New World/Stanley Cowell | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

  Stanley Cowellがこの世を去って3年がたった。今日はCowellの命日。Stanley CowellというPianistについては、どうしてもTrumpet奏者Charles Tolliverと結成したMusic Inc.や二人が設立したレーベルStrata-Eastについて個人的な思い入れが強すぎて、どうも冷静に評価することが難しくなってしまう。理想の音楽を追求するために誰にも束縛を受けることなく音楽家自身がレーベルを運営/経営していくという趣旨を持ったStrata-East。結局、音楽活動と経営の両立は困難だったのか、さまざまな問題を抱えて袂を分かつことになってしまう2人であるが、この時代に彼らが生み出していった作品は自由と創造へ情熱を燃やしたMusicianの才能が爆発した傑作となっていったのである。Stanley Cowellが60年代末から70年代前半にかけてリリースした作品は、そういった崇高な意思を持ったMusicianの創造性スリリングに研ぎ澄まされていく演奏力が噛み合ったものばかりである。だからといって、その熱い創造意欲と自由への意志が人々の注目を集めたこの時期以降のCowellがそういった挑戦をやめてしまったのかといえば、それは即座に否定されるだろう。確かに次から次へと刺激的な作品が生み出されていった時と比べれば、物足りない部分がないとはいえない。しかし伝統を受け継ぐ姿勢と先進性共存するCowellは70年代後半から80年代にかけても衰えていない。Galaxyに移籍後も、Fender Rhodes Electric PianoやClavinet、Arp Odysseyを導入した『Waiting for the Moment』、女性Vocalを迎えて歌モノに挑戦した『Talkin' 'bout Love』 と挑戦は続いていったのだ。ジャンルを越えた音楽がようやく評価を得るようになった現在でこそ聴いて欲しい作品である。そしてCharles Tolliverと共演したMax Roachのアルバム『Members, Don't Git Weary』収録曲をタイトルにして再び原点に立ち戻ったEquipoise』に続く本作がリリースされる。そのジャケットにはStatue of Liberty自由の女神)が登場したのだった。

 

 『New World』はStanley Cowellが81年にGalaxyからリリースしたアルバム。ベースにMusic Inc.の盟友Cecil McBee、ドラムスにRoy HaynesTrumpetとFlugelhornにEddie Henderson、TromboneにJulian Priester、SaxとFlute、ClarinetににSun RaのArkestraで活躍するPat Patrick、CelloにTeresa Adams、ViolinのNate Rubinというメンツ。

アルバム1曲目“Come Sunday”は優美なCowellのピアノで始まる。鐘の音を合図男女混声ChorusAfroなPercussionが鳴り響く。LatinなBeatにのってViolinピアノChorusがさまざまな人種や文化がひしめき合う自由の国 亜米利加の交響曲を奏でていく。

Ask Him”はGospelの香り漂うナンバーでCowellのエレピが奏でるThemeに続いてJulian PriesterTromboneソロ、Corusが続く。

Cowellの弾くKalimbaが心地良い“Island Of Haitoo”。RubinのViolinもイイ味を出している。

I'm Trying To Find A Way”は76年作『Regeneration』の冒頭を飾った高揚感に満ちたナンバー“Trying To Find A Way”の再演。大空を全力で駆け巡るようなCowellのピアノ・ソロやMcBeeの思慮深いベース・ソロが最高。CelloViolinもイイ味を出していて何度聞いてもこみ上げてくるものを抑えることが出来ない。

黒く都会の闇を蠢くようなEl Space-O”はCowellのFunkness炸裂Pat PatrickのSaxソロ、Hendersonの闇を切り裂くようなTrumpetソロもカッコイイ。

アルバム最後をシメるのはCowellのBrilliantなピアノ・ソロによる演奏“Sienna: Welcome To This New World”。

(Hit-C Fiore)