Mutima/Cecil McBee | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 偉大なるベーシスト/音楽家のCharlie Hadenを失い、意気消沈の日々ではあるが、本日ご紹介するのは個人的には、Hadenに負けないくらい大好きなベーシストの一人Cecil McBee。とにかくMcBeeのベースの音色タイム感は一度ハマると病み付きになってしまうのだ。さらに黒くてぶっとい重心の低い音が最高なのだ。そして何よりも男っぷりの良いフレージングが素晴らしい。高い演奏技術を持ちながらRichard Davisのようにプレイが軽く上滑りしないのが、さらに素晴らしい。ベーシストほどセンスが何より重要視される職業もそうはない。そういう意味ではMcBeeはベーシストの鏡だ。例えば、その独特のタイム感はVibratoのかけ方に関しても綿密に計算されている。Vibratoを必要以上きかせ過ぎてタメがなかったりピッチが悪くなってしまうのが気になるDavisとは大違いなのである。McBeeはバッキングも当然センス抜群でツボを得ている人なのである。ルートを強調することよりも、全体の流れの中で演奏者と対話しながらラインを作り上げていくのもMcBeeらしい個性だ。これはクラシック上がりのJazzベーシストには中々できない芸当である。そして何よりもComposerとしても優れているところが素晴らしい。全曲McBeeのオリジナルで固められた本作は、その才能が爆発した名盤である。

 『Mutima』はCecil McBeeStrata-Eastから74年にリリースした1stリーダー・アルバム。
アルバムの1発目の“From Within”でいきなり度肝を抜かれる。この曲を聴いて逃げ出さないように。まず、刺激が強いこの曲は飛ばして2曲目から聴くのも一つの手ではある。重なり合うArcoが奏でる重厚な魂の叫び。会話をしたかと思えば喧嘩するかのように、しかしあくまでも黒く重い音の塊が悲しげになり響く。
続いてはイントロが鳥肌が立つほどカッコイイ“Voice Of The 7th Angel”。Dee Dee Bridgewater気高く美しいVoiceに気をとられていると、あっという間に終わってしまう。
Life Waves”はMcBeeの高速ランニングにTenorのGeorge AdamsがFreakyに暴れまわるFreeなナンバー。AltoのAllen Braufmanも相当な暴れん坊さんだ。TrumpetのTex Allen、ピアノのOnaje Allen Gumbsも鬼気迫るプレイで健闘している。McBeeの重くて黒いベースのRiffを合図に全員が思うがままにプレイしても統一感があるのが素晴らしい。McBeeのベースに対応しているドラムスのJimmy Hoppsもスゴイとしか言えない。
タイトル曲“Mutima”はOnaje Allen GumbsのピアノとMcBeeのArcoによる神秘的なイントロで始まり、McBeeのベース・ラインが変幻自在にRhythmを操りながらAfro Spritualな歓喜の瞬間を美しく描いていく。TrumpetのTex AllenSopranoのAdams、FluteArt Webbが素晴らしいソロを披露している。そして躍動感に満ちたOnaje Allen Gumbsのピアノ・ソロの宝石のような煌びやかさと美しさも特筆すべき。Lawrence KillianのCongaやJaboli Billy HartのPercussionも大活躍である。
FluteArcoによるイントロから激カッコイイ“A Feeling”だが、あっさり終わってしまうのが不満ではある。
最後を飾るのはイントロから鳥肌もののJazz FunkTulsa Black”。この曲のみ息子のCecil McBee, Jr.がFunkyなベースを弾いている。Adamsの大暴れなソロは通常運転ながらさすがの一言。
(Hit-C Fiore)