になって醸し出しているしなやかで柔らかで渋みのある雰囲気が、とても良いんです。

正直、この曲も、リリース当時は今ひとつピンと来なかったんです。悪くはないけど「もっと派手さがあってもいいのにな」と。だから、そんな願いを存分に叶えてくれたシングルバージョンの『I'LL BE』のほうが、ぶっちゃけ断然好きだったんですが…今聴き直すと、この渋みと円熟味にクラッと来てしまうようになりました。個人的には、この曲の進化系というか現在形が、アルバム『REFLECTION』収録の『I wanna be there』だと思ってる。


『#2601』

いやぁ…良いですよね。50代のミスチルには、きっと生み出せないであろう作品。それは劣化だの衰えだの才能の枯渇だのという話ではなくて…若い時分にしか出せない狂気ってあるじゃないですか、まさにそれ。その後も『Monster』『フェイク』『REM』『ロックンロールは生きている』みたいな狂気じみた曲は生み出され続ける訳ですが、やっぱりこの曲が放つ独特の狂気というのは、この曲にしかない。ゾッとする程の狂気は他の曲にもあるけど、なんというか“チャラついた感じ”というのが上乗せされているのはこの曲だけだし、若い頃に作る作品にしか宿らないもののような気がする。

作曲はJENさんも共同でクレジットされてますが、実際どれくらいの割合をJENさんが担ってるのかが気になるところ。この頃は既にミスチルが表紙を飾る音楽誌はひと通り購入してたはずだし、それらは全部取ってあるので、今度読み返してみたら答えが見つかるかもしれない。

とにかく、頭のネジが幾つかぶっ飛んでそうな感じの、アングラな匂いがするハードロックチューン。


『ラララ』

この2曲のギャップもまたね…四川風激辛麻婆豆腐のあとにショートケーキが出てくる感じ(笑) “同じアーティスト”どころか、“同じ人”が作ってるとは思えないギャップ。ゆずの北川さんと岩沢さんのように、ソングライターが2人居るならまだしも…。

アコギのアルペジオとテレキャスター(多分)の可愛らしいメロディが先導する、なんとも優しく柔らかく朗らかで可愛らしい曲。歌詞の「太陽系より果てしなくコンビニより身近な」を地で行くように、“半径2メートル”って感じの平易な表現と情景描写とで人の願いや業や生き方みたいなスケール感のものを歌っていく歌詞。

虚勢と肩肘とを張って生きる事を諦められるようになってきた今こそ、ぼくの胸に沁みてくるんだなぁ(笑)


『終わりなき旅』

活動再開後の最初のシングルでした。

活動休止前のミスチルの作風と比較した時に、“王道”なようでいてでもちょっとだけ異なるような曲。華やかさは、少し減った気がします。その分、重みが2割増。ちょっと男臭くなったというか、ワイルドになったというか。炭酸のシュワッとした泡みたいなポップさはもう“標準装備”されていて消しようがないんだけど、でも活動休止“前”がペプシコーラだとしたら、この曲は炭酸水!って感じ(笑)

歌詞はもう…今さら触れる必要がない程の人生応援歌。今まで、大袈裟でなく何十回と命を救われてきた言葉たち。愛聴しすぎて、もはや「最近『終わりなき旅』を聴いてないって事は、ぼく今もしかして、ヌル〜く生きてんじゃねーか⁉︎」って思ってしまうレベル。


『Image』

序盤は、桜井さんの歌声が優しく語りかけてくるミドルバラード。でも、中盤以降にグググっと熱量を増して、熱く厚くアツい想いを歌い上げるカタチに展開する…この展開が物凄くドラマチックで、鳥肌モノなんだよなぁ。この時期のMr.Childrenの作品は桜井さんの“言葉”に揺さぶられる事が多かったんだけど、この曲は演奏とアレンジにアツくなる。活動再開後のMr.Childrenは、段々と演奏がエモーショナルになっていったんですよねぇ。いわばその“起点”とも言えそうな曲。




そんな、計11曲。


CDジャケットが、こんなにも中身(=音楽)を忠実に表現してる事も珍しいよな、と思う。

殺風景な風景に、真顔のメンバーが、白黒で写っている…このジャケットの通りの、武骨で、男臭く、それでも隠しようのないスタイリッシュさがかもし出てしまっている音楽。このアルバムは、まさしくそんな感じ。


もう少し若い頃のぼくは、『SUPERMARKET FANTASY』やら『シフクノオト』やら『HOME』やらのようなカラフルな作品を好んで聴いていたんですが…最近本作みたいな骨太な作品に惹かれ始めているんです。曲単位で言えば武骨で骨太な曲は沢山あるけど、アルバム単位でロックなのって、この作品が突出しているように思う。


Mr.Children、今年30周年。まだまだ“エントランス”らしいので、取り敢えず50周年まではこのまま追いかけ続ける覚悟を決めておりますよ!!






お気に入りは、

#01 『Discovery』

#02 『光の射す方へ』

#06 『Simple』

#07 『I'll be』

#08 『#2601』

#09 『ラララ』

#10 『終わりなき旅』

#11 『Image』






この作品が好きなら、

・『三日月ロック』/スピッツ

・『アンテナ』/くるり

・『雲をも掴む民』/ポルノグラフィティ

などもいかがでしょうか。






CDで手元に置いておきたいレベル\(^o^)/

















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