ちょい間が空きましたが、今回のTSUTAYAレンタル映画ラッシュ、いよいよ真打作品が登場です。
※当ブログの映画感想系記事は、基本的にモロネタバレは避ける方針で書いておりますが、感想上必要な範囲内で物語の核心に触れたり触れなかったりしますので、その辺ご了承の上お読みくださいませ。
『パラサイト 半地下の家族』 ポン・ジュノ監督
65年ぶりのカンヌ最高賞&アカデミー作品賞ダブル受賞、特にアカデミー賞では非英語作品初の作品賞受賞という韓国発の怪物映画、上半期の中でも特に見たい映画だったんですけど、コロナ禍の影響もあって結局観れずじまいで。
で、今回初めてビデオでの鑑賞、とにかく色んな意味でショッキングな作品でした。
主人公は世界を護るヒーローでも裏社会を牛耳る悪党でもない、半地下に居を構える月並みな貧困一家。
下手すりゃ地味で退屈になりそうな設定なのに、ちょっとダークなホームコメディを軸に、漫画的なパラサイト計画へのクライム・コメディ展開、更には半地下の更に地下の闇から現れる脅威、からの波乱のエンディングへと、なぜか夢中になって観てしまう感じ…(笑
兎にも角にも何だか完璧で、大抵の映画って観終わった後ここはもうちょっと…とかありがちなんですけど、この映画に関してはもうなんか弄るトコがホントない…
本も巧みで役者もみんなハマってるし、展開にも伏線の収集具合にも本当に隙がない感じ。
ポン監督が得意にしている格差社会の描き方も、例えば格差をディフォルメした面白みを狙ってる「スノーピアサー」あたりとは逆に、下層家族も上級家族もそれほど「ぱっと見」の見た目に大差がある訳ではなく、基本的には全く同じ人間、という扱いなんですよね。
同じ時、同じ国で暮らす本質的にはそれほど違いはないはずの二つの家族、だからこそ両者の間に横たわる生活レベルの差だけが、どうしようもない格差を容赦なく描き出してゆく感じが、現代社会の格差というものの本質をとても上手に表現していたと思います。
また、騙す下層家族と騙される上級家族同士の、互いを小バカにしながらも、致命的に対立したり憎しみあったりまではせず、たまにはむしろ長所を褒めてみたり、的な関係性の微妙な匙加減も、今のヌル平和な時代感を巧みに象徴してるように感じました、まぁ最終的には致命的に破綻する訳ですけど…(笑
その破綻の切っ掛けが、あくまで上級と下層の対立でなく、下層と更なる最下層の対立発、というのも、実にリアリティ。
だからこそ、その破綻に上級家族をも巻き込まれる展開に、この映画最大の意義があるんですよね…(笑
この映画を見て、「上級家族は何も悪い事してないのに理不尽」、みたいな感想を持てる人は、基本お幸せな人生を過ごしてきた人なのでしょう…
そんな中で「臭い」という目に見えない(だから映画として映像化しづらいはずの)存在を、どうしようもない、埋められない格差の象徴に使っていて、それが節々でストーリーを引っ張ってゆくのが凄く効いていたと思います。
とかく比較されがちな「万引き家族」と比べた場合、「万引き~」があくまで日本を描いた感が強いのに比べて、こちらは韓国を舞台にしつつも、もっと普遍的というか、人類的なモノを描いていたような気がしました。
その辺が国際映画賞(旧外国語映画賞)だけでなく、作品賞までイケた所以かもしれません。
またエンタメ作品としての面白みをしっかり保ちながら、それだけに終わらない深みもしっかり併せ持っていて、観る前は「こんなに沢山賞取って凄い映画なんだろうなぁ…」みたいに思ってたんですが、いざみてみると、「この映画に最高賞与える映画賞って、なかなか捨てたもんじゃないんだな…」みたいな気持ちに変わりました…(笑
これぞ秀作、好き嫌いを越えて伝わる凄みがある映画です、お勧め。
■オレ的映画TOP10 year end chart 2019 第1位
【牛タンは厚切り派?薄切り派?】
タンに関して言えば、どっちかといえば薄切り派ですかねぇ…
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