映画『あん』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年10月31日(水)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、11:25~鑑賞。

「あん」

作品データ
製作年 2015年
製作国 日本/フランス/ドイツ
配給 エレファントハウス
上映時間 113分


『萌の朱雀』『殯(もがり)の森』の河瀬直美監督が、作家やパフォーマーとして活躍するドリアン助川が人はなぜ生きるのかという根源的な問いに迫った同名小説(ポプラ社、2013年)を映画化。小さなどら焼き屋で“餡子”作りを任された元ハンセン病患者の女性の姿を、四季の情景を織り交ぜながら描く人間ドラマ。偏見にさらされ続けても精一杯生きようとする老女「徳江」を樹木希林が、どら焼き屋の雇われ店長「千太郎」を永瀬正敏が、どら焼き屋の常連の女子中学生「ワカナ」を内田伽羅が、「徳江」の長年の友人「佳子」を市原悦子が、それぞれ演じる。

ストーリー
季節は春。桜の咲き乱れる公園に面したどら焼き屋「どら春」で、辛い過去を背負う千太郎(永瀬正敏)は雇われ店長を続け、日々どら焼きを焼いていた。ある日、この店の求人募集の貼り紙を見て、徳江(樹木希林)という手の不自由な老女が現われ、働かせてほしいと千太郎に懇願する。彼女をいい加減にあしらい帰らせた千太郎だったが、手渡された手作りの“餡(あん)”を舐めて彼はその味の佳さに驚く。徳江は50年“餡”を愛情をこめて煮込み続けた女だった。店の常連で高校受験を控える中学生ワカナ(内田伽羅)の薦めもあり、千太郎は徳江を雇うことにした。徳江の“餡”を使ったどら焼きのうまさは評判になり、やがて大勢の客が店に詰めかけるようになる。だが、店のオーナー(浅田美代子)は徳江がかつてハンセン病を患っていたとの噂を聞きつけ、千太郎に解雇しろと詰め寄る。そして、その心ない噂が広まったためか客足はピタリと途絶え、それを察した徳江は店を辞めた。素材を愛した尊敬すべき料理人である徳江を守ることができなかった自分に憤り、酒に溺れる千太郎。徳江と心を通わせていたワカナは彼を誘い、ハンセン病患者を隔離する施設に向かう。そこにいた徳江は、淡々と自分も自由~働くという「自由」、やりたいことができる「自由」~に生きたかった、との思いを語るのだった…。

▼予告編



樹木希林・永瀬正敏・河瀨直美監督インタビュー :



[※追記(2019/05/10):2019年5月8日(水)、本作を目黒シネマで、17:10~再見]