静岡工区モリタリング会議でJR東海丹羽社長が「静岡工区の着手の目途が立たないことから2027年開業を断念した」と発表したことで静岡悪玉論に拍車がかかっている。

 

当ブログでは、マスコミに代わって過去の記事から検証してみる。

 

朝日新聞 2007年(平成19年)4月25日 
リニア開業「2025年目標」JR東海社長 
 JR東海は、山梨県で実験中のリニアモーターカーを使った中央新幹線について、営業運転開始の目標時期を2025年に設定した。東京-大阪での実現を目指しているが、まず首都圏から中京圏間での先行開業を目指す。同社がリニア新幹線の開業時期を公表するのは初めて。東京-大阪間で約1時間という計画だけに、実現すれば首都圏とっ中京圏を40分程度で結ぶことになりそうだ。

 

朝日新聞 2010年(平成22年)4月29日 
リニア2年先送り JR東海 2027年に計画変更 収益悪化のため
 JR東海は28日、リニア中央新幹線(東京-名古屋間)の開業が、当初計画より2年遅れて2027年になる見通しだと発表した。東京-大阪間の開業は45年になる・景気悪化で主力の東海道新幹線の利用客が減り、収益が悪化しているためだ。
 当初は、鉄道事業の売上高が07年度の水準で推移するとの前提で、開業年度を計画していた。しかし、景気悪化による利用客の落ち込みに加えて、今後も売上高が伸び悩むと判断。建設費用の負担を減らすため。見直しことにした。着工は14年度中を目指す。

 

日経新聞 2011年(平成23年)6月8日

JR東海がリニア中央新幹線の中間駅候補駅を公表

JR東海は2011年6月7日、2027年に先行開業する予定のリニア中央新幹線の東京・名古屋間について、具体的な想定ルートと沿線各県に設置する中間駅の概略位置を公表した。中間駅の候補地は、神奈川が相模原市内、山梨が甲府盆地南部、岐阜が中津川市西部。長野は高森町周辺が有力だが、地元自治体からのヒアリングを踏まえて後日選定する予定だ。

 

日経新聞 2014年(平成26年)8月26日

リニア新幹線の工事計画認可を申請 JR東海

JR東海は26日、2027年に品川―名古屋間で開業を目指すリニア中央新幹線について、太田昭宏国土交通相に全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づく工事実施計画の認可を申請したと発表した。

リニア中央新幹線は13年後の27年に品川―名古屋間を先行開業させ、その18年後の45年に新大阪まで延伸させる計画。名古屋までで5兆5235億円を見込む建設費はJR東海が全額を負担する。

 

日経新聞 2014年(平成26年)10月17日

リニア新幹線、国交相が着工認可 27年開業目指す

太田昭宏国土交通相は17日、東海旅客鉄道(JR東海)が申請していた東京(品川)―名古屋間のリニア中央新幹線の工事実施計画を認可した。超電導リニア技術を高速鉄道に導入するのは世界で初めてで、2027年の開業を目指す。総事業費5兆円にのぼる巨大プロジェクトが国の基本計画決定から41年を経て動き出す。

 

静岡朝日テレビ 2014年(平成26年)10月17日 

川勝知事は歓迎、田辺静岡市長は急ぐべきではない

 

 

( 川勝知事 )

歓迎しております。ようやく工事開始という段取りになったことを大変喜んでいる。2020年東京オリンピックまでに品川-甲府の先行開業、南アルプス工事は詳しく環境調査をした後にするべき。と注文を付けた。

( 田辺静岡市長 )

私たちの懸念を十分払拭するような回答を戴いていない。私たちの共通した思いは着工を急ぐべきではないということであります。と慎重な姿勢を示した。

 

 

☆アラカンおじさんのコメント

静岡工区についてのモリタニング会議であることからJR東海が当会議で静岡工区と開業時期について初めて言及したことは歓迎したい。

従って、マスコミが2027年開業が静岡工区だけの理由で断念した如く印象付ける報道内容に問題がある。

常日頃から様々な情報に触れてきた静岡県民にとって特別なことではないが、情報に不足していた県外の人たちにとっては衝撃的であったことだと想像がつく。

 

正確なルートや駅も決まっていない段階で経済的理由で決められた2027年開業が今まで修正されてこなかったことが不思議である。

リニア沿線の関心がなかったのか?、恣意的に聞こうとしなかったのか?

沿線からの要望が無かったことから、JR東海は混乱(反発)を避けるため公表しなかったということだろうが・・・

別の言い方をすれば住民からの批判を避けるため、沿線自治体はJR東海と組んで、静岡が着工できないことを言い訳としてきたともいえる。

そのことが本質を隠し、静岡悪玉論の根拠になっている。

 

最後に、モニタリング会議での感想を纏めておく

リニア着工を歓迎した川勝知事が現在抵抗しているごときに映る理由はJR東海は詳しい環境調査を未だしていないということだろう・・・

大村愛知県知事などの発言がハードルを上げてしまった。

有識者会議の結論は「トンネル工事の影響を正確に予測することは不可能」というものだが、マスコミがこれを理解できずに報道していることが問題を複雑にしている。

マスコミは静岡工区の工事は着工から10年で完了するとする発言を正確に受け止めてはいない。

最短でもという前段階の部分を隠してしまったので、静岡工区が着工できれば10年で完成すると誤ったメッセージを伝えてしまった。

これが静岡悪玉論の根源になっている。

 

JR東海が公表した工事計画では

ステップ⑥

 

ステップ①

・山梨県内において、山梨・静岡県境に向けて高速長尺先進ボーリングを実施し、 県境を越えて静岡県内の地質や地下水の状況について確認 

・静岡工区のトンネルも同様に、掘削前に高速長尺先進ボーリングを実施

ステップ②

・各工事ヤードにおいて、土砂ピット、濁水処理設備等の設置、坑口予定箇所 の整備(樹木伐採や斜面補強)等を実施

ステップ③

・千石の工事ヤードから千石斜坑、工事用道路トンネルを掘削 

・西俣の工事ヤードから西俣斜坑、工事用道路トンネルを掘削 

・導水路トンネルは、椹島の工事ヤードから掘削

ステップ④

・工事用道路トンネルの掘削完了 

・これ以降、西俣斜坑からの発生土は工事用道路トンネルを経由して運搬 

・千石斜坑、西俣斜坑および導水路トンネルを引き続き掘削

ステップ⑤

・千石斜坑の掘削が完了 

・先進坑および本坑の掘削を開始 

・引き続き導水路トンネルおよび西俣斜坑を掘削

ステップ⑥

・西俣斜坑の掘削完了 

・西俣斜坑からの先進坑および本坑の掘削を開始

ステップ⑦

・先進坑、本坑の掘削完了

 

静岡工区の事業計画 概要 工事順序

001734872.pdf (mlit.go.jp)

 

工事が輻輳するステップ⑥の段階では先進坑・本坑内で8か所の切羽が同時に稼働している。

果たしてこのような工事が可能であろうか?

これが工期を10年とした場合の工程である。

直感的にはタイトすぎて無理な計画だと思う・・・

筆者は三遠南信道青崩れトンネルの悪戦苦闘ぶりからも2倍の20年が妥当だと思える。

最初の関門は長野工区や山梨工区で経験していない下に向かって掘っていく非常口(斜坑)の掘削である。

蓄水されている破砕帯を掘削することから高圧大量の湧水に遭遇する可能性は大きい。

その時にはJR東海には大きな決断を迫られることになる。

 

JR東海は「大きな過ちをした」と気づく時がやってくる。

早期に完成したいのであれば、長野県が求めた諏訪ルートや大井川の水に影響の出ない静岡・長野・山梨の県境の北側をルートとして選定していれば地形とも合致し、これほど苦労することにはならなかった。

結局、リニア中央新幹線認可時の川勝知事のコメント

「南アルプス工事は詳しく環境調査をした後にするべき」

・・・が今となってはJR東海の肩に重くのしかかる。

南アルプスの特殊性地形的条件を軽視し、財政事情から2027年開業とし、修正してこなかったことが足かせとなり、JR東海は今後も苦悩するでのであろう・・・

 

国交省のモリタニング会議では、オブザーバーの静岡県(森中央新幹線対策本部長)が「水を抜いて工事を安全に進めたいJR東海水を保全して住民の命(生活)を守りたい静岡県との間には水に関する認識が異なる」と発言した。

 

JR東海は水を甘く見てしまった

 

おまけ

ピントがずれているテレビ静岡

 

 

2023年1月に開かれた定例会見で丹羽社長は静岡工区における着工の見通しが立たないことを理由に「静岡工区の状況を踏まえて品川・名古屋間の各工区の進捗を確認しつつ、工事全体の進め方について検討を始めた」と述べていて、静岡工区以外の工区について2027年までに工事が完了するとの認識を示したことはない

 

マスコミ各社は「静岡工区着工の見通しが立たないので2027年開業は断念した」と報道しているよ。

これって、誤報というよりも詐欺かよ・・・?

 

多くの国民は騙された