Jackson Heightsというバンドを語る時に、Emerson, Lake and Palmer(ELP)を結成するためにKeith Emersonが脱退して、70年に結局解散となったThe NiceのメンバーLee Jacksonが結成したという話から始まるのは仕方のないことかもしれない。しかし、Jackson HeightsはEmersonがLeader的存在であったThe Niceとは根本的に音楽性が異なるバンドであり、彼らの音楽をEmersonやELP絡みで比較したり、語ってしまうのは厳しいところであろう。Lee JacksonはThe Niceではベースを弾きLead Vocalを担当していたが、Jackson Heights結成にあたり、Acoustic Guitarを弾いてVocalを担当して、ベースはMario Enrique Covarrubias Tapiaにまかせている。Jacksonは当初、Acoustic Guitarを中心とする音楽を志向していた。Newcastle upon Tyneに生まれたLee Jacksonはメンバー募集を見て加入したGary Farr & The T-BonesでKeith Emersonに出会っている。Emmersonは、その後The V.I.P'sに加入するが、P. P. Arnoldのバックバンドで再びJacksonと組んで、それがThe Niceに発展する。Jackson Heightsでは、後にLindisfarneで活躍するCharlie HarcourtがElectric GuitarにPiano、Organ、Harpsichord 、Mellotron、そしてSpanish Guitarを演奏し、Tommy SioneがドラムスでJacksonがアコギとVocal、ベースは上述のMario Enrique Covarrubias Tapiaが担当してCharismaからDebut Album『King Progress』をリリースしている。しかし、商業的な成功を収めることができず、Jacksonは新たにバンドを再編し、今度はベースを弾きギターにJustineのJohn McBurnieと鍵盤にFlaming YouthのBrian Chattonをメンバーに迎え72年にアルバム『The Fifth Avenue Bus』、『Ragamuffins Fool』をリリース、本作はそれに続く彼らの最後のアルバムとなる。McBurnieと Chattonが加入してからの作品がJackson Heightsというバンドが最も充実していたともいえるだろう。
『Public Romance』はJackson Heightsが73年にVertigoからリリースしたアルバム。彼らの最終作にして最高傑作と言われている。Moog SynthesizerのProgrammingのためにKeith Emersonが参加していたりKing Crimsonに在籍していた2人のDrummer Michael GilesとIan Wallaceが参加しているというのが大きな話題だろうけれど、3人のメンバーの手による楽曲が抒情的で捻りのある英国の香りを放ちStrings Sectionを配して優美で華やかな彩りを添えている。
アルバム1曲目は“I Could Be Your Orchestra”。Stringsと厚みのあるChorusがPastoralな英国詩情に満ちた情景を描き出している。
“Spaghetti Sunshine”も牧歌的でPopな英国の香りを濃厚に放っている。後半の展開も面白い。
“Long Necked Lady”は重たいリズム隊にのって歌われるPopで抒情を感じさせるMelodyがイイ感じ。Fiddleも登場して、この捻り具合も良き。
Classicalなピアノで始まり軽快で捻りの効いたPopsに展開する“Public Romance”。Synthesizerソロがイイ感じ。
タイトル曲“Bump And Grind”はStringsとChorusがLyricalで劇的な楽曲を盛り上げる。
イントロからお遊び感覚に満ちた“Cumberland Country”。ClavinetとSteel Guitarが面白い。ここからJacksonとChattonの共作が4曲続く。
“It's A Shame”はマッタリしたノリながら英国的抒情が香り立つ。
“Ladies In The Chorus”は10ccにも通じる捻りのある凝ったPops。
アルバム最後をシメるのは疾走感に満ち、Popでめくるめく展開が英国的な“Whatever Happened To The Conversation”。
(Hit-C Fiore)