UNISON SQUARE GARDENの斎藤と米津玄師やsumikaのサポートで知られる須藤優によるロックバンド、XIIXが昨年から始動されたツーマンシリーズ「eleven back」
昨年はKroiをゲストに招いたが、今年は2daysに分けての開催
翌日は秋山黄色が出演するのに対し、この日は「魔法の鏡」の制作に携わった内澤が所属するandropが出演
余談だが斎藤も前田も今月見るのは2度目だったりする

予定が入らなければこの自主企画に2日参加することを考えたが、先行の時点で落選者が相次いだように、場内は当然満員
それでも1人あたりのスペースがしっかり確保されているのが恵比寿ガーデンホールの良いところ
恵比寿駅から距離が離れてなければ完璧なのだが…

・androp
前田(Ba.)は先週fhánaのサポートで見たものの、andropとして見るのは昨年のZepp Shinjuku以来
本来ならmol-74とのツーマンも参加予定だったが、無理はしないように心がけていたので実に半年ぶり

いつものサンバ調のSEで登場すると、この日もサポートキーボードは去年のZepp Shinjukuと同じく別所
パーカッション兼ホーンがいたことが今となっては懐かしく思えるが、代表曲の「Voice」で始めるのはコロナ禍前から全く変わらない
それは序盤に代表曲で攻めて、徐々にR&B強めな楽曲を連発するandropの必勝パターンであるが、この日の客層はandropを兼ねてから見ていた方が多いのだろうか
「Voice」の複雑な手拍子も合唱もしっかり起こっている

XIIXのファンは半分以上がUNISON SQUARE GARDENのファンも掛け持ちしている
つまりandropを見る機会も普段から多く、伊藤(Dr.)のビートが気合が入っているのもそういう事だろう
ステージに準備されているミラーボールが回転するのに合わせて、飛び跳ねるのは実に気持ちいい

それは「Mirror Dance」も同じ
もはやワンマン以外で「Diary」以前の曲をやることはおおいに減ったけど、「Voice」とこの「Mirror Dance」はほぼ必ずやってくれる
この2曲がandropを今日まで導いてくれたし、fhánaのライブを見て思ったようにやっぱり前田はゴリッゴリのベースを弾くのが似合う
並びに内澤(Vo. & Gt.)は

「XIIXが好き!!」

と叫んで大歓声を浴び、「Mirror Dance」のサビは、

「跳ねる跳ねる」

の如くもう飛び跳ねずにはいられない
この日は映像演出は無い
近年のandropは映像演出が凄いので、O-EASTやZepp Shinjukuがあまりに相性良すぎるのが、逆に惜しいが「Mirror Dance」の魔法はいつになっても溶ける様子はない

内澤がハンドマイクに持ち替えると、R&Bの路線にシフトし、「Lonely」で佐藤(Gt.)は一度聞いたら忘れられない摩訶不思議なリフを弾くも、

「手を上げて」

に合わせるように、客席から一斉に手が上がるのはすっかり名物となった
もはや内澤に促されるのを待っているようにも見える

「Fab」のリリース以降は「Lonely」と共にライブの軸となりつつある「Ravel」でゆったりと踊らせていくと、

「夢の舞台です」
「興奮しています」

なんて謙遜しまくる内澤

かつて代々木第一体育館でワンマンしたバンドのフロントマンらしからぬ発言だが、佐藤によれば「Mirror Dance」で思い切り噛んでいたらしい
自分には全くそう聞こえなかったが

するとここで先日リリースされたばかりの新曲「Story」へ
再び内澤はギターを背負ったが、王道をゆくようなロックバラードはかつて、ドラマタイアップを連発していたメジャー時代を思い出した(一時andropは当たり前のようにドラマタイアップが続き、中でも「Shout」は特に気に入っていた)
それはドラマの主題歌だからなんだろうけど、

「光をくれたのはあなたでした」

と「Hikari」に通ずるフレーズが
もしかしたら「Story」は「Hikari」の立ち位置を引き継ぐ
そんな重要楽曲になるかもしれない

内澤はすぐにハンドマイクに戻り、「Neo Tokio Stranger」は近年のandropに大いに貢献している別所の鍵盤ソロを経て始まったが、佐藤はグイグイ前の方に出てギターを鳴らし、客席からも拳が上がりまくり
自分は数年前から「「Tokio Stranger」はもっと評価されるべき」と書いていた
ブラックミュージックのandropとギターロックのandropが完璧に混ざりあった曲と思っていたから
リリース当時から再生回数はそこまで伸びている訳ではない
でもこんなに手が上がりまくっているのは、ワンマン以外じゃあそう見れない
だから伊藤のビートも呼応してデカくなる
普通に歴史に名を残すべき名曲だから

しかしandropは以前fhánaとツーマンした際、「青空のラプソディ」をカバーしていた(なおこの日は終日、前田が出ずっぱりになった前田dayでもある)
そのように共演アーティストの楽曲をカバーする傾向があるようで、この日は「No More」を「新曲」と偽ってカバー
そうして共演者の曲をカバー出来るのは、以前から難度の高い曲をキャッチーに昇華してカバーしてきたバンドだから
となるとandropがゲストで招かれているライブは参加してみたくなる
自分が愛着のあるアーティストなら尚更

同時に共演アーティストの楽曲をカバーすることは味方を増えすも同然であり、Zepp Shinjukuで見た際、「どう考えてもEarth〜意識したよな(笑)」な演出がなされた「Hyper Vacation」で客席はダンスフロア化
これほどフェスやライブに相応しい曲名は無いし、これも無我夢中で踊る
2023年のandropはとんでもない発明をしたなと今更ながら思うが、コロナ禍を逆手に取って制作された「Supercar」は今や揺れながら合唱が当たり前
ライブ前にどんなに後ろ向きでも、この2曲をやられたらもう前向きになってしまう
ある意味恐ろしい組み合わせだ

そして最後、

「最後まで楽しんで!!」

と内澤が一声かけたのはZepp Shinjuku ワンマンでも最後に演奏された「Toast」
この日まで生き延びたことを称えるよう、祝福の歌でライブを終えた

終わってみるとライブでは鉄板の「Hikari」が消えた
てっきりコラボ用かと思われたが、コラボしたのは別の曲
どうやらandropのライブはまた変化を迎えたようだ

思えば野音ワンマンを終えたあと、セトリが徐々に「fab」のモードへ移行
気が付くと「Effector」の曲もそう多くなくなっていた
今は「gravity」のモードだけど、年内には新しいアルバムが出るかもしれない

ライブは当然ながら笑い飛ばせるくらい良かった
けれども、アンコールでまさかあの曲をコラボするなんて思いもしなかった

セトリ
Voice
Miror Dance
Lonely
Ravel
Story
Neo Tokio Stranger
No More(XIIXのカバー)
Hyper Vacation
Supercar
Toast

・XIIX
ライブをするのは昨年10月のEX THEATER以来
斎藤(Vo. & Gt.)はUNISON SQUARE GARDENが20周年イヤーで忙しく、須藤(Ba. & Cho.)も他のミュージシャンのサポートやレコーディングなどで多忙だろうけど、ようやく今年初ライブを迎えられることに

不穏なSEと共に斎藤達が姿を現すと、メンバー編成は「XIIX」リリース以降の5人編成のまま(斎藤と須藤に加えて、鍵盤、ギター、ドラムのオーソドックスな編成)
ギターにクメジュンヤ、鍵盤におそらく日本で1番忙しい鍵盤こと山本健太を迎えるのは変わらないが、ドラムはお久しぶりとなる堀
実質、米津玄師のリズム隊がステージに揃ったようなもの

「XIIXです!!」

と斎藤が軽く自己紹介すると、ミュージシャン達の生き様とも言うべき「LIFE IS MUSIC!!!!!!」からスタート
須藤はステージを歩き回りながら何度もベースを掲げたりするが、堀がサポートに入ると手数も多くなったりパンキッシュなビートを刻んだりもする
米津にとどまらず、須田景凪やmiletのサポートも行っているが、曲をロックテイストへアプローチさせるのにこれほど相応しいドラマーはいないだろう(翌日はmiletの横アリがあったが、翌日も堀がサポートしたらしい)

山本が奏でているだろう鮮やかなメロディーに合わせるように、照明もカラフルに輝く「シトラス」で踊らせ、一時はラストも担っていた「ユースレス・シンフォニー」と振り幅の大きさを見せるようにキラーチューンを連発する序盤
去年まではDJも参加するやや変則的な編成で、急にDJに変わってギターが加わったことは戸惑いを隠せなかった
でもクジョウはサポートギターながら、音数を増やすべきでないところはあえて弾かず、弾くべき箇所はギターの音を増やす
そうした状況判断を行うことでXIIXのアンサンブルを進化することに貢献している
どうせならDJも加えた6人編成でツアーを行って欲しい所存だが、そう考えるのは自分だけ?

ライブは去年10月のEX THEATER以来だからか、斎藤は「あけましておめでとうございます」ならぬ、「お久しぶりです」と自己紹介
半年近くもライブが空いたので、

「ライブしたいと溜まっていたものを解放する日」

なんて斎藤は宣言しているが、

斎藤「No More」のカバーをやるなんて聞いてない(笑)
須藤「リハでやらなかったもんね。隠されていた(笑)」
斎藤「これから「No More」やるのに(笑)」

とandropは「No More」をカバーすることをXIIXサイドは報告せず、綺麗にカモフラージュしていたとのこと
fhánaとのツーマンで、「青空のラプソディ」をカバーしたことも同様の行為がなされていたのだろうか(前田がサポートしているから、カバーはしやすかっただろうけど(笑))
それでも

斎藤「でもやりたい曲だからやります(笑)」

とセトリを変更することはなし(笑)
結果、1日に2回「No More」を聞くシチュエーションが生まれてしまったが、須藤のベースラインはうねりまくりだし、堀との相性も抜群
本家は一味違う

また「正者の行進」の前には斎藤と須藤の前にフロアタムが用意され、共にドラムソロが行われたが、「正者〜」の音圧は昨年の六本木以上
クジョウのブルージーなギターが斎藤のギターと噛み合っていたのも大きいけど、アンサンブルがスケールアップしてるのは明白

ならびに「まばたきの途中」は昨年のツアー同様、山本の鍵盤に合わせて斎藤がハンドマイクで歌う弾き語りのようなアレンジがなされているが、須藤達が合流したあともよりジャズっぽいアレンジが為されるように
もともとじっくり聞かせるタイプの曲ではあったが、半年の間に更に聞かせるような方向に傾倒したような感じである

そこからクジョウや須藤、山本など各々のソロ回しを披露させるセッションへ
クジョウに至っては去年のツアーで加入するまで聞いたことがないギタリストだった故、「ブルースの影響が強いんだなあ」とギターソロを見て分かったが、アニメの主題歌にもなった「アカシ」は以前よりもスケールが大きくなりながら

「もしこの世界が全部作られた偽物だとして
与えられた運命は絡まった勘違いだとして
それでも構わないありふれた毎日の中に
譲れない理由がある」

と共に胸を打つのはやはり、

「たった一つの小さな約束が
ほんの些細な思い出たちが
いつまで経ってもこの胸を焦がし続ける灯火になる」

の部分

どんなにアンサンブルが進化しても、心を最も奪われるのはこの部分
斎藤のたくましい歌声があるからここから得られるパワーは何倍にもなっている

そのうえで須藤がスラップベースを鳴らしまくる「あれ」
斎藤は一度はハンドマイクになりクジョウにギターを委ねていたが、サビはほぼ全員でコーラスするようになり、堀も手数を増やしまくる大きなアップデートが為されたが、クジョウが爆音でギターソロを鳴らすと、斎藤もギターを再び背負い須藤とクジョウの3人で轟音を鳴らしまくり
元はライブが出来ない頃に制作された曲だけど、まさかここまで化けるなんて想像もしなかった
これが「あれ」なんてタイトルではなんだか恐れ多い
「極」なんてタイトルでもいいくらいだ

更にエッジの聞いたギターロック「Answer5」はクジョウのギターも加わることで音圧が以前と比較にならないほど熱くなるが須藤が、

「ギター、(斎藤)宏介!!」

と告げて斎藤が前に出てギターソロを弾くとたちまち大歓声
ユニゾンでも斎藤のギターソロは大いに盛り上がるが、ユニゾンはよっぽどの事がないとMCはしない
だからこうして名前をコールされてソロを弾くのはXIIXくらい
こうやってギターソロの入り方の違いを見られるのはとても面白い

そしてあっという間の本編ラストは斎藤がSKY-HIのラップパートもこなす「スプレー」
斎藤がラップをこなすことで、歌詞も「日高さん」から「斎藤さん」に変わるが、

「Yo」

の部分は斎藤が直接告げるようになり、

「斎藤さん気をつけてあんた立場が
…ってまた巷の噂」

の部分は須藤が告げるようになるなど、ちょっとしたマイナーチェンジが施されるように
これは「予定調和なんて思わせない」という暗喩だろうか
新曲はないけれどもサポートを含め、XIIXのアンサンブルは更に進化していた

すぐにアンコールで戻ってくると、須藤は例のごとく(?)

「今日のために生きてきた」

と口にするが、斎藤は内澤が「魔法の鏡」の制作に携わってくれたことを初めての方にも分かるように説明し、内澤か予想通りステージへ
登場直後、「Hyper Vacation」のリズムを斎藤と須藤が鳴らし、それに合わせるように各方面へ挨拶してしまったので、

「何やらせるんですか(笑)」

とツッコミを入れていたが(笑)※内澤の方が年上

そのうえで多くの人が期待していた「魔法の鏡」のコラボは、斎藤がアコギを背負いAORのような感じに
去年のツアーでもLINE CUBE SHIBUYAで内澤は「魔法の鏡」のためだけに駆けつけ、コラボしたことを聞いてはいた
だかそのツアー、東京はEX THEATERもあったのでその公演のみ参加の方はコラボを目撃出来てない
貴重なコラボの再演を目の当たりに出来てとても良かった

その直後、

「目を合わせるだけで合図できるようになりましたね(笑)」

と斎藤は内澤を弄ったが、須藤が前田とTwitterでよくやり取りしていることを明かすと、内澤だけでなくまさかの前田もステージに

前田がレギュラーサポートで参加しているfhánaのレコーディングには須藤が大いに関わっている
その須藤がレコーディングで録音したベースラインをライブで前田が担っているのだが、ここでこの両者が揃ってステージに上がるとは…
しかも

前田「すってぃーは自分のお父さんのような存在」

と前田は須藤を相当リスペクトしている模様
こうして2人の関係性が明らかになったが、山本らXIIXのサポートもステージに現れると、須藤と前田のツインベースで「Boohoo」をコラボ
ワンマンでも今はそうやらないから待望だし、ツインベースの底力を1ヶ月で2回も体感するとは…
2度あることは3度あるというし、今月中に3回目が実現しそうでならない(むしろfhánaの佐藤純一に早く次のSound of Sceneをやっていただき、XIIXをゲストにツインベースを再実現させていただきたい)

前田も内澤もステージから去り、斎藤がサポートメンバーの3人を紹介したあと、

「もう言い残すことはないね?」

と斎藤が確認し、最後に演奏されたのは昨年のeleven backで新曲として演奏されていた「うらら」
六本木のように斎藤がやりたい放題になることは無かったが、斎藤が堀にシンバルを叩くように促し、即興で叩かせるなど自由な斎藤はこの日も垣間見えていた

ワンマンではないので曲数は当たり前だけど六本木より少ない
でもこれは六本木を超えた
更なるアンサンブルの進化は明白だったから
ユニゾンがアニバーサリーイヤーであるので、そちらに注目がいきがちだが、XIIXの進化からも目を離せない

5月からのツアーは、昨年夏に行われた東名阪ツアーの続編となる
あのツアーはコロナ感染直後だったから参加出来ずに涙をのんだ
今のXIIXがどのような姿を見せるのだろう
これからも魔法をかけて

セトリ
LIFE IS MUSIC!!!!!!
シトラス
ユースレス・シンフォニー
No More
正者の行進
まばたきの途中
アカシ
あれ
Answer 5
スプレー
(Encore)
魔法の鏡 w/ 内澤崇仁
Boohoo w/ 内澤崇仁、前田恭介
うらら



※前回見たXIIXのワンマンのレポ
※昨年見たEleven Backのレポ