元々斎藤が所属するUNISON SQUARE GARDENは年中ライブをしまくるバンド
加えてベースの須藤も米津玄師をはじめとする色んなアーティストのサポートをしているので、XⅡⅩは1本1本のライブがとても貴重なアーティストなのだが、そんなXⅡⅩがここに来て自主企画「Elven Back」を立ち上げた
記念すべき1回目のアーティストはネクストブレイクの候補として様々なメディアから取り上げられる機会が増えているKroi
「なんでLINE CUBE SHIBUYAでワンマンできるバンド同士がO-EASTでツーマンするんだよ」と指摘がきても、反論してカウンターパンチを喰らわせることは不可能であり、チケットは当然ソールドアウト
KEYTALKが武道館で2度目のワンマンを行う記念すべき日であるにも関わらず

・Kroi
けれども開演時間が近いにも関わらずO-EASTの入口付近はやや余裕があり、「これ本当にソールド?」と疑問符を抱いてしまう客入り
先日見たcinema staffとUNISON SQUARE GARDENのツーマンがあまりにも人を入れすぎたのかもしれないけど、後方が比較的余裕があるなかで開演時間を迎え、ステージに内田達が登場
内田(Vo. & Gt.)の容姿はthe telephonesの石毛を連想し、関(Ba.)はスキンヘッドのインパクトがでかすぎて任侠映画出演のオファーが来てもなんら不思議ではない

内田は最初ギターを背負わずハンドマイクでスタンバイし、前回見た時(よりにもよってsumikaが主宰する「TOOY」だった)は「telegraph」がリリースされた後にも関わらず、無視された「Drippin' Desert」から始まる「それ前回もやってくれませんかね!?」な始まり
Spitzのテツヤのように、浮いているように見える関はラウドバンドこそ適正があるように見えるも、今にも踊りたくなるようなヘースラインをなぞり、そこに千葉(Key.)がニューウェーブゆかりの鍵盤やファンク直伝のカッティングを長谷部(Gt.)が乗せるのがKroiの音楽
O-EAST名物のモニターも活用して、背景にはバンドのロゴを出しながらちょっとした映像演出を見せるなど「既にアリーナも見据えているのでは?」と思うほどの映像
O-EASTのような中規模の箱で見るのはこれが最初で最後のような気がしてしまうくらいに

内田がギターを背負った後の「Pixy」はダブやサイケの影響が見え隠れし、どんどん気持ちの良い体験をこちらへ
けれどもこうしたR&Bよりの曲で長谷部がギターロック経由のギターソロが突然鳴らしたり、益田が手数の多いビートを刻むのがKroi
思えば先日見たDragon Ashもヒップホップとロックを混ぜるアプローチでシーンに革命をもたらしたが、Kroiがやっていることは若き頃のDragon Ashがやっていたことそのもの
きっとこれは革命前夜

「Juden」では、内田がパーカッションを叩きながら意気揚々と歌う姿が初見に衝撃を与えた後に、

内田「Kroiちゃんでーす!!」

とやっぱり外見からは想像も出来ない挨拶をするが、どうやらこれ益田が曲順を間違えてしまったらしい(笑)
「これ本来の流れじゃないの!?」と驚いてしまうが、

「こうやってライブに呼ばれる機会が少しずつ増えてきて、1本1本のライブを大事に噛み締めています」

と当たり前ではないと捉える内田
去年辺りからビバラにロッキンオン系のフェスで見る機会は大きく増えた
それはKroiの音楽に触れて、「彼らの音楽を知って欲しい!!」と思ってくれる音楽関係者が増えたということだろう
でもKroiはそれを当たり前と思わずに、謙虚に考える
そうした姿勢はきっと実を結んでくれるだろう
フェスでメインステージに立っているミュージシャンもかつてはそうだったから 

曲順を変える宣言が成されたことで、本来やる予定だったと思われたのは恐らく「Funky SLINGER」だろう
内田は時折アンサンブルが強すぎるがゆえ、一音一音声がはっきり聞こえにくくなることもある
が、関がなぞるあまりに重心低すぎるベースラインに歌謡曲特有のこぶしが乗るのはありそうで無かったものだろう
今のシーンは良い意味で境目が少ない
どんどんジャンル間の融合がなされるようになったし、Vaundyのようにジャンルの壁を壊す素晴らしい象徴もいる
Kroiもそうしてシーンの常識を壊すアーティストになってくれるだろう
革命は想像力から生まれるもの

長谷部がかき鳴らす軽快なカッティングは元より、千葉の奏でる鍵盤を曲の中心部に組み込むことでR&Bやファンク、ニューウェーブを1つの音楽としてドッキングさせたような「Page」、内田の甘い歌声に惚れ惚れとする「Bummy Life」は奇妙な映像によって中毒性を持たせるが、恐らく定番曲であろう「Network」は

「化けの皮剥がす 」

とあまりに攻撃的なフレーズが序盤から飛び出す
挑発的なフレーズとも受け取られかねないが、音楽で生きていく上には上へと向かっていかければならない
そのためには正体を晒し上げることもいとわない
こんな革新的なダンスミュージックは簡単に生まれない
闇鍋のようにあり得ない組み合わせを煮込み、それをキャッチーに届ける錬金術のようなものを使っているのだから
恐らくこれはまだ序章
Official髭男dismが「Pretender」でシーンの歴史を塗り替えたように

イントロリフが鳴っただけで心がうずいてしまうような「HORN」で心をより自由に解き放つと、

「最後にこの曲をやってXⅡⅩに繋ぎます!!」

と「Fire Brain」を燃えるような映像演出と共に行い、こちらの脳味噌も燃やしていった
今日も「熱海」はやらなかった

セトリ
Drippin’ Desert
Pixie
Juden
Funky GUNSLINGER
Page
Balmy Life
Network
HORN
Fire Brain

・XIIX
そんな凄まじいライブでKroiがステージを熱く温めたあと、いよいよメインのXⅡXの出番
自分はUNISON SQUARE GARDENのライブを先週木曜から2本見ており、斎藤を1週間で3回も見る斎藤強化週間に

2020頃にゆっくり暗転すると1度カーテンで遮られたステージが再び幕を開き、須藤(Ba.)や斎藤(Vo. & Gt.)と共に3人のサポートも登場するが、そのサポートは昨年のツアーと同じく、

Key. ∶山本健太(ex.オトナモード)
Dr.∶堀正輝
DJ.∶HIRORON

の3人だと思われる
登場の際に流れたSEは途切れることなく、そのままアンサンブルも映像も不穏な「ZZZZZ」に
ユニゾンで出演した際は後方のモニターを使用することは一切無かったが、XIIXとなると話は別
偉人の名前を次々に登場させる斎藤のリリックも面白いが、アウトロでは斎藤がブルージーなギターソロを始め、堀も思い切りドラムを叩きまくる
そこにHIRORONもスクラッチを決めまくったりと音源とあまりに実態を異なるアレンジを決めるのがXIIXの特徴である

それは山本が子守唄のような心地よいメロを鍵盤で奏でる「E△7」もそうで、HIRORONは明らかに生で奏でられていない音を同期で流すことで曲をアップデート
須藤は事ある事にベースを高く掲げたりするが、斎藤の歌声はユニゾンよりも甘い
それはあまりにクレイジーな歌詞を生み出す田淵よりも表現が分かりやすい歌詞を斎藤が綴っているからだと思うが

しかし歌詞は分かりやすくとも、後輩SKY-HIにインスパイアされたかのように高速ラップを決めるのも斎藤の持ち味であり「Stay Mellow」で余裕綽々にラップを決めた瞬間、会場は大きな拍手が
原曲とはかけ離れるくらいスクラッチを違和感なく決めるHIRORONも凄い

そんな当の斎藤は、

「Kroi、かっこよすぎ」

とまるで一般人のような感想(笑)
XIIXの曲を聞いているとR&Bに傾倒した曲が多く、斎藤は普段からR&Bやヒップホップなどを好んで聞いていると思うけど、「その語彙力はどうなの?」と思ってしまう(笑)

「今回のライブのために曲をアレンジしなおしましたが、あの曲のタイトルなんだっけ…?」

と分かりやすいフリを行ったのは、「in the Rough」という自粛期間の間に制作された「あれ」
「in the Rough」で制作された曲はほとんど音源になってないし、恐らくフィジカル化もしないのだろう
ガーデンシアターで見た際には、「ハンドレッド•グラビティ」をやっていたし、きっと今後も不意打ちで演奏すると思われる

そんなファンキーな曲の後にポップな「No More」を行うのは、上手く緩急をつけている印象
須藤がグルーヴィなベースラインをなぞる中で斎藤と山本はキャッチーなメロを奏でて調和を取るが、

「息を吸って 立ち止まって」

の辺りで須藤が行進しながら斎藤の元に向かっていくのがとてもユニーク

こうした曲達にもHIRORONはスクラッチを加える
文章で書くと「どれだけ入れてるの?」と思うかもしれないが、主張しすぎないように工夫しているし、堀は堀で正確なビートを決めながら時にアクセントをつけようにシンバルを叩く
そこにあいみょんやFIVE NEW OLDなど様々なミュージシャンのライブに引っ張りだこな山本がいるので、「Regulus」も更に夜が明けていくように聞こえてくるが、

「Kroi、なんであんなにカッコいいの!?」

と斎藤のKroi称賛は止まらず巻き込まれる須藤(笑)
かくいう須藤もKroiの凄さは堪能したようだが、

「僕たちワンマン生まれワンマン育ちなんですが、そろそろ対バンもしてみたいと思って…。」

と斎藤が今回「Eleven Back」という自主企画を立ち上げた理由を説明
何故か唐突にジグザグ(勘違いじゃなければ-真天地開闢集団-ジグザグ)の名前も出てきたが、このタイトルの理由は「XIIX」を半分に割ると11に見えること、並びに大富豪のJバック(11を出したターンのみ強さが逆転するシステム、革命とは異なり一時的ではない)が元ネタになっているようで、

「強い弱いが逆転する、普段はかっこ悪いことが音楽だと強味になる」

と説明するのはとても分かりやすい
「音程外してもエモく聞こえる」という具体例も的を射ていたし
加えて、

「日常生活に何かあってもこのライブに来たら「よっこいしょ」と腰を上げるきっかけになれば」

と「後付」と前置きを置いたと思えないほど、とても中身のある説明をしていた
斎藤はこの企画を続けて行きたい様子なので、フジファブリックがほぼ毎年行っているフジフレンドパークやLEGO BIG MORLのThanks Giving!!のような長寿企画となるか

斎藤の甘い声を存分に堪能させると同時に、XIIXの方向性がどんどんブラックミュージックに傾倒していることを実感させる「まばたきの途中」は須藤が丁寧にベースラインを築き、堀のドラムも慎重
絶対に積み上げた積み木を倒してないくらいにセンシティブな曲に求められるのは鉄壁なグルーヴ
堀はmilletやEveのドラムも担当しているが、何よりこの2人は米津玄師のバックバンドでもある
となればグルーヴはとても噛み合うし、今後もXIIXはこのメンバーで固定していくのかもしれない

そんななか「フラッシュバック」はO-EAST名物のモニターをふんだんに活用し、

「見過ごしてしまったらもったいないお化け」

に合わせてお化けが登場するなど、ここだけでもYou Tubeに動画を載せることを懇願するほど演出がユニーク

「音楽ばっか聞いてないでちゃんと取らなきゃ緑黄色野菜」

なんてリリックはもうシュール極まりないけど、そこで挿入される堀のドラムソロや山本の鍵盤ソロはシュールな歌詞が舞い降りた後だからこそ華麗に
この演出の組み合わせが見たいからワンマンもこのO-EASTで見たくなる
チケットが即日ソールドしていたことを踏まえるとZeppクラスが適正かもしれないが(LINE CUBEワンマンはチケットの倍率が凄まじく、探し求める人が続出していた)

「スプレー」では斎藤がハンドマイクに持ち替え、CDJと同じくゆっくりとステージを旋回
須藤に「Yo」と言わせたあとは、「日高さん」を「斎藤さん」に変えてSKY-HIのパートをこの日も網羅するわけだが、HIRORONのスクラッチはCDJで見たときよりも増えていた気がした
全員があまりに多忙すぎて、なかなかライブを組めないのがXIIXだけど、経験値が豊富だから1回1回の練習でアップデートする量も相当大きいと思われる
スキマスイッチのようにライブ音源を毎回出して欲しいほど

ギターを背負い直した斎藤が直後に鳴らしたのは「アカシ」
背景には大都会の夜景が映るが、これは灯火を印象づけるための演出だろう

「たった一つの小さな約束が
ほんの些細な思い出たちが
いつまで経ってもこの胸を焦がし続ける灯火になる」

を強調するための
でもこの日は今まで聞いてきた「アカシ」と異なる部分が印象に残った
その箇所とは、

「もしこの世界が全部作られた偽物だとして
与えられた運命は絡まった勘違いだとして
それでも構わないありふれた毎日の中に
譲れない理由がある」

もしかたら自分のようにあの人のことを連想してしまった方もいるのではないだろうか

そして最後は音楽と人生を結びつけ、須藤が何度もベースを高く掲げるのが印象に残る「LIFE IS MUSIC!!!!!」
ちょっと意外な終わりにも見えたが、最後は力を出し切るようにセッションを開始

「止まれはしないな」

を演奏で現しているかのようだった

すぐにアンコールで戻ってくると、メンバーが豪華すぎてなかなかライブが出来ないが、

「次に会う約束がしたい」

と夏秋にワンマンツアー開催を発表
ユニゾンのツアー前半が4月から6月で後半は11月
8月から10月までの間にツアーをするのだろう
となれば田淵はTHE KEBABSで動くが、斎藤さん働きすぎである

がその直後、「何か言い残したことない?」と斎藤に促された須藤は、

「今年は本気で生きていきたい。勉強も遊びも」

と話した時、真っ先にsumikaの黒田が浮かんだ

須藤は近年、sumikaのライブでサポートベースを行う機会が多い
だからあの訃報は簡単に受け入れられてないはず
でも立ち止まってはならない
仲間の死と直面してしまったから、後悔したくない生き方を掲げたのだろう
それは斎藤も同意していた
この2人は黒田の死を受け入れたのだろう
止まっては駄目だ
前に進まないと

そんなXIIXから突然届けられた新曲は、

「愛はすぐそばに」
「春はすぐそばに」

と分かりやすい歌詞をファンクに載せた曲
できたてほやほやとのことだが、何かのアニメの主題歌に使用されてもおかしくはないだろう
「アカシ」も

そして最後はO-EASTを後にする参加者の背中を後押しするように、

「痛いくらいの情熱も
焦げのついた欲望も
かけがえのないもの全て
しがみついている自由も
古くなってく衝動も
かけがえのないもの全て」
「尽きることない情熱も
眩しすぎる欲望も
いつもそばにある自由も
かけがえのないもの全て
最高だ」

と全肯定する「ユースレス•シンフォニー」

やっぱりXIIX、並びにゲストアーティストのKroiも最高と思える2時間弱だった

セトリ
ZZZZZ
E△7
Stay Mellow
あれ
No More
Regulus
まばたきの途中
フラッシュバック
スプレー
アカシ
LIFE IS MUSIC!!!!!!
(encore)
新曲
ユースレス•シンフォニー




※前回見たXIIXのライブのレポ↓


※前回見たXIIXのワンマンのレポ↓
 


※前回Kroiを見た際のレポ↓