映像業界の用語に「フィルムグレイン(Film grain)」という言葉があります。
これは、フィルムの粒子やそれによるノイズの事で、良く言えば、「フィルムらしさ、フィルムの味、映像の質感や立体感を出す重要な要素」です。が、悪く見れば、「映像のざらつき、ただのノイズ」とも言えます。
映像のデジタル化により、S/Nの良い(ノイズの無い)非常にクリアな映像が増えて来ました。
これも、フィルムグレイン(Film grain)を良しとする方々が観れば、「平坦な、つまらない映像。デジタル(=ネガティブな意味で)っぽい。」と酷評され、わざわざエフェクト効果でフィルムグレイン付加処理をする事もあります。(特にCG)
個人的には、映画館でフィルム上映されている作品を見て素直に感じる事は、「フィルムグレインって、どちらかというとノイズだよなぁ」というのが私見でしょうか?
何年か前、お台場で大規模な写真展(&ムービーショウ)が行われた「
Ashes and Snow」を観た時、あまりにも誇張された「フィルムグレイン」を見て、ショックと驚きを感じました。
「素人目にはノイズ(ざらつき)にしか見えないフィルムグレインも、ここまで誇張すると芸術なんだな。」と、わりと素直に受け入れる事ができました。
ある著名な写真家の方が、「程よい距離で鑑賞すると、このざらつきのおかげで写真(ムービー)が立体的に見える。」と評されていて、なるほど! とも思ったのです。
芸術家には、好印象の「フィルムグレイン(Film grain)」ですが、商業的にはなかなか理解されない傾向が強い気がします。
昔、沢山撮り溜めた写真はほとんどフィルムなのですが、その写真を高解像度のスキャナーでスキャンすると、当然フィルムグレイン(フィルムの粒子)が残ります。
これをそのままクライアントに提供するとほぼ100%、「ざらついている。ノイズっぽい。」と却下されます。
私はフィルムムービーの経験が無いので、ムービーの場合はよくわかりませんが、ビデオの場合も、ほぼ100%「ノイズ=悪」であり、「このざらつきが、いい味出してるねぇ!」なんて評される事はまずありません。
映画で制作者の意図した「フィルムグレイン」も、DVDやBlu-rayの制作過程のノイズリダクション処理や家庭用のプレーヤーやテレビのノイズリダクション処理で殆どのケースで、ノイズとして除去されてしまっているのでは無いでしょうか?
結局、良い要素の「フィルムグレイン」と悪い要素の「ノイズ」の違いって何なんでしょう??