普通人の映画体験―虚心な出会い -23ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年11月5日(月)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、14:15~鑑賞。

「スマホを落としただけなのに」

作品データ :
製作年 2018年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 116分


現代人の必需品となったスマートフォンにまつわる恐怖を描くミステリー。恋人がタクシーにスマホを忘れてきてしまったのを機に、個人情報の流出など、度重なるトラブルに巻き込まれていくヒロインを北川景子が演じる。共演は田中圭、千葉雄大、バカリズム、成田凌、要潤。『リング』シリーズなどホラー映画を得意とする中田秀夫監督が、身近に潜む恐怖をスリリングに映し出す。

ストーリー :
いつものように彼氏の富田(田中圭)に電話をかけた麻美(北川景子)は、スマホから全く聞き覚えのない男の声に言葉を失うが、声の主はたまたま落ちていた冨田のスマホを拾った人物だった。無事に富田のスマホを取り戻し、ほっと安堵する麻美。しかし、その日を境に彼女の身に奇妙な出来事が立て続けに起こる。身に覚えのないクレジットカードの請求や、SNSで繋がっているだけの男からのネットストーキング。落としたスマホから個人情報が流出したのか?ネットセキュリティ会社に勤める浦野(成田凌)に、スマホの安全対策を設定してもらい安心していた麻美だったが、その晩、何者かにアカウントを乗っ取られ、誰にも見られたくなかった写真がSNSにアップされてしまう。時を同じくして、人里離れた山の中で次々と若い女性の遺体が発見され、連続殺人事件として捜査が始まる。身元不明の遺体は、どれも長い黒髪を切り取られていた。スマホを拾ったのは、誰だったのか。連続殺人事件の真犯人は、いったい誰なのか。そして、明らかになる“奪われた麻美の秘密”とは?

▼予告編

2018年11月4日(日)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、15:50~鑑賞。

「ヴェノム」

作品データ :
原題 VENOM
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
上映時間 112分


マーベル・コミックスでスパイダーマンの宿敵として人気を博すヴィラン(悪役)の“ヴェノム”を主人公に描く痛快アンチ・ヒーロー・アクション。液体型地球外生命体「シンビオート」に寄生され、驚異的かつ超人的な力を持つ生命体・ヴェノムと化した男が、その残忍性に振り回されながらも、次第に寄生生命体との複雑な共生関係を築き、人類の危機に立ち向かっていく姿を、ユーモアを織り交ぜつつ迫力のアクション満載に描き出す。主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『レヴェナント:蘇えりし者』のトム・ハーディ、共演に『マリリン 7日間の恋』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のミシェル・ウィリアムズ。監督は『ゾンビランド』『L.A. ギャング ストーリー』のルーベン・フライシャー。

ストーリー :
敏腕ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)は、危険な人体実験で死者をだしているという<ライフ財団>の真相を追う中、ある“最悪な”ものを発見し、接触してしまう。それは<シンビオート>と呼ばれる地球外生命体だった。この意思を持った生命体にエディの体は寄生されてしまい、その声が頭の中で聞こえるようになり、凶暴性や空腹感が日に日に強くなっていく。「一つになれば、“俺たち”は何だってできる」とシンビオートはエディの体を蝕み、一体化し、ヴェノムとして名乗りを上げる。ヴェノムはそのグロテスクな体で容赦なく人を襲い、そして喰らう。相手を恐怖に陥れ、目玉、肺、そしてすい臓…体のどの部位も喰い尽くす。エディは自分自身をコントロールできなくなる危機感を覚える一方、少しずつその力に魅了されていく…。

▼予告編





▼ Best Scenes - All Fight Scenes & Funny Scenes :

2018年11月1日(木)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、13:55~鑑賞。
「毎日がアルツハイマー2」「関口監督、イギリスへ行く編」

作品データ :
製作年 2014年
製作国 日本
配給 シグロ
上映時間 51分


認知症の母親とのユーモラスな日々を描いたドキュメンタリー『毎日がアルツハイマー』(本ブログ〈November 09, 2018〉)の続編。さらに病気が進んだ母親の介護を続けるなか、関口祐加監督が「パーソン・センタード・ケア」という認知症ケアを学びにイギリスへと渡る姿に迫る。

ストーリー :
母・ひろこさんにアルツハイマー型認知症の症状が現われ始めた2009年、娘である関口祐加監督は、29年間住んでいたオーストラリアを離れ、「母と一緒に暮らそう」と決意。翌年1月、日本の実家に戻ってきた。そんな娘を待っていたのは、頑なに家から出ようとせず“閉じこもり”になってしまった母。数日前に誕生日を祝ってもらったことを忘れてしまったり、あっという間にすごい量のトイレットペーパーがなくなったり、さらには預金通帳をなくしてしまったり…。しかし、認知症発症後、以前とは見違えるように喜怒哀楽を表に表わし、あけっぴろげで、あけすけな性格へと豹変した母はとっても愛らしくて、チャーミング。自分のやりたいことをやり、言いたいことを言い、本能のまま生きる母と家族の日々の暮らしを赤裸々に描いた、前作『毎日がアルツハイマー』の公開からまもなく2年。「毎アル」な母・ひろこさんの閉じこもり生活に少しずつ変化が現われる。デイ・サービスに通えるようになり、あんなに嫌がっていた洗髪をし、娘の関口監督と一緒に外出もする。その姿は、なんとも幸せそうで“いい感じ”である。しかし、調子が悪い日は、感情の起伏が激しく、突然怒りがこみ上げたり、相変わらず一日中ベッドの上ということも。そんな母との生活の中で、「パーソン・センタード・ケア(P.C.C.=認知症の本人を尊重するケア)」という言葉に出会った関口監督は、認知症介護最先端のイギリスへと向かい、北部ノーリッチにある認知症ケア・アカデミーを訪問。認知症の人を中心に考え、その人柄、人生、心理状態を探り、一人ひとりに適切なケアを導き出すP.C.C.の実態に迫っていく…。

アップ 「パーソン・センタード・ケア(Person‐Centered Care)」とは、イギリスの心理学者トム・キットウッド(Tom Kitwood、1937~98)が提唱した認知症介護の理念。従来の医学モデルで行なわれてきた介護施設や介護者中心の一方的な介護を再検討し、認知症患者の個性や人生、尊厳などとしっかり向き合うことで、「その人を中心とした最善のケア」を目指す。イギリスではNSF(National Service Framework for elder people 2001:高齢者サービスを行なう際の国家基準 2001年版)に取り入れられていて、日本の介護現場でも導入されつつある。
トム・キットウッドによれば、認知症とは脳の障害だけでなく、次の五つの要素が絡みあって起きている状態である。①脳の認知障害(アルツハイマー病、脳血管障害など)、②健康状態(既往歴、現在の体調、視力・聴力など)、③生活史(成育歴、職歴、趣味など)、④性格(性格傾向・対処スタイルなど)、⑤社会心理学(周囲の人間関係のパターン)。
パーソン・センタード・ケアでは、認知症ケアの目的は清潔や安全であることだけでなく、たとえ 「認知症」という病名が同じであっても、一人ひとり認知機能や健康の状態、性格、人生歴、周囲の人間関係などが異なり、その人の個別性を踏まえ、その人らしさを尊重することが必要であると唱えており、「パーソンフッド(personhood)」(一人の人間として、周囲に受け入れられ、尊重されること)を高めることを核としている。

▼予告編

2018年11月1日(木)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、12:10~鑑賞。
「毎日がアルツハイマー」

作品データ :
製作年 2012年
製作国 日本
配給 シグロ
上映時間 93分


自身のダイエット過程を公開した異色のセルフドキュメンタリー『THE ダイエット!』の関口祐加監督が、アルツハイマー型認知症の母親の介護の日々を2年半にわたって記録したドキュメンタリー。YouTubeで配信して大きな反響を呼んだ動画を、劇場公開用に再編集。発症前よりも感情を露わにするようになったという母親の様子をユーモアを交えながら捉え、母を取り巻く家族の様子を軽やかに描き出す。

ストーリー :
21世紀の日本は、人口の22%が65歳以上という超高齢社会に突入。介護の問題はもはや他人事ではない。そして、介護の中でも依然、垣根が高く、あまりオープンにされないのが認知症の介護。認知症の患者数は年々増え続け、このままいけば2030年には330万人を突破するだろうと言われている。関口監督の母・ひろこさんは2009年以来、認知症が進行する中、記憶力の低下が著しくなり、2012年5月現在、判断力、理解力も徐々に失われつつある。だが、認知症発症後、以前とは見違えるように喜怒哀楽がハッキリとし、明るく、あけすけな性格へと豹変。彼女は嬉しい時も、怒る時も、悲しい時、そして楽しい時も真剣で、本気である。彼女の脳には感情がしっかりと残り、今までよりずっと感性が鋭くなった。そんなひろこさんのアルツハイマーの世界を通して、家族のあり方、さらには、人間の尊厳とは何かを問いかける―。

▼予告編

2018年10月31日(水)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、11:25~鑑賞。

「あん」

作品データ :
製作年 2015年
製作国 日本/フランス/ドイツ
配給 エレファントハウス
上映時間 113分


『萌の朱雀』『殯(もがり)の森』の河瀬直美監督が、作家やパフォーマーとして活躍するドリアン助川が人はなぜ生きるのかという根源的な問いに迫った同名小説(ポプラ社、2013年)を映画化。小さなどら焼き屋で“餡子”作りを任された元ハンセン病患者の女性の姿を、四季の情景を織り交ぜながら描く人間ドラマ。偏見にさらされ続けても精一杯生きようとする老女「徳江」を樹木希林が、どら焼き屋の雇われ店長「千太郎」を永瀬正敏が、どら焼き屋の常連の女子中学生「ワカナ」を内田伽羅が、「徳江」の長年の友人「佳子」を市原悦子が、それぞれ演じる。

ストーリー :
季節は春。桜の咲き乱れる公園に面したどら焼き屋「どら春」で、辛い過去を背負う千太郎(永瀬正敏)は雇われ店長を続け、日々どら焼きを焼いていた。ある日、この店の求人募集の貼り紙を見て、徳江(樹木希林)という手の不自由な老女が現われ、働かせてほしいと千太郎に懇願する。彼女をいい加減にあしらい帰らせた千太郎だったが、手渡された手作りの“餡(あん)”を舐めて彼はその味の佳さに驚く。徳江は50年“餡”を愛情をこめて煮込み続けた女だった。店の常連で高校受験を控える中学生ワカナ(内田伽羅)の薦めもあり、千太郎は徳江を雇うことにした。徳江の“餡”を使ったどら焼きのうまさは評判になり、やがて大勢の客が店に詰めかけるようになる。だが、店のオーナー(浅田美代子)は徳江がかつてハンセン病を患っていたとの噂を聞きつけ、千太郎に解雇しろと詰め寄る。そして、その心ない噂が広まったためか客足はピタリと途絶え、それを察した徳江は店を辞めた。素材を愛した尊敬すべき料理人である徳江を守ることができなかった自分に憤り、酒に溺れる千太郎。徳江と心を通わせていたワカナは彼を誘い、ハンセン病患者を隔離する施設に向かう。そこにいた徳江は、淡々と自分も自由~働くという「自由」、やりたいことができる「自由」~に生きたかった、との思いを語るのだった…。

▼予告編



▼樹木希林・永瀬正敏・河瀨直美監督インタビュー :



[※追記(2019/05/10):2019年5月8日(水)、本作を目黒シネマで、17:10~再見]
2018年10月31日(金)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、9:30~鑑賞。

「プーと大人になった僕」

作品データ :
原題 CHRISTOPHER ROBIN
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 104分


イギリスの作家A・A・ミルン(Alan Alexander Milne、1882~1956)による名作児童文学をもとにしたディズニーの人気キャラクター「くまのプーさん」(Pooh Bear)を、初めて実写映画化。大人になったクリストファー・ロビンがかつての親友プーと奇跡的な再会を果たし、“本当に大切なモノ”を取り戻していく姿を描くファンタジー・ドラマ。プーだけでなく、ピグレットやティガー、イーヨーなど、おなじみのキャラクターたちが登場する。『スター・ウォーズ』シリーズのオビ=ワン・ケノービ役などで知られるユアン・マクレガーが大人になったクリストファー・ロビンを演じ、『チョコレート』『007 慰めの報酬』のマーク・フォースター監督がメガホンをとった。

クリップ クリストファー・ロビンとプーの両キャラクターが初めてこの世に出たのは、1924年に発表された“When We Were Very Young”(小田島雄志・小田島若子訳『クリストファー・ロビンのうた』晶文社、1978年)という題名のアラン・アレクサンダー・ミルン(Alan Alexander Milne) の詩集であった。その後、A.A.ミルンが息子のクリストファー・ロビン・ミルン(Christopher Robin Milne、1920~96)のために書いた短編集“Winnie-the-Pooh”(石井桃子訳『熊のプーさん』岩波書店、1940年)が1926年に出版され、今もなお、史上最も人気の高い児童書のひとつとされている。
クリップ 物語に登場するキャラクターは、息子のクリストファー・ロビンが持っていたぬいぐるみがモデルになっており、プー(Pooh、クマのぬいぐるみ)と仲間のピグレット(Piglet、コブタのぬいぐるみ)、ティガー(Tigger、トラのぬいぐるみ)、イーヨー(Eeyore、ロバのぬいぐるみ)、カンガ(Kanga、カンガルーのぬいぐるみ)が、現在ニューヨーク公立図書館に展示されている。挿絵は画家のE.H.シェパードが描き、プーの挿絵はE.H.シェパードの子供が持っていたテディベアがモデルになっている。またA.A.ミルンの数々の本に使われたE.H.シェパードによるオリジナルの水彩画は、ニューヨーク公立図書館に所蔵されている。
クリップ A.A.ミルンの別荘があった、イギリスのハートフィールドにある「アッシュダウン・フォレスト」がモデルの“100エーカーの森”を舞台にした、少年クリストファー・ロビンとプーの物語は、世界中の人々を魅了した。
ウォルト・ディズニー(Walt Disney、1901~66)は娘が夢中になっているこの物語の映画化を考え、1966年に短編映画『プーさんとはちみつ』(Winnie the Pooh and the Honey Tree)を発表。そして、1968年に発表した短編第2作『プーさんと大あらし』(Winnie the Pooh and the Blustery Day)が、米アカデミー賞短編賞を受賞した。短編第3作『プーさんと虎』(Winnie the Pooh and Tigger Too、 1974年発表)の後、初めての長編アニメーション映画となった『くまのプーさん 完全保存版』(The Many Adventures of Winnie the Pooh)が1977年に発表された。
ウォルト・ディズニーは「くまのプーさん」のアニメーション作品を製作することになった際、「プーさんは人気者になる、(この作品は)必ず歴史に残る名作になるよ」と強く思い入れのある言葉を残している。ウォルトのこの言葉通り、プーさんは、短編・長編映画やテレビシリーズなど多数のアニメーション作品が作られ、またぬいぐるみなど様々な姿となって、現在も世界中で愛され続けている。

ストーリー :
少年クリストファー・ロビン(オートン・オブライエン)は、“100エーカーの森”でプーやその仲間たちと楽しい毎日を送っていたが、やがてロンドンの寄宿学校へ転校することに。「100歳になっても、きみのことは絶対に忘れない」と約束を交わしてプーと別れたクリストファー。月日が流れ、40代の大人になった彼(ユアン・マクレガー)は、妻のイヴリン(ヘイリー・アトウェル)と娘のマデリン(ブロンテ・カーマイケル)と共にロンドンで暮らしていた。しかし、旅行カバン会社のウィンズロウ社で多忙な毎日を送り、家族とはすれ違いの日々が続いていた。そんな折、なぜか彼の前にかつての親友プーが現われる。プーに「森の仲間たちが見つからない、一緒に探してほしいんだ」と頼まれたクリストファーは、子供の頃プーたちと過ごした“100エーカーの森”へ。何一つ変わらないプーやピグレット、ティガー、イーヨー、カンガとルーの親子。プーたち旧友との再会に喜びと懐かしい日々を感じながらも、仕事に戻らなければならないことを思い出す。「仕事って、ぼくの赤い風船より大事なの?」と、悲しむプーたち。急いでロンドンに戻ったクリストファーは、森に会議の重要な書類を忘れてしまう…。一方、クリストファーの忘れものに気づいたプーと仲間たちは、マデリンの助けを借り、親友クリストファーのため、“100エーカーの森”を飛び出し、ロンドンへと向かう。クリストファーが忘れてしまっていた、本当に「大切なモノ」~“人生の真実”~を届けるために─。

▼予告編



▼本作で大人になったクリストファー・ロビンを演じたユアン・マクレガー (Ewan McGregor、1971~)が初来日! :
(本作ジャパンプレミアが2018年9月5日、品川プリンスホテル・ステラボールで開催され、初来日となったユアン・マクレガー、日本語吹替声優を務めた堺雅人が登場し舞台挨拶を行なった。)



◆ユアン・マクレガー 単独インタビュー(シネマトゥデイ-2018年9月13日) :
Q:ユアンさんの来日をファンの皆さんも喜んでいると思います。
僕の方こそ光栄に思っているよ。この25年くらいの間に、3~4回ほど来日をオファーされたことがあったけど、いつも新作の撮影があったりして、来ることができなかったんだ。

Q:来日が決まったとき、「個人的な理由で来日ができないのかと思われていたけど、個人的な理由じゃないよ」とおっしゃっていましたね。
みんなにそう思われてしまうくらい、日本に来られなかったのを恥じているんだ(笑)。全くもって個人的な理由があったわけじゃないんだよ。もともと僕は旅をすることが大好きだし、今回の来日も、本当に楽しみにしていたんだ。それと、日本のみんながフレンドリーに歓迎してくれたおかげで、心から温かな気持ちになれたことも言っておきたい。また日本に戻ってきたいという思いが増したよ。

Q:日本で『トレインスポッティング』が公開された当時、ブームは耳に入っていましたか?
そんなに人気があったことは初耳かな。こうして知ることができてうれしいよ。僕自身、あの作品で演じたレントンが大好きだからね。続編の『T2 トレインスポッティング』(以下、『T2』)は観てくれた?

Q:もちろんです。主人公の成長した姿を描くという意味では、『プーと大人になった僕』(以下、『プー』)と『T2』には共通点がある気がします。
僕もそう思うよ。『T2』は、ダニー(・ボイル監督)が、男という生き物について、彼らが年齢を重ねる感覚を詳細に描いた点で秀逸だった。そして『プー』も、現実世界でジレンマに陥った大人の男を描いている。そういった面で、2つの作品には共通点があるね。もちろん『プー』には、『T2』みたいな汚い言葉遣いは出てこないけど(笑)。

Q:ユアンさん自身、常に一線で活躍されていますが、多忙な日々を過ごすロビンに共感する部分はありましたか?
そうかもしれない。まず何よりも、脚本が本当に素晴らしかったんだ。読み終わってすぐに、この役に挑戦したいと思った。そうやって即決することはあまりないんだけど、多分、普段の生活で感じていることと、この映画がどこかでつながったからじゃないかな。

Q:大人になって忘れかけていた「大切なモノ」を思い出させてくれる本作は、“何もしない”ことが大事なテーマのひとつです。ユアンさんも、日常でそんな時間を大事にされていますか?
今年は全くと言えるほど仕事をしていないんだ。まさに“何もしない”ことの喜びを発見できたよ。

Q:それだけ、この映画の撮影が充実していたということではないでしょうか。
この映画に出演したからというほど、シンプルな理由じゃないんだ。いろいろなことが重なった結果かな。“何もしない”ことをするって、「何もしていないな」と感じているときよりもずっと忙しいものなんだよ。何かしら、やらなければいけないことが出てくるからね(笑)。一般的には、日がな一日テレビを観ているような感じだと思われるけど、それだって、実際にはテレビを観るってことをしているしね。

Q:どのように“何もしない”ときを過ごしたのですか?
僕の住んでいる土地はとても美しい場所なんだ。そこで木を切ったり、散歩したり、何もしてないときでもたくさんのことができるんだよ。その時間を愛しているし、とても楽しんでいる。

Q:プーさんのことはどの程度ご存じでしたか?
絵本は小さなころに読んでもらっていたし、とても大切にしていたから覚えていた。それに、僕もプーさんのようなクマのぬいぐるみを持っていたんだ。腕と脚の関節がおかしくて、とてもプーさん的だった。だから、この映画でプーさんと共演したとき、あの古いクマの記憶がよみがえったよ。

Q:大人になったロビンが、自由にふるまうプーさんに腹を立てるシーンが印象的でした。
実は、7歳の娘と劇場でこの映画を観たとき、そのシーンに彼女がすごく動揺してしまったんだ。僕は子供たちをあんなふうにしかったことがないのに、お父さんがプーさんを怒鳴っているんだからね。娘が2人は大丈夫なの?って心配していたよ。できるだけストーリーをばらさないように、お父さんは大丈夫だからねって、映画館でささやいたよ(笑)。

Q:おかしいけれど、ロビンが昔の彼とは違うことが感じられて、物悲しくもあるシーンですね。
大人になったロビンの人間性が垣間見えるシーンだからね。僕にとっても印象的だったよ。それに、とても挑戦的だと思わない?子供に向けたディズニー映画で、大人の主人公がプーさんをしかるなんて!だからこそ、それからいなくなってしまったプーさんを苦労して見つけて、ごめんと謝る場面も素敵だと思う。

Q:ロビンが旅行かばん会社の社員で、上司に従業員のリストラを迫られる立場という設定も興味深いです。
ロビンは大勢の人が職を失うのか失わずに済むか、その責任を担う立場だ。人々の生活が彼の手の中にある。そういう類いのプレッシャーは、僕がこれまでに感じたことのないものだから、そこは僕と彼との違う点だったかな。

Q:本作のロビンやオビ=ワン・ケノービのように、象徴的なキャラクターの過去や未来を演じるプレッシャーは、相当なものではないでしょうか。
いや、特にそうしたことにプレッシャーを感じることはないんだ。それよりも、実在する人物を演じる方がプレッシャーだよ。かなり前に『マネートレーダー/銀行崩壊』(1998)という作品で実在のマネートレーダーを演じたときの方が、はるかに重圧を感じた。現実に生きている人物だからね。

Q:この映画で演じられたロビンについて、観客はどう感じると思いますか?
どうかな、誰も大人になったクリストファー・ロビンのことなんて考えないからね。間違っているぞ!なんて言ってはこないんじゃないかな(笑)。

映画 英国スコットランド出身のユアン・マクレガーは、私の好きなタイプの俳優である。幅広い役柄を数こなし、不断に私の好感を呼び起こす役者だ。彼の出演作を、これまでに私は『トレインスポッティング』(原題:Trainspotting、ダニー・ボイル監督、1996年)に初めて出会って以来、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(ジョージ・ルーカス監督、1999年)(cf.本ブログ〈January 18, 2016〉)、『ムーラン・ルージュ』(原題:Moulin Rouge!、バズ・ラーマン監督、2001年)をはじめ、二十数作~直近では『美女と野獣』(日本公開:2017年4月21日)(cf.本ブログ〈May 01, 2017〉)~鑑賞。

宝石赤 cf. ユアンの初主演作『トレインスポッティング』~1990年代最高の“陽気で悲惨”な青春映画~ 予告編 :


宝石ブルー cf. 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』~ジェダイの騎士であるオビ=ワン・ケノービ を演じたユアン~ ダース・モール戦[<クワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)&オビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)>VS <ダース・モール(レイ・パーク)>] :


宝石紫 cf. 『ムーラン・ルージュ』~世紀末のパリを舞台に、ナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」のスターで高級娼婦サティーン(ニコール・キッドマン)と貧乏作家クリスチャン(ユアン・マクレガー)の、悲しくもはかない恋を描く、絢爛豪華な映像と珠玉の音楽を収めたスペクタクル・エンターテイメント(ミュージカル映画)~予告編 :
2018年10月30日(火)立川シネマシティ(シネマ・ワン:東京都立川市曙町2ー8ー5、アクセス:JR立川駅北口から徒歩5分)で、15:15~鑑賞。

「コーヒーが冷めないうちに」

作品データ :
英題 Café Funiculi Funicula
製作年 2018年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 117分


「本屋大賞2017」にノミネートされた川口俊和の同名ベストセラー小説を映画化したハートフル・ファンタジー・ドラマ。望んだ過去に戻れる不思議な喫茶店を舞台に、それぞれの事情を抱え、過去に戻りたいと願う登場人物たちが繰り広げる切ない人間模様をオムニバス・タッチで綴る。主演の有村架純が喫茶店の店員を演じるほか、伊藤健太郎、波瑠、薬師丸ひろ子、吉田羊、松重豊、石田ゆり子らが出演。監督は数々のTVドラマを手がけ、本作が映画監督デビューとなる塚原あゆ子。

ストーリー :
時田数(ときた・かず、有村架純)が叔父で店主の時田流(深水元基)と切り盛りする、とある街のとある喫茶店「フニクリフニクラ」。そこには、不思議な都市伝説があった。それは店内の<ある席>に座ると、望んだとおりの時間に戻ることができるというもの。ただし、そこには非常に面倒くさいいくつかのルールがあった。
1. 過去に戻って、どんなことをしても、現実は変わらない。
2. 過去に戻っても、この喫茶店を出ることはできない。
3. 過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまう間だけで、コーヒーが冷めないうちに飲み干さなければならない。
4. 過去に戻れる席には先客がいて、その先客が席を立ったときだけ、その席に座れる。
5. 過去に戻っても、この喫茶店を訪れたことのない人には会うことができない。

すべてのルールを守ったとき、優しい奇跡が舞い降りる。不思議な噂を聞いた客や常連客が、連日喫茶店を訪れる。幼馴染みの賀田多五郎(林遣都)とケンカ別れをしてしまった三十路前の独身キャリアウーマン・清川二美子(波瑠)。若年性アルツハイマーに侵された妻・高竹佳代(薬師丸ひろ子)と、そんな佳代を優しく見守る夫・房木康徳(松重豊)。妹の久美(松本若菜)を裏切って、一人スナックを営む常連客の平井八絵子(吉田羊)。過去に戻れる<ある席>にいつも座っている先客の謎の女(石田ゆり子)。そして、数に次第に惹かれていく常連客の美大生・新谷亮介(伊藤健太郎)。過去に戻れるコーヒーを唯一淹れることができる数も亮介に導かれ、心に秘めた過去に向かい合う…。
どんなことをしても現実は決して変わらない。それでも過去に戻り、会いたかった人との再会を望む客たち。そこで彼らを待っていたものとは?1杯のコーヒーが冷めるまでの、ほんの短い時間でも、人生は変わる―。

▼予告編



▼ “Café Funiculi Funicula”- English subtitles Trailer :
(Synopsis : Café Funiculi Funicula is a coffee shop where Kazu Tokita works. There is a mysterious urban legend about this shop. When you sit at a certain table here, you can go back in time to any point you choose in the past, but there are also some uncompromising rules.)


■私感 :
本作宣伝の謳い文句に「4回泣けます」とある。4回泣けるというのは、4つのエピソードがあってどれも泣けるということ―。
しかし、私は全くもって泣けなかった!じいんと胸が熱くなることは一切なし!
そもそもストーリー展開に大して抑揚がない。有村架純をはじめ、女性キャストにふんわりした雰囲気の女優が多い。キレのいい律動感が失われた全体的構成のもとで、どうして、私の心身が深く揺すぶられることがあろうか!?
2018年10月30日(火)立川シネマシティ(シネマ・ワン:東京都立川市曙町2ー8ー5、アクセス:JR立川駅北口から徒歩5分)で、12:45~鑑賞。

「教誨師」

作品データ :
製作年 2018年
製作国 日本
配給 マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム
上映時間 114分


名バイプレイヤーとして知られる大杉漣(おおすぎ・れん、1951~2018/02/21)が自ら初プロデュースを務め、最後の主演作となったヒューマン・ドラマ。受刑者を教えさとす“教誨師”という存在にスポットを当て、教誨師を務める牧師を主人公に、彼と6人の死刑囚との対話を通して、様々な反応を見せる死刑囚それぞれの心のありようと、主人公自身の葛藤を静かに見つめていく。6人の死刑囚役には光石研、烏丸せつこ、古舘寛治、玉置玲央、五頭岳夫、小川登。死刑執行に立ち会う刑務官を描いた大杉漣出演作『休暇』の脚本を手掛けた佐向大(さこう・だい)が監督・脚本を務める。

※ 教誨師とは、刑務所や少年院等の矯正施設において、被収容者の宗教上の希望に応じ、所属する宗教・宗派の教義に基づいた宗教教誨活動(宗教行事、礼拝、面接、講話等)を行なう民間の篤志の宗教家である。1872(明治5)年に真宗大谷派の僧侶が監獄で説教をしたことが始まりとされる。2017(平成29)年末現在の矯正施設における教誨師の人数は約2000名であり、そのうち仏教系が約66パーセント、キリスト教系が約14パーセント、神道系が約11パーセント、諸教が約8パーセントとなっている。

ストーリー :
受刑者に対して道徳心の育成、心の救済につとめ、彼らが改心できるよう導く教誨師。プロテスタントの牧師、佐伯保(大杉蓮)は、半年前に死刑囚専門の教誨師として着任した。彼は月に2回拘置所を訪れ、年齢や境遇、性格の異なる一癖も二癖もある6人の死刑囚と面会する。大量殺人者の自己中心的な若者・高宮真司(玉置玲央)、おしゃべりな関西出身の中年女・野口今日子(烏丸せつこ)、お人よしの年老いたホームレス・進藤正一(五頭岳夫)、家族思いで気の弱い父親・小川一(小川登)、心を開かない無口な男・鈴木貴裕(古舘寛治)、気のいいヤクザの組長・吉田睦夫(光石研)。佐伯は彼らが自らの罪をしっかりと見つめ、悔い改めることで残り少ない“生”を充実したものにできるよう、そして心安らかに“死”を迎えられるよう、親身になって彼らの話を聞き、聖書の言葉を伝える。しかし、なかなか思うに任せず、意図せずして相手を怒らせてしまったり、いつまで経っても心を開いてもらえなかったり、苦難の日々が繰り返される。それでも、少しずつ死刑囚の心にも変化が見られるものの、高宮だけは常に社会に対する不満をぶちまけ、佐伯に対しても一貫して攻撃的な態度をとり続ける。死刑囚たちと真剣に寄り添うことで、長い間封印してきた過去と対峙し、自らの人生とも向き合うようになる佐伯―。そんな中、ついに、ある受刑者に死刑執行の命が下される…。

▼予告編

2018年10月30日(火)立川シネマシティ(シネマ・ワン:東京都立川市曙町2ー8ー5、アクセス:JR立川駅北口から徒歩5分)の《午前十時の映画祭9》で、10:00~鑑賞。

※映画史に残る世界の名作を上映してきた「午前十時の映画祭」は、2010年2月6日に全国25館でスタート(~2011年1月21日)、現在も全国58館で第9回(2018年4月13日~2019年3月28日の全50週間)が開催されている(上映時間:毎朝午前10時開映)。

午前十時の映画祭

作品データ :
原題 Sophie's Choice
製作年 1982年
製作国 アメリカ
上映時間  150分


「ソフィーの選択」

1979年にウィリアム・スタイロン(William Styron、1925~2006)が著わし、ピュリツァー賞を受賞した同名小説をアラン・J・パクラ監督が映画化。第二次大戦後のニューヨークを舞台に、作家志望の青年の目を通して、アウシュヴィッツから生き延びたポーランド人女性ソフィーとユダヤ人の恋人の過酷な愛のドラマが綴られる。反ユダヤ主義の環境に育ちながらナチに人生を踏みにじられた女性をメリル・ストリープ(Meryl Streep、1949~)が熱演し、第55回アカデミー賞主演女優賞を受賞。

ストーリー :
南部の田舎町に住む青年スティンゴ(ピーター・マクニコル)は、作家になることを夢見ていた。1947年、まだ恋愛も知らず井の中の蛙だった彼は、故郷を後にしニューヨークに出、ブルックリンにあるジンマーマン夫人の安アパートに住む。ここはピンク・パレスと呼ばれる内装がピンク一色という変わったところだった。階段で2人の男女~ネイサン(ケヴィン・クライン)とソフィー(メリル・ストリープ)~が争っているのを目撃。その夜、ソフィーがスティンゴの部屋にやって来た。「父はポーランドの大学教授でユダヤ人を助けようとした」と語る彼女の腕には、強制収容所で焼き付けられた囚人番号の烙印があった。翌朝、スティンゴはソフィーとネイサンに起こされた。ネイサンは製剤会社ファイザーに勤めている生物学者で、強制収容所から解放されて渡米したソフィーが貧血と疲労で倒れたところを救い、今は一緒に住んでいるという。3人はコニー・アイランドで終日遊び、親友となった。しかし、スティンゴはネイサンがソフィーに言った「わかるかソフィー、俺たちは死ぬんだ」という言葉が気になる。ネイサンの紹介でつきあった「ファック」を連発する奔放そうな少女レズリー・ラピダス(グレタ・ターケン)を抱こうとすると、「精神分析を受け、やっと卑猥な言葉を口にすることができるようになったところだ」と泣かれて閉口する。心身ともに疲れて戻った彼にソフィーが寝酒を誘う。そして、父と夫がドイツ軍に拉致されて処刑されたこと、自分は病気の母のため闇市でハムを買ったことがばれてアウシュヴィッツに送られたのだという。カトリック教徒である彼女は、解放後、教会で自殺を図ったとも語る。ネイサンの部屋へ入ると、ナチ関係の本がいっぱい。ユダヤ人である彼は、ナチの犯罪が許せないのだ。ネイサンはスティンゴの大事な原稿をひっさらって読み、ソフィーとスティンゴを連れてブルックリン橋へ行き、スティンゴは偉大な作家になると予言する。ある日、ネイサンはノーベル賞ものの研究が完成したと打ち明ける。その夜、彼はソフィーが雇い主と外出したことを責めたあげくスティンゴの小説を青くさい自己憐憫という。翌日、ネイサンとソフィーがいなくなった。スティンゴはポーランド時代にソフィーの父の講義を受けたという教授から意外な事実を聞いた。ソフィーの父は、ナチ信奉者だったというのだ。その夜、戻ってきたソフィーを問いつめると、彼女は父、父の弟子だった夫が反ユダヤ主義者であったことを認める。だが、ナチはそんなことはかまわず、父と夫を拉致し、彼女自身も息子ヤン、娘エヴァと一緒にアウシュヴィッツに送られたのだという。ヤンは子供バラックに、エヴァは抹殺され、彼女は収容所長ルドルフ・ヘス(ギュンター・マリア・ハルマー)の秘書にされる。父のナチ賞揚の論文を見せヤンをドイツ人化計画に組み入れてくれと頼むが、効果なく、ヤンのその後は知れずじまいに終ったと語るソフィー。ある日、スティンゴはネイサンの兄ラリー(スティーヴン・D・ニューマン)から弟は妄想性分裂症であると聞かされる。その夜、ネイサンはソフィーに求婚し、新婚旅行にスティンゴの故郷である南ヴァージニアに行くと宣言する。幸福そうなソフィー。ある日、またネイサンが怒り出し、スティンゴはソフィーを連れてワシントンに逃げる。ホテルの一室で、ソフィーに求婚するスティンゴ。彼にソフィーが告白する。「アウシュヴィッツの駅でドイツ人将校が3人の前に来て、子供を1人だけ手放せと迫った。出来ないと言うと、彼は、では2人とも焼却炉行きだと冷たく言い放つ。無情な選択を迫られ、思わず娘を連れてってと叫んだ…」と。30過ぎのソフィーと22歳のスティンゴはその夜、情熱的に愛を交わし、スティンゴは童貞を喪失する。しかし、翌朝、ベッドにはソフィーの姿はなく、「ネイサンの元に戻る。目覚めた時、罪の意識に苛まれた」という旨の書き置きが残されていた。スティンゴがブルックリンのアパートに戻ると、ソフィーとネイサンは青酸カリで自殺していた。窓から射す眩しい白い光を浴びて、身を寄せ合いながら、まるで詩に描かれた情景のように静かに広いベッドに横たわる、二人の身体。スティンゴは自分探しの旅を終え、ブルックリンを去る―。

▼ Trailer



▼ “The Choice”/ I Can't Choose. :


【以下セリフ訳】
ドイツ人将校:君は美しい。ベッドに連れてきたい。ポーランド人か?薄汚れた共産主義者の一人か?
ソフィー:ポーランド人です。クラコウで生まれた!ユダヤ人じゃない、子供たちもです!ユダヤ人じゃない、人種的に純潔です!私はキリスト教徒です、カトリック教徒です!
ドイツ人将校:共産主義者じゃない?キリスト教徒?
ソフィー:そうです、キリスト教徒です…
ドイツ人将校:キリストを救世主と信じている?(息子を見て)キリストは言わなかったか…“幼子をそのまま私の元にこさせなさい(聖書の一文)”。/不審そうなソフィー
ドイツ人将校:残す子供一人を選べ。/ソフィー:え!
ドイツ人将校:残す子供一人を選べ。残り一人は連れて行く。
ソフィー:それは私に選べということ?
ドイツ人将校:お前はポーランド人でユダヤ人ではない、だから選ぶ特権をやる。
ソフィー:わたしには選べない!選べない!
ドイツ人将校:黙れ。/ソフィー:選べない。
ドイツ人将校:選べ。さもなければ二人とも連れて行くぞ!選べ!
ソフィー:私に選ばせないで!できない!
ドイツ人将校:二人とも連れて行くぞ!もういい!黙れ!選べ!二人とも連れて行くぞ!
ソフィー:私に選ばせないで!できない!
ドイツ人将校:二人とも連れて行け!連れて行け!
ソフィー:娘を連れてって!この子を!娘を!


▼ Meryl Streep Wins Best Actress: 1983 Oscars(メリル・ストリープ「第55回アカデミー賞主演女優賞」受賞スピーチ) :
(Sylvester Stallone presenting Meryl Streep the Oscar for Best Actress for her performance in "Sophie's Choice" at the 55th Academy Awards in 1983.)


≪Oh boy, no matter how much you try to imagine what this is like, it’s just so incredibly thrilling right down your toes. I have a lot of people to thank and I’m going to be one of those people that tries to mention a lot of names because I know, just two seconds ago, my mother and father went completely bezerk (laughter), and I’d like to give some other mothers and fathers that opportunity. I’d like to thank William Styron for creating this beautiful character… and Alan Pakula for bringing it to the stage and allowing me to play it. I would like to thank Marty Starger and [...] for finding the financing for us, Nestor Almendros - a great cinematographer, Albert Wolsky - wonderful costumer - and the crew, Tommy Priestley, the Gerados, the DeBlau Brothers, Tommy Prate, Chris Newman, Danny Maitlin, Wally Probs, Lilian, Alba, Dixie, Roy Helland, ehm (giggles)… I’d like to thank my Polish coach, Elaina Baco, my German coaches - Ann Katanio and David Friedman, and the 37 members of the American and European cast - whom I won’t mention (laughs) all of their names, but for two. I feel like I owe them this because everything that I had I got from looking in their eyes. And for the great love they gave me for five months I thank Kevin Kline and Peter MacNicol (applause, Meryl throws a kiss into the audience) - and I thank you all very much!≫

■私感 :
本作を初めて東京都内の映画館で観たのは1983年のこと。今回は35年ぶりの2度目の鑑賞だった。
私はこれまでに、メリル・ストリープ(Meryl Streep、1949~)という米国の女優の出演作を多数~私の記憶に浮かぶ作品は計28作~鑑賞してきた。
初めて出会った作品は、『ディア・ハンター』(原題:The Deer Hunter、米国公開:1978年12月8日)。1960年代末期におけるベトナム戦争で心身に深い傷を負った若き3人のベトナム帰還兵の生と死を描いたマイケル・チミノ監督(Michael Cimino、1939~2016)渾身の一作。私は同作を1979年3月17日の日本公開直後に、東京都内の映画館で観た。
以来、(ほぼ日本公開順に)『マンハッタン』(日本公開:1980年2月23日)→『クレイマー、クレイマー』(日本公開:1980年4月5日)→『ソフィーの選択』(日本公開:1983年10月15日)→『恋におちて』(日本公開:1985年3月21日)→『愛と哀しみの果て』(日本公開:1986年3月15日)→『心みだれて』(日本公開:1986年10月10日)→『ハリウッドにくちづけ』(日本公開:1991年2月22日)→『永遠に美しく…』(日本公開:1992年12月12日)→『愛と精霊の家』(日本公開:1994年5月14日)→『激流』(日本公開:1995年4月22日)→『マディソン郡の橋』(日本公開:1995年9月1日)→『判決前夜/ビフォア・アンド・アフター』(日本公開:1996年9月14日)→『マイ・ルーム』(日本公開:1997年2月8日)→『めぐりあう時間たち』(日本公開:2003年5月17日)→『クライシス・オブ・アメリカ』(日本公開:2005年3月26日)→『プラダを着た悪魔』(日本公開:2006年11月18日)→『大いなる陰謀』(日本公開:2008年4月18日)→『マンマ・ミーア!』(日本公開:2009年1月30日)→『ダウト~あるカトリック学校で~』(日本公開:2009年3月7日)→『ジュリー&ジュリア』(日本公開:2009年12月12日)→『恋するベーカリー』(日本公開:2010年2月19日)→『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(日本公開:2012年3月16日)→『8月の家族たち』(日本公開:2014年4月18日)→『イントゥ・ザ・ウッズ』(日本公開:2015年3月14日)→『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(日本公開:2016年12月1日)→『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(日本公開:2018年3月30日)→『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』(日本公開:2018年8月24日)を鑑賞。

メリル・ストリープはもともと卓越した演技力の持ち主である。私は彼女の出演作はすべて安心して堪能できる。
ナチスのユダヤ人収容所に端を発する、一人の女性の悲劇を描く本作でも、繊細で説得力のある入魂の演技を披露している。私は命の続く限り、ラスト近くの、観る人の心に強烈な印象を彫りつける最も哀しく残酷な名シーンを忘れることはないだろう。とりわけ子供を想ったソフィー=ストリープの、悲しみのあまり叫ぶにも声にならない、あの顔を…。確かな存在感を印象づける彼女の名演技によって、本作が映画史上に残る、きわめて余韻豊かな、屈指の名作となった。
2018年10月29日(月)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、14:40~鑑賞。

「ゲッベルスと私」

作品データ :
原題 A GERMAN LIFE
製作年 2016年
製作国 オーストリア
配給 サニーフィルム
上映時間 113分


Ms. Pomsel in the 1950s
 Ms. Pomsel in the 1950s

第二次世界大戦中、ナチスの悪名高き宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書を3年間務めた女性ブルンヒルデ・ポムゼルの30時間に及ぶ独白インタビューを捉えたドキュメンタリー。「あの時代にナチスに反旗を翻せた人はいない」と話す一方で、「ホロコーストについては知らなかった」と語る彼女の証言を通し、20世紀最大の戦争と全体主義の下で抑圧された人々の人生を浮かび上がらせていく。クリスティアン・クレーネス、オーラフ・S・ミュラー、ローラント・シュロットホーファー、フロリアン・ヴァイゲンザマーの4人の監督が、撮影当時103歳のポムゼルへ69年の沈黙を破るインタビューを敢行。

バツレッド ブルンヒルデ・ポムゼル(Brunhilde Pomsel):
1911年1月11日ベルリン生まれ。1942年から1945年までゲッベルスの秘書として働く。1945年、第二次世界大戦終戦後、ソヴィエト軍に捕らえられ1950年までの5年間、強制収容所に抑留される。1950年に釈放され、1971年の定年退職までドイツ公共放送連盟ARDで働く。2017年1月27日、ミュンヘンの老人ホームで106歳で死去。

バツブルー パウル・ヨーゼフ・ゲッベルス(Paul Joseph Goebbels):
1897年10月29日生まれ。国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)・国民啓蒙・宣伝大臣としてプロパガンダを管轄し、大衆をナチス支持へと扇動した。1945年5月1日、第二次世界大戦終戦間際、ヒトラーの自殺を追って、総統地下壕で家族(妻マクダと6人の子)とともに自殺する。

ストーリー :
1911年、ベルリンに生まれたブルンヒルデ・ポムゼルは、第二次世界大戦中、1942年から終戦までの3年間、ナチスの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働き、近代史において最も冷酷な戦争犯罪者のそばにいた人物である。いくつもの高精度カメラは、ポムゼルの深く刻まれた顔の皺や表情だけでなく、瞳の奥に宿す記憶をも鮮明に捉える。幼少の頃の父親の思い出、初めて出来た恋人の話、ユダヤ人の友人の面影、そして“紳士”ゲッベルスについて…。103歳とは思えぬ記憶力で、ポムゼルはカメラに語りかける。また、ナチスを滑稽に描くアメリカ軍製作のプロパガンダ映画や、ヒトラーを揶揄する人々を捉えたポーランドの映像、ゲッベルスがムッソリーニとバカンスを楽しむプライベート映像、そして戦後、ナチスのモニュメントを破壊する人々やホロコーストの実態を記録した映像等、世界各国で製作された様々なアーカイブ映像が挿入される。「いわれたことをタイプしていただけ」と語りながらも、ポムゼルは時折、表情を強張らせて慎重に言葉を選んでいく。それは、ハンナ・アーレント(Hannah Arendt、1906~75)(cf. 本ブログ〈February 09, 2017〉、本ブログ〈May 13, 2017〉)における“悪の凡庸さ”をふたたび想起させるのだった―。

▼予告編



▼ cf. “ヨーゼフ・ゲッベルス” [「ヒトラーと6人の側近たち」 第1回 「ヨーゼフ・ゲッベルス」1/3→2/3→3/3(制作:ZDF〈ドイツ 1996年〉)] :