私、全然誇れるレベルではないけれど、色々な本を読んできましたが、その中でもダントツ好きなのが、奥田英朗さんの「ドクター伊良部」シリーズなんです。
『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』『町長選挙』本当に全部大好き。
注射が好きで、ぶっ飛んでいて、ふくよかで、患者にフランクに接して、金持ちの坊っちゃまで、マザコンで、セクシーな看護師マユミちゃんと共に、めちゃくちゃなんだけど、意外と的を射る治療を行う伊良部先生のお話にどれだけ救われてきたことか…!!😭😭😭
今回久しぶりに発売されたドクター伊良部の最新作『コメンテーター』(文藝春秋)も、どう生きてもいい、失敗しても間違ってもいい、ちょっとくらい迷惑かけてもずるくてもいい、生きてりゃ良いと思える、すんばらしい短編集でした。
本作は、第一発目から、コロナ禍の日本で、ワイドショーで医者としてコメンテーターを任される伊良部先生の素っ頓狂な活躍から描かれます。
思ったことを素直に口に出す伊良部先生をワイドショーなんかに出したらヤバいに決まってる😱💦
しかし、低視聴率にあえぐスタッフは、伊良部と共にギター抱えたセクシーな看護師・マユミちゃんを出すと視聴率が上がることに気づき、どんどん調子に乗った番組作りを始めるのですがーー⁉️
また、私が本作で一番心に残ったのは、何をされても心の中でしか怒ることが出来ない中年男性の物語「ラジオ体操第2」です。
「ちゃんと怒れない病」の会社員・克己は、危険な煽り運転を受けても、夜な夜なスケートボードで暴走する若者に遭遇しても、はたまた伊良部先生の差し金で、額に噛んでたガムを押し当てられても怒れない。
対立を避けようとしてしまうんです。(日本人に多いらしいですね…。)
そこで伊良部先生は、以前も登場した尖端恐怖症のヤクザを連れ、街に飛び出し、克己を「一人前の怒れる男」にすべく、とんでもない治療を始めますーー。
もう、笑ったし泣きましたよね。
妻子持ちでローンも仕事もあって、諍いを裂けたい中年男性の気持ちがわかる読者は多いのではないでしょうか。
でも怒りをために溜めてしまうと、とうとう身体が音を上げ、パニック障害を起こしてしまった。
そこで、一般人とは発する周波数が異なる伊良部先生が、常識が通じないトンデモ迷惑人間を相手にする方法を、ヤクザを連れて、克己に伝授していくという…。
なるほどーって思ったし、この世に本当に伊良部先生がいてほしくなりました😭😭😭
この方法は確かに使えると思いました。
また、責任感が強すぎるピアニストが、ストレスから広場恐怖症が悪化していく物語「ピアノ・レッスン」は、看護師のマユミも活躍して面白かったです。
私も同じ症状(すぐに逃げられない狭い場所に行くと発狂しそうになるやつ…)で悩んだことがあるから、気持ちも軽くなりました。
「うっかり億万長者」はただひたすらもったいないー! と思ったし(庶民の考えでごめん…)、コロナ禍で友人が出来ない大学生を描いた「パレード」は、年の離れた友情に泣かされました。
人知れず心の病で悩んでいる人間は、この世にきっとたくさんいて、それと真剣に向き合いすぎることなく、絶妙なバランスで、「その病気じゃ死なない大丈夫!」って言いながら、トンデモ治療を行う伊良部先生みたいなお医者さんは、今本当に必要とされている気がしました。
また大好きな本が増えました。
紙でも電子でも買ってしまった私です🤣