2009年にプロフィールの公開もなく、「anew」で突如デビューしたandropは今年でデビュー15周年
9月からは4人で回るアニバーサリーツアー、10/14にはTOKYO ISLANDがandrop主催フェスとして開催することが発表されているが、アニバーサリーイヤーの本格始動を告げるのはこちらも今年でメジャーデビュー10周年を迎えるgo! go! vanillasとのツーマン
フェスで共演はあれど、ツーマンは初の組み合わせである

早めに会場に到着すると、EX THEATER ROPPONGIでライブを見る際、毎回重宝しているフロアの後方部分が封鎖

EX シアターでライブを見る際はそこで見ることが多いのでそこに入れないのは凹むし、今のandropにはEX シアターも若干厳しいことを痛感させられる(昨年「One and Zero」の再現ライブをZepp DiverCityでやった際も「Fab Gravity」のツアーでZepp Shinjukuはソールドしてないから致し方ないが)

会場では別府由来によるDJタイムが展開
自分に馴染み深い邦ロックの曲が流れまくっており、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「リライト」が流れた際には歌ってしまっていた

・go!go!vanillas

前回ライブを見たのは2022年に幕張メッセで行われたライブホリック以来なので、バニラズを見るのはかなり久々
井上がサポートで加わったり、アリーナクラスでワンマンするようになったりと日本のロックンロールの代表となったが、先日は事務所から独立することを発表し、音楽リスナーを大いに驚かせている

お馴染みの軽快なSEでサポートの井上を含めた5人で登場するが、バンドで最も目立つだろうセイヤ(Dr.)はなんと途中で逆立ち
日本のドラマーで恐らく最もアクティブなドラマーだと思われるが、逆立ちで入場出来るくらい身体能力も抜群
唯一無二のパフォーマンスが出来る要因の1つではないだろうか

最新のアー写のように柳沢(Gt. & Vo.)も牧(Vo. & Gt.)もスーツを着用
プリティ(Ba.)の衣装にそこまで変化はないものの、よりロックンロールバンドらしい容姿に変化しているが、セイヤのツービートが目立つ「FUZZ LOVE」で始まるのはandropファンどころか、バニラズファンも驚くような始まり方
このライブ、事前にそれぞれのFCでお互いのファンに聞かせたい曲のリクエストを募っていたのだが、「FUZZ LOVE」はバニラズサイドのリクエスト1位であることが後のMCで明らかに
コロナ禍前からイベントではそんなに見かけなかったし、「そういうことね」と途中で理解できたが、バニラズファンにとっては嬉しいサプライズ
andropファンには「こんな曲もあるんだ!?」と意表をつかれると反応が正反対なオープニング

ハンドマイクになった牧が軽く自己紹介した後、「チェンジユアワールド」ではプリティや井上が飛び跳ね、客席も跳ねる方だらけのダンスフロアとなるが、前回見たときは傑作「PANDORA」のモード
だから「FLOWERS」の流れになると思っていた
アンサンブルは井上が携わることでポップになっているけど、序盤で本格的に注目される前の頃の曲が連発されるのは懐かしい感じになる

「ライブハウスは子供に帰る場所だ‼」

と柳沢は叫ぶも、「いやそれ以前に童心に帰っている方いますよね?」よろしく、セイヤやプリティは子供の頃にはっちゃけているのだが、柳沢もボーカルを務める「クライベイビー(途中でセイヤはスティックをロゴに向かって投げる)」で牧とプリティが背中合わせに演奏している場面を見ると自然と心が熱くなる

ロッキンオンで2号に渡って敢行された牧の3万字インタビューで、牧とプリティはバニラズの前身バンドの頃から共に歩んている盟友だということが記されていた
プリティは事故の被害に遭って、1度ステージに立てない状況になってしまった
あのニュースを知ったときは「嘘だろ…」とショックを受けてしまったが、事故直後こそサポートを入れたものの、翌年からサポートを入れずに回り続けたことは今でも覚えてるし、似たような方法で活動したキュウソネコカミやROTTENGRAFFTYは途中で限界に達し、サポートを入れる編成に切り替えていた
JAPAN JAMでストレイテナーのステージに登場した際、ひなっちがサポートベースに名乗り出て、

「そしたらプリティ、プレッシャー感じて戻りにくくなりますから‼」

と話していたが、牧はプリティの居場所を何が何でも守りたかったのだろう
牧とプリティが帰ってきてからのバニラズは何度か見ているが、3万字インタビューを読んだあとだとよりグッとくるものがある

上着を脱いだ牧はハンドマイクに持ち替え改めて自己紹介し、事前に合唱を促してから今年初めにリリースされた「SHAKE」はまさしくロックンロールの王道
セイヤとプリティがお互いに目を合わせながらグルーヴを刻み、アクティブにドラムを刻んでいたセイヤも丁寧にビートを刻んていたが、「SHAKE」は彼らが初期にリリースされたフルアルバムのタイトル
このタイトルと再び出会うことになるとは…

ついで個人的にバニラズの最高傑作と思っている「PANDORA」から「鏡」が投じられるが、自分が「PANDORA」を最高傑作と思っているのはバニラズがここで吹っ切れたから
近年、色んなアーティストがシーケンスを使うようになり、10-FEETでさえ使用するになったら今日
ロックンロールとシーケンスの融合はあまり想像つかなかったが、バニラズはそれを「PANDORA」を持って実現させた
ベクトルが異なるように見えるロックンロールとEDMの融合
「PANDORA」をリリースした辺りからバニラズを取り巻く環境も大いに変化した気がする

無論、伝統のロックンロールの流れも引き継いでおり、

「君も渦中」

のフレーズが中毒性強い「平安」はロックンロールと和のテイストの融合
柳沢のカッティングが心弾ませ、和の要素を漂わせているのは井上の存在が大きいが少しずつだけど平安時代をテーマにした曲が増えてきたようにも見える
それは現在放送されている大河ドラマ「光る君へ」の舞台が平安時代で、放送前にインスパイアされるように平安時代に触れるアーティストが増えただろうか?(ちなみに高校の頃、歴史を学んでいたがこの時代は文学史の方が重要で学習しづらかったのを覚えている)

セイヤによってライブをする前にバニラズのメンバーもandropのメンバーもお互いのラジオ番組に登場して、交流したことを明かしていくが、andropのメンバーがサウナ好きであることに関連してか6年くらい前、牧達はサウナブームが起こる前からサウナにハマり始めたようだが、

「「凄いものを見つけたぞ‼」と思ったんです。そしたら自分たちがハマった頃にandropは熱波師の資格を持っていた。僕たちが赤子の頃、andropは成人になっていた(笑)」

とandropはその上を行っていた模様

マカロニえんぴつの田辺や長谷川もサウナ好きだし、BLUE ENCOUNTの田邊に至ってはサウナをテーマなしたコンピレーションアルバムを発表するくらいサウナは音楽シーンと密接
セイヤに至っては参加者のタオルで熱波を起こすように促し、

「サウナを好きなアーティストの音源は信頼できる(笑)」

とまで言い出す牧(笑)
ちなみにバニラズには例のサウナソングがあるが、DISH//に「SAUNA SONG」を出された際は大いに嫉妬していたらしい(笑)

そんなバニラズは事務所独立を発表したばかりだが、今回が事務所独立後初のライブ
つまり今回のandropとのツーマンを独立初ライブに選んでくれたという訳だ
すなわち「初」の瞬間を目の当たりにしているわけだが、

「闇を照らすのは俺達だ!!」

と牧が宣言した「平成ペイン」ではサビで至る所から例の振り付けがなされる
ちょうど「平成ペイン」がリリースされた辺り、「おはようカルチャー」の編曲にホリエアツシが携わったことでストレイテナーのツーマンツアーのゲストに招かれていたが、その時はそこまで振り付けするものはいなかった
でも今や大半の方がしている
ここまでは振付をそこまで気にしてなかったが、今後を考えて振付を覚えておきたい
そう考えるようになるほど今では浸透している

全員がメインボーカルを務める「デッドマンズチェイス」はセイヤと井上以外の3人は動き回って、途中各々のソロ回しを井上も含めて行ったりする
そのストレイテナーとのツーマンでもやった気がするが、メンバー全員がボーカルを取れるのは改めて恐ろしい
無我夢中で跳ねまくってしまう

更にプリティが「E」「M」「A」の振り付けを身体で行わせてからの「エマ」でより踊らせるが、歌って楽しいロックンロールというバニラズの基本軸は昔からずっと変わってない
ロックンロールの常識を打破するようなことはしたが、バニラズはずっとバニラズのままだ
まさかここまで世に浸透するとは思わなかったけど

牧がエレキギターからアコギに持ちかえたところで、冒頭の「FUZZ LOVE」は投票企画で1位だった曲であることを明らかにしたが、

「andropとバニラズのファン同士がおすすめの音楽を交換し合ったり、飲みに行ったりサウナに行ってくれれば」

とサウナを何が何でも入れる牧
「どこまでサウナが好きなんだ」とツッコミを入れたくなるが、最後に演奏(これも投票企画を反映?)された「LIFE IS BEAUTIFUL」は、

「andropとなら大丈夫」

と歌詞を加えて大歓声
バニラズ流の人生讃歌でバトンを託した

令和になって、日本のロックンロールを代表するバンドと言えばバニラズ
自分としてはまだTHE BAWDIESのイメージがあるし、「リカ」のイメージが強いSIX LOUNGE、現在が絶好調のa flood of circleもロックンロールの代表
でもバニラズを通してロックンロールの楽しさを知り、ロックンロールを始める若者が出てくればシーンはより活気づくだろう
バニラズが台頭したのはシーンの希望である

ちなみに自分が洋楽を聞くきっかけは、セイヤが着用していたRed Hot Chili Peppersだった
セイヤは東京ドーム公演に参加したのだろうか?

セトリ
FUZZ LOVE
チェンジユアワールド
クライベイビー
SHAKE

平安
平成ペイン
デッドマンズチェイス
エマ
LIFE IS BEAUTIFUL

転換中は再び別府がDJタイム
Cody・Lee(李)の「悶々」が流れた際には興奮したし、飛び入り参加したセイヤがindigo la Endの「瞳に映らない」を「良い曲」と称したのは嬉しかったが、NEEの「不革命前夜」が流れた際には思わずグッとなってしまった

・androp
そうしてテンションを下げないようにDJタイムと転換が並行されたことであっという間にandropの時間
いつものサンバのSEが流れると、Green Room Festivalではジュンジマンもいたので6人かと思いきや、別所をサポートキーボードに入れた5人というお馴染みの編成
一時は6人で回っていたが、バニラズファンにもこの編成のほうが馴染み深いだろう

そのSEから音が途切れることなく手拍子が同期で流れ、内澤(Vo. & Gt.)や佐藤拓(Gt.)がイントロを鳴らす「Mirror Dance」で始まるが、予想はしていたけど内澤は、

「やっぱり俺達は バニラズが好きだ!!」

と叫び、バニラズ目当ての参加者の心をガッチリと
そのまま

「跳ねる 跳ねる」

のサビに合わせて、跳ねまくる客席
ミラーボールは回転することないけど、交わされる合唱はいつの日も夜明けを感じさせてくれる

「andropです。」

と内澤が名乗りすぐにハンドマイクになると「Lonely」で前田(Ba.)は客席に背中を見せながらシンセベースへ
佐藤が癖になるギターリフを奏でる中で伊藤(Dr.)は 手数の多いビートを刻むが、

「手を上げて」

に合わせて、客席から手が上がるのは今や様式美
内澤の声に合わせて手が一斉に上がるのは今や名物である

どことなく夜の都会の物静かな感じがするアーバンな「Ravel」で前田が静かにスラップベース、佐藤拓がカッティングを鳴らしながら踊らせると、内澤のMCはほぼバニラズのライブの感想
それも興奮気味に話しており、ただのファンに見えてしまったがこれでもかつてはドラマタイアップを連発していたロックバンド
難解な曲をキャッチーに昇華することにたけたプロフェッショナルである

その手腕は「Story」でも発揮されており、一見王道の歌謡曲に見えてもストリングスは用いることなく、人力で壮大な世界観を形成している
内澤はここではアコギを手にしているが、今年に入って急に「hikari」をやらなくなったのは、

「光をくれたのはあなたでした」

よろしく、「hikari」の立ち位置を「Story」が受け継いだからだろうか
これも「hikari」のように幅広い世代に受け入れられるべきと思っているが

「今日は笑って帰ろうね」

とハンドマイクになった内澤が告げ、誰が何と言おうがandropの最高傑作と思っている「Tokio Stranger」は大勢の手が上がった後、

「笑ってる!!」

と内澤は参加者の反応を見て喜んでいたが、ダークなトラックは伊藤のドラムを合図に大きく表情を変える
なんでこれが評価されないのか
自分は不思議でならないし、SNSでバズる曲以上にこっちを聞いて欲しいと2年前からずっと思っている
一体感を共有するのではなく、混沌とした時代に立ち向かうような1曲

「繋ぐ手と手
皆幸せの方向へ進めばいいさ」

のように「Tokio Stranger」は導いてくれるから

2000年代のヒップポップシーンを牽引したm-floを彷彿させる「Saturday Night Apollo」で、別所がダンスフロアを連想させるメロを鍵盤で鳴らしつつ、

「フィーバーしてる?」

と問いかける内澤

ジュリアナ東京みたく派手な扇子をもったり、輝きまくるミラーボールの下で踊っているわけでもない跳ねまくっている訳でもない
しかし我々の心は静かに熱くなっている
足でリズムを刻んだり、音に合わせて首を静かに振るように

それはパレードのように行進していく「SuperCar」もそう
別所がジャズのようにメロウな鍵盤を奏でたりとアッパーな訳ではないけど、内澤に声を出すように促されるとすぐに合唱が返ってくる
バニラズとアプローチは違うけど、身も心も軽くする音楽であることに変わらない
自然に笑顔になるロックである

一転「Hyper Vacation」では佐藤拓のカッティングに合わせて飛び跳ねるものが続出
コロナ禍前からR&B路線が続いていたのもあり、「fab」以降はギターロックを基調とした音楽が続いているが、「relight」の頃にandropを知ったファンとしては踊れるアプローチでも、R&Bよりはギターロックに比重を置いたアプローチの方が好き
「Efector」の路線はR&Bが好きな自分にはたまらないものだったけど、初期のandropを好きな方にはこの路線の方が好ましい気がする

「良いジャンプでした」

と内澤は「Hyper Vacation」を締めくくるが、内澤がエレキを背負い直した途端に始まったのは、andropの演奏テクが存分に発揮にされる「One」
コロナ禍以降は演奏されなかっただけに、内澤達は明言してないものの、おそらくこれがandropサイドのリクエスト上位
サビを聞けばキャッチーだけどAメロの佐藤拓のギターや伊藤のドラムは簡単に出来るものじゃない
そうした曲をオーダーしたのは「Blue」以前の路線を望んでいるんだと思う
自分だって「Shout」や「Bright Siren」辺りを聞きたい
難解でありながらキャッチーでロック
それがandropの真髄とandropのファンはバニラズサイドに知っていただきたいのだろう

そして最後はお馴染みの「Voice」で前田がゴリッゴリのベースを鳴らしつつ手拍子や合唱を煽っていくが、最後のサビ前に伊藤はスティックをロゴに向かって軽く投げた
普段のライブでは絶対やらない行動は、セイヤに触発されたものだろう
唐突すぎて前田は笑っていたが、

「大事なものはすぐそばにあるよ」

と思い出させると、再び合唱へ

多幸感ある世界に染め上げて本編は終わったが、「Story」以降はMC無し
ストイックに曲を連発していた

いつものように「Encore」が客席から合唱された後、内澤達がすぐに戻り、

「急に驚かしてごめん!みんな歌い出して驚いたよね?」

と初めてその光景を目撃しただろう、バニラズのファンに謝罪するが、内澤はここから凄いことをやることを告知
同時に転換中にコラボグッズや久々に4人でツアーを回ること、アニバーサリーイヤーをお祝いしてお酒が出来たことを報告するが、予想よりも早く転換は終了(バニラズのセットがほぼ全てセッティング)

転換の早さに驚きつつ、内澤はバニラズを呼び込み、セイヤは内澤が紹介したお酒の感想を告げ、別所と井上はヤッターマンのドロンジョみたいになっていると内澤や牧に弄られていたが、どうやらシーンにはバンドマンのボーカルがサウナだけを語るグループラインがあるようで、内澤は毎日稼働しているとのこと
なお牧はそこで事務所を独立することを告げたとか

そうしたやり取りをやっていく中で、サウナ繋がりだからか「TTNoW」をコラボするものの、途中から伊藤の姿は無し
「どこだろう?」と思いきや、伊藤はサングラスをかけてセイヤの元へ(笑)
恐らく1番注目を集めていただろう、まさか伊藤がこんな行動に出るとは…
ちなみに途中でドラムも交換するが、セイヤは伊藤のドラムでも普通に立ちながらビート
誰のドラムでもセイヤは普段のスタンスを変えない模様である

バニラズの面々が去ると、最後は

「よくやった Toast!
笑っていて これからもずっと
また出会う時も
それじゃ Toast!
手を伸ばして
今 祝福の歌 歌いましょう」

とここまで生き残ったお互いを讃え合うように「Toast」
XIIXとのツーマンも最後が「Toast」だったし、当面は「Toast」がラストなのだろうし、

「これからもしんどいことはありますが、生きていればいいことがあります。生き延びましょう」

と未来でも悲しいことはあることを伝えつつ、それでも歩みを止めないように促す内澤の言葉はきっと心にしみた筈
また伊藤はスティックを投げたけど(笑)

演奏が終わると、バニラズも交えて記念撮影
何故か「Can't Stop」が流れていることに内澤や牧をツッコミを入れたが、まさしく特別な1日だった

セトリ
Mirror Dance
Lonely
Ravel
Story
Tokio Stranger
Saturday Night Apollo
SuperCar
Hyper Vacation
One
Voice
(Encore)
TTNoW(androp × go!go!vanillas)
Toast

andropの周年はこれからも続く
アニバーサリーライブもあれば、androp主催のフェスもある
UNISON SQUARE GARDENやストレイテナーの出演も発表されたし、前田がサポートしているアーティストも出演するかもしれない

笑い飛ばすべく、祝福するべく、andropをより追いかけたいと思う




※前回見たandropのワンマン


※前回見たandropのライブ


※前回見たバニラズのライブ