Julian PriesterとくればECMからの『Love, Love』と即座に出てしまう自分ではあるが、本作はHard Bop魂炸裂のご機嫌な一枚である。Julian PriesterというTrombone奏者は50年代にSun RaのBig Bandで活躍し、Lionel HamptonとTourしてMax Roachのバンドに抜擢された実力者である。10代の頃はMuddy WatersやBo DiddleyなどBluesやR&BのMusicianと演奏をしていたというPriesterだが、Sonny StittとJamしたりするのをきっかけにJazzへの道を歩んでいったという。RoachのGroupに在籍している60年にRiversideから初リーダー作『Keep Swingin'』をリリースしていて、これがTenor Sax奏者Jimmy Heathとの2管にTommy Flanaganのピアノ、Elvin Jonesのドラムス、そして大好きなSam JonesのベースでHard-Boiledな男前Hard Bopの傑作に仕上がっている。本作はそれに続く2作目となるのだが、編成が面白い。ベースのSam Jonesはそのままで、ドラムスにArt Taylor、ピアノには当時John ColtraneのGroupに加入した新進気鋭のMcCoy Tyner、Tenor SaxにMax Roachのところでアルバム 『We Insist!』で一緒だったWalter Benton、そしててなんとBaritone SaxでDinah Washingtonのバンドで一緒だったSun RaのArkestra出身のCharles Davisが参加しているのである。このメンツからは中々音が想像できなかった自分ではあったが、最初にこの音盤を聴いた時に感じた意外にまっとうで真摯なHard Bop路線が聴けば聴くほど味わい深くなっていくのだ。もっと尖がったHard Bopをメンツから想像してしまう方もいらっしゃるかもしれないが、重低音のEnsembleを中心に組み立てた無骨で男くさいHard Bopがたまらないのである。
『Spiritsville』はJulian Priester Sextetが60年にJazzlandからリリースしたアルバム。
アルバム1発目はTynerのキレキレのピアノから始まる“Chi Chi”。Charlie Parker作のBop魂炸裂のこのBluesを小気味良い演奏で楽しませてくれる。
Priester作の“Blue Stride”は何といってもSam Jonesのグイノリのベース・ランニングに痺れますな。Charles DavisのBaritone Saxソロも男くさくてカッコイイっす。
PriesterのTromboneがRichard Rodgers珠玉の旋律を切なく奏でるBallad“It Might As Well Be Spring”。 Tynerのピアノ・ソロもイイ感じ。
Walter Benton作の“Excursion”は重低音のEnsembleがHard-Boiledな男の世界で迫る。これは鯔背な男の浪漫。
続いてもBenton作となるアルバム・タイトル曲“Spiritsville”は指パッチンの男前Jazz。これはSam Jonesの漆黒のベース・ソロが痺れますな。Tynerも玉を転がすご機嫌のピアノ・ソロ、そしてCharles DavisのBaritonソロが低音でぶっぱなすとBentonがキレキレのTenorソロ。そしてシメはPriester。これこそがHard Bop。
肩の力を抜いて“My Romance”。こういうRelaxモードでのTromboneソロも実に良いもんですな。Charles DavisのBaritoneソロも低音で男らしく歌い、Bentonが小粋に続いてTynerも軽快にキメている。
アルバム最後を飾るのはBenton作の男前Jazz Waltz“Donna's Waltz”。Themeの方は荒くれ男の手料理風だが、Tromboneソロ、Tenorソロと続くあたりは実に心地良し。ここでもBaritonソロが歌っている。TynerはビシッとソロをキメてThemeに入るところも素晴らしい。
(Hit-C Fiore)