UNISON SQUARE GARDENのボーカル斎藤が米津玄師やsumikaのサポートベースで知られる須藤優と共に活動しているXIIX
ブラックミュージックやヒップホップが強く斎藤のルーツが色濃く出た音楽性がXIIXの特徴であり、ユニゾンとは真逆の方向性に進んでいたが、「White White」リリース時に

「3枚かけて自己紹介する必要がある」

と話していた3枚目のアルバムに該当する「XIIX」は、これまでと正反対にロックが強いアルバムに
バンドを再紹介する傑作セルフタイトルアルバムとなった

そのレコ発ツアーは2回行われており、前半は2人編成と5人編成の2つの顔を見せるツアー、後半はフルセットで行われるツアーで今回参加するのは後半戦のファイナル
本来ならリリース直後の東名阪ツアーに参加予定だったが、公演直前にコロナを移され、8月の東京公演は断念
2ヶ月の時を経て、リベンジの機会が訪れた

会場となるEX THEATER ROPPONGIはUNISON SQUARE GARDENの企画で今年も訪れたが、あの時はユニゾン主催のライブでは珍しくスペースにあったが、今回は対面方式での当日券は無く、実質ソールドアウト
なのでスペースに余裕はそこまで無く、後ろの方までぎっしり
こんなにパンパンなEX THEATERは久々に見た気がする

ほぼ定刻にゆっくり暗転し、事前に用意されていたスクリーンにオープニング映像が流れると共に、サポートを含めた5人で登場するが、東名阪ツアー以降はサポートが変わった模様
ドラムが堀からこのEX THEATERでフジファブリックのサポートを行っていた岡本啓介(from 黒猫チェルシー)に変わり、DJの変わりにギターとしてクメジュンヤが参加
鍵盤は変わらず山本健太が参加し、以前のDJも交えた編成と大きく刷新し、ロックバンドらしい編成に

このようにギターが2人になった事で、山本の鍵盤や照明が会場をカラフルに彩る「シリアル」で斎藤はアコギを担当
ユニゾンでアコギを使うことはあまり無いし、ロックに拘るユニゾンだからこんなエレクトロチックな曲もない(あるとしても「Mr.アンディ」の別ver.)
ましてや斎藤が他のギタリストと共に演奏するのがレア(東京スカパラダイスオーケストラのゲストボーカルとして参加する際は、ピンマイク。他のギタリストと共演したのはフジフレンドパークに出演した際や、ロッキンで斎藤の後輩SKY-HIこと日高のライブにゲスト出演した時)
ユニゾンでは出来ない事が、この「シリアル」で発揮されている

ただサウンドスケープが一新されたかというと、そこまで変化は無く、

「XIIXです。」

とアコギからエレキに持ち替えた斎藤が告げた後の「E△7」は、これまでとほぼ同じ
それはこれまでDJが同期で流していたものを山本が流しているからか(山本の機材に同期を流すものと思われるPCがあった)、あるいはクメがギターで補っているからか

正直なところ、自分はDJがいる編成の方が好きだった
随所に入れるスクラッチで、生でしか聞けないアレンジが成立していたから

しかしこの編成が「イマイチか?」と問われたら、そんな事はなく色んなアーティストのサポートで入る際もベースを高く上げることが多い須藤が上手下手に動き、コーラスに間に合わせるようにステージを駆ける「ユースレス・シンフォニー」で「今日のライブも最高だな」と確信するし、斎藤と須藤は1つのお立ち台に背中合わせで演奏
序盤から大成功を革新させる一幕だらけ

またバンド随一のロックナンバー「Vivid Noise」もクメが参加することで、音圧はとても太くなるが、XIIXの根底にあったブラックミュージック要素は決して廃れてない
継承かつ、進化を遂げているということだが、メンバー紹介も兼ねたソロ回しで岡本のドラミングは、去年フジのサポートで見たときよりも遥かに向上
XIIXのサポートで呼ばれるも納得である

斎藤も須藤もそれぞれ多忙すぎるが故、今回のツアーはわずか8ながら史上最多

斎藤「酒を交わしてゆくに、完成度も高く…」

とはグルーヴが高まっていったということだと思うが、斎藤に話を振られた須藤は、

「今日のために生きてきた…!!(笑)」

と返すも、斎藤は「それ毎回聞いてきた(笑)」とそっけない
でもライブ出来るだけでも幸せである
この日、大物ミュージシャンの訃報を聞いているだけに

なので山本が奏でるノスタルジックな音色を中心に、少年時代を想起させる「おもちゃの街」も、斎藤とクメがギターで幕間を繋いでから哀愁漂う「Fantome」も、斎藤も須藤も生きて目の前でライブしてくれる事を感謝しながら聞くことに
須藤はサポートしているあるバンドのギターが今年亡くなっているだけに、尚更生きていることが当たり前じゃないと実感しているだろう

このように聞かせるタイプの曲が続くと、自然にメロウな流れとなり最新アルバム「XIIX」からも「次の朝へ」、「タイニーダンサー」と似たテイストの曲が続くが、ここでポイントとなったのは、岡本のドラム
窓をイメージするような模様がステージ後方に照らされた「次の朝へ」で、岡本はドラムを最小限にまで絞って斎藤の歌声により焦点を置かせ、視界が開かれ聖歌まで挿入される「タイニーダンサー」では前半と後半でビートの大きさを変えた印象だ

フジファブリックのサポートで見た際、自分は岡本のドラムを「ガレージロックの影響が大きく出たドラム」と感じた
それから1年、色んなアーティストのドラムを担当したのだろう
岡本の引き出しは、明らかに広がった
これなら岡本の帰るべき場所である黒猫チェルシーが復活した時、黒猫チェルシーは凄い音楽を成し遂げる予感がする(だからフジファブリックもXIIXも黒猫チェルシーが復活したら、ツーマンライブで招集するべき)

ちなみに「次の朝へ」の元ネタは個人的に「甘々と稲妻」と思っている
原作最後のシーンを思わせるような歌詞だから
またAimerも似たような同名曲があるが、全く演奏されてなかったりする

今回のXIIXはアルバムもツアータイトルも、セルフタイトル
自らのタイトルをつける、あまりに大胆の行動に出たが、前述の通り斎藤は自己紹介までに、3枚のアルバムを要することを話していた
ここまでの2枚はホップステップジャンプのステップ
3枚目となる「XIIX」でジャンプとなり、ようやく自分たちを確立出来たのだ

「(「XIIX」は)生みの苦しみを味わって作ったアルバム。セトリもXIIXとは何かを考えながら作りました。ここからは更に深く」

と斎藤が振り返り、andropの内澤崇仁も制作に携わった「魔法の鏡」から、より深淵へ

「カガミヨカガミ 魔法をかけて」

なんてメルヘンチックな歌詞に、童話をイメージさせる世界観は山本の鍵盤が非常によく似合うが、その根底にあるのはヒップホップ
トリップポップ程ではないけど、ヒップホップを参考にしたような構成で、こんなファンタジックな世界を産み落とす
油断されたら魂を吸取られそうだ
誇張表現ではない、本意

このように光があるのならば当然影もあり、対照的な位置にあると考えている「月と蝶」は須藤のゴリッゴリなベースがうねりまくり
後方のスクリーンには蝶も映し出されるが、

「足りない足りない足りない足りない」

と齋藤が歌うのはあまりに強烈
アルバムと同じ順番で演奏されているが、ギャップがとても激しくこちらはダークなロックだ
幻想的な雰囲気など、そこにはない

そうして2曲で光と影を見させられる、濃厚な体験を我々はしてしまった訳だが、そこに割って入る「アカシ」で会場は再び虹色で彩られる
スクリーンには喧騒とする都会の景色が映されながらも、透明な光が目の前を照らしていくかのように
しかも今回はツインギター
何度も聞いてきた「アカシ」のスケールはこれまで以上だった

そんな壮大なアンサンブルと正反対に「4:43AM」は須藤のベースのみ
「White White」にはこの対極に当たる「5:03 PM」が収録されていたが、スクリーンに景色も映るとはいえ、ベースのみで様々な情景を想像させる音が作れるのは、「ベースってこんなことも出来るんだよ」と教授されているかのよう(なお須藤はfhánaのtowanaのソロデビュー楽曲「ベール」の編曲にも関わっている)

そのまま行われる「曙空を見つけて」は、須藤のベースに齋藤のボーカルが乗るアコースティックのような形式
サポートの3人はステージでじっくりその景色を見つめていたが、実際に夜が明けていく光景もスクリーンで再現
オールナイトイベントの最後にこれを流すと、案外染みるかもしれない

そんな中、音源で橋本愛がゲスト参加した「まばたきの途中」は鍵盤を中心にしたアレンジへ変更
ジャズバーで聞いているような雰囲気を醸し出して、鍵盤以外の音は最小限にされており、斎藤の美声が引き立つようなアレンジに
斎藤といえばギターも歌も上手い、言うことなしのボーカリスト
でもユニゾンで斎藤がギターを弾かない可能性はほぼ無い
歌に専念できるXIIXからこそ、これだけの美声を発揮できているような気がする
最後に青く輝いて回ったミラーボールも奥ゆかしい

同じく「生者の行進」も斎藤と須藤が向かい合いながらタムを叩くアレンジがなされ、時にはソロも挟まれるが、ライブハウスでは収まるには勿体ないスケール(スタジアムロック感がある)
ホールやアリーナのように、広大な場所で鳴らされたら威力を発揮するし、フェスなら絶大なインパクトを見せるだろう
先立って行われたLINE CUBE公演では、機材が損傷するトラブルがあったようで、この日はそうならずにホッとした

そうしてアレンジされまくっている曲が続く中、「No More」で大胆なアレンジは無く至ってシンプル
情報量が徐々に増えてきたので、心がやすげられる時間となっていたが、斎藤がハンドマイクに持ち替え3月にKroiとツーマンした際に新曲として演奏されていた「うらら」になると、

「だ だだだだ だだだだ だだってyeah
だ だ だだだだ だだって うらら」

という中毒性抜群なコーラスを斎藤は歌いつつ、途中から山本の鍵盤を勝手に弾いたり、岡本のドラムを叩いたりと、Spitzの田村明浩のように自由奔放
ほぼ、斎藤やりたい放題のモードになり、ミラーボールが回ったと思いきや、なんとライブハウスなのに銀テープまで飛び出すまさかの事態
こんなやりたい放題の斎藤の動きには、ニヤついてしまうし、なんなら今後も絶対セトリに入る曲になるだろう
吹っ切れすぎているし(笑)

しかしそんな飛び道具ぶりが嘘のように、最後は須藤がスラップを入れまくって、「これで終わるの!?」な気分にさせる「あれ」
途中まで斎藤はハンドマイクで、須藤に絡んだりもしていたが、須藤がクメと前で轟音を鳴らしまくったあと、再び斎藤もギターを背負って更に轟音
煮詰まったものを全部放出するかのようにして、本編は終了

アンコールで戻ってくると、「ある意味ここが定位置だよな」な「フラッシュバック」でここまでのライブを回想させたながら、

「音楽ばっか聞いてないで
ちゃんと取らなきゃ緑黄色野菜」

のシュールすぎるフレーズを歌うと、斎藤の合図によって◯・◯・◯の順で手拍子、休む、手拍子をさせるやや難易度の高いゲームを行うが、途中斎藤から役割を委ねられた須藤は◯・◯・◯・◯と休みの部分を増えす天然を発揮し、斎藤に指名された人が演奏する場面でも

「すってい以外(笑)」

と須藤は置いてけぼりに(笑)
これにリベンジするように、須藤は斎藤に弾かせまくっていたが(笑)

そのうえで来年2024年といえば、UNISON SQUARE GARDEN結成20周年
ユニゾンが多忙になることが予想されるため、来年のツアーは今のところ未定だが、

「今朝、すっていから新曲が2曲送られてきた(笑)」

と早くも新曲が出来ているとのこと
2年前、ガーデンシアターでワンマンを見た際にも同じことを話していた気がするが、これはなるべく早いうちに新曲が届きそう
もしくはユニゾンが来年アルバムを出す可能性が低いので、短いスパンでアルバムがリリースされるかもしれない

その一方で

「1階から1番上まで万遍なく盛り上がっていた。それは曲をちゃんと作ってきたご褒美」

と斎藤は口にした

それは何処だろうと、発せられる熱は同じで、会場にいた人々の心を鷲掴み出来たということ
XIIXは更に良くなっているということだ

ツアーは無いが、その間に曲を作りまくることを約束し、チルサウンドのもと「All Light」で参加者全てを肯定すると、最後はSKY-HIのラップパートを斎藤が網羅するのが見慣れた「スプレー」
一部パートはすっていが行うという変更点もあったが、最後まで満遍なく盛り上げ、締めの挨拶はメンバー全員で
斎藤と須藤達がステージから去ると、後方のスクリーンには突如として、次回ライブが来年3月、ツーマンライブ「eleven back」として開催されることが明らかになった

これからもこのようなロック編成で行くのか、または3月までのDJありきの編成に戻すのか
はたまた、この2つを融合させる編成で行くのか
未来はまだまだ分からない

けれども中盤以降のアレンジは圧巻だった
曲のイメージを刷新して斎藤の歌を立てるアレンジにしたり、斎藤と須藤がタムを叩いたり、斎藤がハチャメチャに動いたり…
こんなアクティブな斎藤を見れるのはXIIXくらいだと思う

自己紹介は「XIIX」で終え、ここからXIIXはさらなる進化を遂げる
ロックに傾倒するか
ヒップホップ色も再び絡めるか
予想はつかないがこの日のライブは最高
XIIXの未来もきっと最高だ


セトリ
シトラス
E△7
ユースレス・シンフォニー
Vivid Noise
おもちゃの街
Fantome
次の朝へ
タイニーダンサー
魔法の鏡
月と蝶
アカシ
4:43AM
曙空をみつけて
まばたきの途中
生者の行進
No More
うらら
あれ
(Encore)
フラッシュバック
All Light
スプレー





※前回見たXIIXのライブレポ