映画『毎日がアルツハイマー2 関口監督、イギリスへ行く編』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

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私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年11月1日(木)「ココロヲ・動かす・映画館○」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-15、JR吉祥寺駅北口徒歩約5分)で、13:55~鑑賞。
「毎日がアルツハイマー2」「関口監督、イギリスへ行く編」

作品データ
製作年 2014年
製作国 日本
配給 シグロ
上映時間 51分


認知症の母親とのユーモラスな日々を描いたドキュメンタリー『毎日がアルツハイマー』(本ブログ〈November 09, 2018〉)の続編。さらに病気が進んだ母親の介護を続けるなか、関口祐加監督が「パーソン・センタード・ケア」という認知症ケアを学びにイギリスへと渡る姿に迫る

ストーリー
母・ひろこさんにアルツハイマー型認知症の症状が現われ始めた2009年、娘である関口祐加監督は、29年間住んでいたオーストラリアを離れ、「母と一緒に暮らそう」と決意。翌年1月、日本の実家に戻ってきた。そんな娘を待っていたのは、頑なに家から出ようとせず“閉じこもり”になってしまった母。数日前に誕生日を祝ってもらったことを忘れてしまったり、あっという間にすごい量のトイレットペーパーがなくなったり、さらには預金通帳をなくしてしまったり…。しかし、認知症発症後、以前とは見違えるように喜怒哀楽を表に表わし、あけっぴろげで、あけすけな性格へと豹変した母はとっても愛らしくて、チャーミング。自分のやりたいことをやり、言いたいことを言い、本能のまま生きる母と家族の日々の暮らしを赤裸々に描いた、前作『毎日がアルツハイマー』の公開からまもなく2年。「毎アル」な母・ひろこさんの閉じこもり生活に少しずつ変化が現われる。デイ・サービスに通えるようになり、あんなに嫌がっていた洗髪をし、娘の関口監督と一緒に外出もする。その姿は、なんとも幸せそうで“いい感じ”である。しかし、調子が悪い日は、感情の起伏が激しく、突然怒りがこみ上げたり、相変わらず一日中ベッドの上ということも。そんな母との生活の中で、「パーソン・センタード・ケア(P.C.C.=認知症の本人を尊重するケア)」という言葉に出会った関口監督は、認知症介護最先端のイギリスへと向かい、北部ノーリッチにある認知症ケア・アカデミーを訪問。認知症の人を中心に考え、その人柄、人生、心理状態を探り、一人ひとりに適切なケアを導き出すP.C.C.の実態に迫っていく…。

アップパーソン・センタード・ケア(Person‐Centered Care)」とは、イギリスの心理学者トム・キットウッド(Tom Kitwood、1937~98)が提唱した認知症介護の理念。従来の医学モデルで行なわれてきた介護施設や介護者中心の一方的な介護を再検討し、認知症患者の個性や人生、尊厳などとしっかり向き合うことで、「その人を中心とした最善のケア」を目指す。イギリスではNSF(National Service Framework for elder people 2001:高齢者サービスを行なう際の国家基準 2001年版)に取り入れられていて、日本の介護現場でも導入されつつある。
トム・キットウッドによれば、認知症とは脳の障害だけでなく、次の五つの要素が絡みあって起きている状態である。①脳の認知障害(アルツハイマー病、脳血管障害など)、②健康状態(既往歴、現在の体調、視力・聴力など)、③生活史(成育歴、職歴、趣味など)、④性格(性格傾向・対処スタイルなど)、⑤社会心理学(周囲の人間関係のパターン)。
パーソン・センタード・ケアでは、認知症ケアの目的は清潔や安全であることだけでなく、たとえ 「認知症」という病名が同じであっても、一人ひとり認知機能や健康の状態、性格、人生歴、周囲の人間関係などが異なり、その人の個別性を踏まえ、その人らしさを尊重することが必要であると唱えており、「パーソンフッド(personhood)」(一人の人間として、周囲に受け入れられ、尊重されること)を高めることを核としている。

▼予告編