なでしこJAPANのコーナーキックについて記載します。

 

2023年07月08日 時点で、89試合も観戦・分析しているので、
それなりのデーター数は有るのですが、あまり参考にはなりません。
①代表チーム故、メンバーも頻繁に代わる。
②例えば2018・2022年のように、アジアカップとアジア大会が重なっている年と、2019年W杯Yearでは、相手の力関係が全く違う。
経年データーをまとめても、なでしこJAPANの力のより、試合相手の強弱の方が、大きく現れているようです。
 
よってデーターからでの考察では無く、主に私の所感を記述していきます。
以下の様な視点で2023オーストラリア・ニュージーランド共催W杯を見たいと思っています。
 
 
(1) なでしこJAPANのコーナーキックの評価概要。
 
a) 高さ関係:低い目
 

過去2大会とW杯最終戦のスタメンを身長順に並べると以下のようになります。

池田体制では、高倉体制より少し高さを回復したものの、欧米の強国に対すると厳しいのは変わらない。
 

佐々木体制:2015年カナダW杯(対アメリカ代表)

熊谷 宇津木 大儀見 坂口 石清水 鮫島 有吉 宮間 川澄 大野
 173    168     168      165    163    163   159   157  157  164

 

高倉体制:2019年フランスW杯(対オランダ代表)

熊谷 菅澤 鮫島 杉田 市瀬 清水 中島 岩渕 長谷川 三浦
 173  168   163  162   160   160   158  156     156    156
 
池田体制:2023/04/12 国際親善試合デンマーク戦
熊谷 南 遠藤 三宅 植木 藤野 清水 長野 長谷川 岩渕
 173 172 167  165  162   162   160   160    156    155
 
 

 

b) 軸になる攻撃
 
世代は変わっていくが、
正面~ファーサイドの競りでは分が無いので、ニアでの合わせが軸なのは変わらない。
 
池田体制になって、植木選手と田中選手が軸で2023W杯を戦う。
単純に戦っては分が無いので、ピックプレ-を絡めたいところだが、この1年ピックプレ-が減っている。菅澤選手が2022年秋以降呼ばれなくなって、やらなくなっている。
 
 
c)攻撃の工夫
 
高さ勝負に勝ち目が薄いなでしこJAPANには、外から攻めるショートコーナーやミドルシュートは、取り組むべきテーマだと思う。
ショートコーナーを多用しているのは池田体制になっても相変わらずだが、相手の様子を見ながらのもので、戻してからクロスを上げるだけ。
ミドルシュートに関しては、2023/04のポルトガル戦で1本目から見せていて、企画をしようという雰囲気になりつつ有ると思う。
 
d)守備力
 
佐々木体制では対セットプレーの防御力は高く、公式戦で無失点だった。
ゾーン固定配置(ストーン)の宮間さん・澤さん・阪口さんが、指示を沢山出して統率していたのだが、高倉体制では引き継がれていないかった。
池田体制になって2022年初のアジア杯以降、清水選手(余程のことが無い限りピッチ上にいる)がストーン入るようになって、統率面では良くなっている思う。

ただ、マンマーク力、特に平面戦で、2023W杯は不安なメンバーが多く、あっさりやられることを私は心配している。

 

 

 
******
 
 
以下詳細に記述する。
 
 
レベルを(A)~(E)で評価。あくまで私の視点です。
「世界一を目指すには」という視点で評価します。
(A)強国相手にも突出していて、決め手と呼べる
(B)強国相手にも優位に進められる
(C)強国相手に同等に戦う必要レベルには達している
(D)強国相手には劣勢
(E)強国相手に狙われれば致命的
 
 (佐々木体制:2015カナダW杯/高倉体制:2019フランスW杯
   /池田体制:2023オーストラリア・ニュージーランド共催W杯)
 
A.攻撃詳細

 

攻撃力は、佐々木体制>高倉体制≧池田体制。

世界一のキッカー宮間さん、ニアで合わせる永里(大儀見)選手、澤さんの存在が大きかった。
 
a)ニアでの合わせ(B/C-/C-)
 
①佐々木体制では、ニアが軸になっていた。
宮間さん→澤さん(165cm)、永里(大儀見)選手へのニアへの飛び込みが、軸だった。
二人ともテクニシャンで、アクロバティックなヘディングもやっていた。

また、代役として、川村選手、菅澤選手も軸になり得た。

 

②高倉体制で頼りになったのは菅澤選手。
テクニック的には永里選手や澤さんにやや劣るが、パワーで総合力的には変わらない。
 
だが、フランスW杯まで菅澤選手のプレイタイムは多くはなかった。
それまでは、熊谷選手が代わりやっていたが、マークマンを剥がすと言う点で技術が低く、ゴールの予感はしなかった。
また、キッカーとのコミュニケーションも、佐々木体制ほど出来ていない。
 
③池田体制
菅澤選手が2022年秋以降呼ばれなくなって、軸は植木選手と田中選手。
テクニックやパワー面で国際的には秀でてはいない。
サポートしてあげないと、形にならないだろうから、ピックプレーを見せて欲しい。
 
 
b)中央からファーでの競り(C/D/D)
 
①佐々木体制では、熊谷選手・坂口さん・石清水選手らが担当。
欧米相手には厳しかったが、対アジアでは勝負になっていた。
岩清水選手・坂口さんに共通なのは、上がってきたボールに対し、
溜めてから走り込んで「点で合わせる」技術を持っていること。
2014年のアジアカップ準決勝中国戦で岩清水選手が延長終了間際に決めたゴールは、その中でも秀逸だった。
 
②高倉体制では、厳しい。
菅澤選手が不在で、熊谷選手がニアへ走ると、ほぼノーチャンスの受け手しか残って居ない。
宝田選手(169)・遠藤選手(167cm)・南選手(170cm)などに期待したが、点で合わせるような技術は付けられなかった。
 
③池田体制も、変わっていないので厳しい。
2023W杯で競りに行くのは、熊谷選手・南選手、交代選手で高橋選手と言うところで、相変わらず厳しい。
 
 
c)キッカーと戦術選択(A/B/C+)
 
①佐々木体制
宮間さんは世界一のキッカー。誰も文句なく認めるところ。
 
②高倉体制
メインキッカー:中島選手のキック精度そのものは高かった。

他には長谷川選手・横山選手・籾木選手・遠藤選手などが、蹴っている。

しかし、受け手とのコミュニケーション力で劣ると思う。

軸になる攻撃が無いと言うこともその一因。
 
③池田体制
総合的に精度はやや落ちていると見るべきだろう。
多くの選手が蹴っていて、W杯前のこの約1年は左CK:猶本選手・林選手・藤野選手、右CK遠藤選手と分散している。
2023W杯では、藤野選手はプレ-タイムが多いだろうが最優先では無く、他のキッカーは出番がおそらく少ない。キッカーは分散するだろう。
所属クラブで専任している猶本選手の出場時には期待したい。
 
 
 
d)ショートコーナー・ミドルシュート(C/C/C)
 
身長の低いなでしこJAPANは、本来この2つでピッチを広く使った攻撃をして
欲しいところだ。しかし、うまく使っているとは言い難い。
 
①佐々木体制
キッカー:宮間さんに優れたドリブル突破力は無く、ショートコーナーにさほどの力は無かった。
ローボールからのミドルシュートもカナダW杯決勝で見せたくらい。
 
②高倉体制

I神戸が戦果を上げた「中島選手⇒セーフティ参加(鮫島選手)」を持ち込んで多用したが、相手国に警戒されてしまった。

長谷川選手、横山選手と、ドリブル突破力に優れている選手がキッカーを務めていたので、ショートコーナーを磨く価値があると思ったが、そう言う企画はなかった。
 
③池田体制
ショートコーナーを多用しているのは池田体制になっても相変わらずだが、相手の様子を見ながらのもので、戻してからクロスを上げるだけ。
藤野選手が蹴るときは、そのドリブル力に期待して、ショートコーナーからの突破を仕込んでもらいたいと思う。
 
ミドルシュートに関しては、体制発足以来ほとんど見せ無かったが、
2023/04のポルトガル戦で1本目から見せていて、企画をしようという雰囲気になりつつ有ると思う。
 
 
 
 
e)ピックプレー(C-/C/C-)
 
①佐々木体制:ほとんど見られなかった。
以下が私が確認した僅かな例。
・澤さんが個人的にやっていたが、味方のブロックによる援護は期待していない。
・主戦以外では、川村選手/北原選手で1度だけ。
 
②高倉体制;散見している。
ただ、菅澤選手を軸とするもが多かった。
・浦和つながりで猶本選手のブロックは頻繁にあった。
・2019フランスW杯のスコットランド代表に対し、杉田選手+遠藤選手でブロックしていた。 (4-183:リンク参照)

 

③池田体制:最初は増えていたが・・。

菅澤選手中心に増えていた。だが、2022年秋以降招集されなくなって減ってしまっている。

前述のように2023W杯では、植木選手や田中選手をフリーにするために、ピックプレ-を活用すべきだと思う。

 

 

f)ゴール前密集隊形(-/-/-)
 
採用しない。身長も低いし、妥当なこと。
 

g)相手ゴールキーパーの守備範囲限定(D/D/D+)
 
GK脇にセットする選手が、ほぼ場所取りをしない。
佐々木体制では大野選手、高倉体制では、岩渕選手がその役を務めることが多かったが、
私に言わせれば、2人は全く仕事をしていなかった。
池田体制では、色々な選手がやっているが、杉田選手が入った時は多少期待しながら、私は見ている。
 
 

B.守備詳細
 
守備力も、佐々木体制>高倉体制≧池田体制。
宮間さん・澤さんの統率力と、各選手のマーク力の差が大きい。
 
a)基本守備体系
 
ア) 基本は、マンツーマン中心。10人守備で3名のゾーン固定配置。
池田体制になって2名のゾーン固定配置。
固定配置するのは、以下のパターンが多い。
 
監督・選手   ニアポスト脇  約5mニアポスト前   約5m正面
①佐々木体制 宮間さん    坂口さん(澤さん)  熊谷選手
②高倉体制   岩渕選手    菅澤選手       熊谷選手
③池田体制   清水選手    植木選手(田中選手)  -
 
マンツーマンで守る選手は、自分でクリアすることよりも、相手に飛ばせないことを理想とし、
ゾーン固定の選手に託す主旨。(1-4/6:リンク参照)

 

この主旨を佐々木体制では徹底されていたが、
高倉体制になって若い選手達が入って理解が低下したのか緩んでいて、
池田体制でもそのまま。
 
イ)ショートコーナーには、基本ニアポスト脇の選手が対応している。
積極的に対応したり、しなかったり、相手チームに合わせている。
 
ウ)ゾーンディフェンス
・やらない。
・相手攻撃側陣がゴール前に集まって密集を作って来ても、マンツーマンのまま。
 
 
b)各選手の傾向・特徴
 
ゴール前に走り込む相手選手にマンツーマンで付く選手の傾向で言えば以下の通り
                           
①佐々木体制
密着マークするタイプ
永里(大儀見)選手有吉選手岩清水選手宇津木選手、安藤選手、

離して付くタイプ

鮫島選手

 *下線:W杯最終戦スタメンで、相手主力をマーク。
 
②高倉体制
密着マークするタイプ

杉田選手清水選手市瀬選手南選手

離して付くタイプ

鮫島選手、三宅選手

 *下線:W杯最終戦スタメンで、相手主力をマーク。
 
③池田体制
熊谷選手南選手、高橋選手、杉田選手、長野選手、田中選手、守屋選手、藤野選手、清家選手、石川選手
離して付くタイプ
三宅選手遠藤選手
 *下線:2023/04デンマーク戦に先発し、競りに来た相手主力選手をマーク。
 
 
c)マンツーマンのマークの強さ(C+/C-/C-)
 
①佐々木体制:主力をマークする選手の、1対1のマークの押さえは効いていた。
また、2ndに対する備えも、ほぼ全員出来ていた。
だが、2015カナダW杯決勝で、ピックプレーへの脆さが露呈した。
 
②高倉体制:身長不足で、相手主力をマークできる選手がそもそも足りない。
また、平面的にも、ちゃんと密着マークできている市瀬選手、ポイントを押さえる鮫島選手は合格だが、他の選手は、ダッシュで外されやすい。
2ndに対する備えも、5人目の選手が甘い。
 
③池田体制
3バックにして、高さの不安は軽減したが、それでも約10cm高い相手をマークすることに大差は無い。平面戦でボール落下点に入らせない・自由に打たせないように守る必要性は変わらない。
代表戦やWEリーグなどを見ていて、平面戦が強い選手が思い浮かばない。
石川選手がやや優秀程度の印象。
2023W杯はかなり不安なメンバー。
実際2022年秋以降シュートを打たれ過ぎている(下表・グラフ参照)。
 
 
d)ゾーン配置選手(ストーン)の強さ(C/C+/C)
 
ゾーン配置選手の高さ、強さは、高倉体制での菅澤選手が最強。
佐々木体制(澤さん・阪口さん)と池田体制(植木選手・田中選手)は同じ程度。
 
 
e)逆襲力(D/D+/B)
 
佐々木体制&高倉体制では10人守備なので、そもそも逆襲力は期待されていない。
ただ、横山選手が居る分だけ、高倉体制の方が逆襲の可能性があった。
池田体制では、1人前戦に残しているし、藤野選手・宮澤選手などスピードが有って、かつて無い反撃能力だと評価している。
 
 
f)統制(A/D/C)
 
①佐々木体制:本当に良く統率されていた。
ゾーン配置の澤さん、宮間さんの戦術眼が大きいと思う。
 
②高倉体制 :熊谷選手、山下選手が頑張らないと・・・。
下表のように2019年は合計8人ミスによって漏らしている。
フランスW杯で幾度もマークが漏れ、Round of 16での敗退に繋がった。
全体を見渡しバランスを取る指示系統が出来ていない。
 
③池田体制
ゾーン固定配置を2人にして、熊谷選手が相手エースにマンマークで付くようになった。
実質指揮ができなくなったが、2清水選手がニアポスト脇に入るようになり代役になっている。
高倉体制よりは良くなっていると思う。
 
 
 
 
 
 
g)過去の恐れるべき戦略
 
2つ有って、身長の低いなでしこJAPANに対し、これらの戦略を用いられると厳しい。

 

ア)ゴール前密集陣形
単純に身長差で厳しい。
ゴールキーパーの出足を押さえた上で、作った密集の少し外側にキックを上げられたら、
おそらく為す術無く、シュートを打たれると思う。

 

イ)正面~ファーサイドの競りを徹底されること。
なでしこJAPANの選手と欧米の高身長選手の身長差が10cm以上というのは
ざらにあって、おそらく必敗。
 
佐々木体制&高倉体制では、ゴール正面に熊谷選手を置くゾーン固定配置3人体制を敷いていたが、そのファー側をブロックされて、さらにそのファー側を狙われている。

オーストラリア代表が実際にやってきた戦略(4-132:リンク参照) 

 

 
(2)データ
 
独自に収集したデータを年毎に表とグラフ、またコーナーキック結果集積図にまとめる。
あくまで、私が観戦・ブログ化した試合の情報で、全ての試合のデーターを採取したわけではありませんので、ご了承ください。
2023/07/08時点(2022-2023WEリーグ終了時点)
 
A.年毎のデーター
 
グラフに関しては、点を取ったのは、母数が7以上のもの。
また、得点数では分子が少なすぎて評価しにくいので、シュート打ち率、被シュート打ち率を
プロットした。
 
前述の通り、なでしこJAPANの力よりも、相手の力関係が出たデーターだと考えている。
対戦相手が厳しいと攻守共に、成績が低下する。
 
また、アジアのコーナーキックからの攻撃は、レベルが低いと言うこと。
強国と呼べないチームもあるし、
強国でも中国、韓国はチーム力からすると、コーナーキックの工夫は2020年までは、全くないに近い次元だった。
 
だが、2022秋以降の守備が悪いのは、W杯を控えて、1つの不安材料。
 
 
 
B.結果集積図
 
ニア狙いの傾向が強い。
正面~ファーサイドの競りに大きな期待が出来ないので、致し方ないところ。
 
なお、代表チームの練習時間は短いので、キッカーの嗜好が出やすい。
2019年は中島選手のモノが現れた結果。
池田体制になってキッカーが分散しているが、あまり傾向には差は無い。
 

 

2020年はサボっています。


以上です。
 
履歴
 2019/08/30 作成
 2020/01/10 更新 (アーカイブ)
 2023/07/08 更新
 

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