The Strands Of The Future/Pulsar | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Pulsarというバンドは不思議な魅力を持った、ある意味、非常にFrance的な個性を持った存在である。おそらくPink FloydやMoody Blues、Genesis、.King Crimsonといった英国のバンドの影響を受けているのは間違いないのだろうけれど、MoogSolinaなどのSynthesizerとMellotron、Organ、そしてFluteやAcoustic Gitarもまじえて、幻想的で、時に甘美で郷愁を誘うような独特の音世界を生みだしている。決して演奏技術が高く作曲能力も目を見張るものがあるわけではないのに、音響的にも、どちらかといえば安っぽく、垢抜けないものがあるにもかかわらず、その虚ろで夢想的ともいえる雰囲気に自然と惹きこまれてしまうのである。75年に英国のKingdom Recordsから1st Album『Pollen』をリリース、この作品も良かったが、本日ご紹介する2nd AlbumThe Strands Of The Future』は、さらに面白い。中古レコード屋さんで日本盤を手に入れたのが大正解であった。まず、タイトルなんだけど、『執着の浜辺』という邦題が素晴らしい。J. G. Ballardの短編小説『Terminal Beach』の邦題をそのまんまいただいてしまったものであるのだけれど。そして、惜しくも今年宇宙へと旅立ってしまった松本零士先生のイラスト付きときたもんだ(日本盤独自企画とな)。文句なし。しかし、このジャケットは、見開きでかなり不気味ではある。本作ではベースでVocalも担当していたPhilippe Roman脱退してしまい、ドラムスのVictor Bosch、Electric GuitarとAcoustic Guitar、VocalsのGilbert Gandil、Organ,、Synthesizer、MellotronにBassを演奏するJacques Roman、FuteとSolina Strings担当のRoland Richardという4人編成。彼あは、その後も活動を続けて、77年CBSから3作目のアルバムとなる『Halloween』をリリースしている。

 

 『The Strands Of The Future』はPulsar76年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はA面全てを使ったタイトル曲“The Strands Of The Future”。22分越えの対極であるが一気に聴かせてしまう。SynthesizerによるSentimentalな旋律から始まり、不穏なギターのArpeggioから、煽りたてるようなSynthesizerが静から動的な展開へなだれ込むかと思わせつつ、SynthesizerやギターのArpeggioが再び幻想的で抒情的な世界へと誘い込む頼りなげなVocalが登場して英語だかフランス語だかわからないような歌を聴かせると、Synthesizerが入って曲が終わるかと思いきや、人々の話し声とバックにかすかに流れるSynthesizerとSirenのようなな音が摩訶不思議な世界へ、7拍子と共に誘う。そしてお約束のMellotronの嵐に包まれ、何度目かの混沌の海に突然流されてしまうのであった。最後はFluteと7Acoustic Guitarによる甘美で、郷愁を誘うような音世界が待ち受けている。とりとめのない、決して洗練されているとは言えない構成ではあるが、後半のめくるめくような展開は圧巻である。

Flight”はウネリまくるSynthesizerMellotron疾走感溢れるリズム隊にのって幻惑する。リズム・チェンジして物憂げなScatが登場するあたりが、おフランス風情を醸し出し、荘厳なMellotron ChoirFluteが、これでもかと神秘の世界へ誘い込む。

LyricalなギターのArpeggioFluteから始まる“Windows”。フランス語訛りの強い英語のVocalが登場し、まんまPink Floydの影響を受けた曲は、やっぱり、そう、ギルモア先生風のギター・ソロへと続く。墓なげなFluteソロがイイ感じ。

最後を飾るのは“Fool's Failure”。TheatricalなVocalがおフランス、Angeの香りが漂いつつMysteriousなSynthesizerとMellotronに異次元へTripさせられてしまう。

(Hit-C Fiore)