27日、ton-caraの養蚕ワークショップの打ち上げ。

昨秋に引き続き、長野県の岡谷蚕糸博物館へ見学に伺いました。

朝は少し雨模様でしたが、行く道すがら虹を見ました。

 

 

 

 

 

 

岡谷市に入るとまた雨でしたが、午後には晴れました。

 

 

 

 

 

 

エントランスにこんなのありました!参加者さんが揃うまでの時間、このボードで撮影会。

 

 

 

 

 

 

さて、博物館では毎週土・日・祝日に館内ガイドツアーをしているそうです。館内を1時間で巡るのだとか。ton-caraの見学会では、通常の解説よりも詳しく、製糸の仕組みを細部までお願いしました。写真は、昭和初期のイタリア式繰糸機の前にて。

 

当館が大好きな岡谷蚕糸博物館のことは、昨年頑張って書きましたので今回は割愛。ご興味ありましたら読んで下さい。

● 岡谷蚕糸博物館見学会 その1「フランス式繰糸機について」

● 岡谷蚕糸博物館見学会 その2「諏訪式繰糸機から自動繰糸機へ」

● 岡谷蚕糸博物館見学会 その3「イタリア式繰糸機」

● 岡谷蚕糸博物館見学会 その4「 宮坂製糸所 」

 

 

 

 

 

 

 

前回の訪問から、新たな展示物を3点見つけたので、今日はこれをご紹介。

1つは「鍋の変遷」。明治に入ると機械製糸の時代になります。官営富岡製糸場を手本に各地で製糸工場が創設されますが、官営と同様の設備を整えるのは難しい事でした。そこで身近にある素材で道具を工夫して行きます。繰糸鍋についても官営のような銅製は高価だったので、諏訪では近くに焼き物の村があったことから陶製の鍋がつくられるようになります。優れたものだったので諏訪式繰糸機と共に他地方にも導入されて行きました。展示では、その初期の形からの変遷を見ることが出来ます。

 

鍋といえば、今春にあった企画展『鍋、語る。』は素晴らしかった。それもブログに書きました。乱文ですが、ご興味ありましたらどうぞ。● 「鍋、語る。」に行きました。

 

 

 

 

 

 

 

2つめは「織田式多条繰糸機」。東京を拠点に事業を展開した中原工作所が開発しました。戦後、御法川式・増澤式・郡是式などとともに普及した機械です。諏訪式繰糸機と御法川式多条繰糸機の機能を持ち合わせています。当時画期的だったのは、糸に過剰な張力が掛かると小枠が停止するという意図の切断防止機構がありました。

 

 

 

 

 

 

どういう仕組みかというと、糸道は繰糸鍋にある繭糸が集緒器を通って、赤文字の1の鼓車→2の鼓車でケンネルが掛かり→綾鉤→3の鼓車→綾鉤→小枠に巻き取られます。この3の鼓車は、見ての通り竿の先に鼓車がついた形状です。繰糸中はこの竿が細やかに上下することで糸切れ防止になっているのだと思います。そこに過剰なテンションが掛かると糸が切れ、竿がポンと上がります。すると、糸切れした箇所の小枠が止まるのです。竿が上がることで切れている小枠が発見しやすくなり、糸の結び直しが素早くできるので、生産効率も上がったことでしょう。これ以降の繰糸機械には、糸が切れると小枠が止まるという機構が取り入れられて行くのだそうです。

 

それにしても、この竿の形状はユニークです。アジアの幾つかの地域にはこうした竿というか天秤を使った道具がありますよね。わたしが知るところでは織機がそうで、書物によると天秤腰機は中国の江南で発明されて日本に入ってきたとか。和紙を漉く装置の上にもこうしたものがあります。天秤の発想はアジア的なものであり西洋の発想には無いと、以前何かの本で読んだ記憶があります。私の曖昧な記憶を綴って申し訳ないですが、そうだとしたら面白い。日本の繰糸機は明治以降、西洋の繰糸機を土台に独自の工夫がなされました。日産自動繰糸機HR1型に至るまでの変遷には、御法川式多条繰糸機のように西洋の近代的な考えとは全く違う発想で開発され、海外で絶賛される生糸を生産したものもあります。織田式もそのように感じました。以上の個人的主観はさて置き、この織田式に価値を見出し保存、展示されたことに感動します。

 

 

 

 

 

3つめは「竃」です。展示順路としては紹介が逆なのですが、わたしとしてはこれを〆に持ってきたいわけです。牛首の横にこの竃が新たに設置されていました。牛首は、このように竃と鍋がセットで糸作りをします。この竃は復元品ではなく、実際に使われていたものだそうです。このように壊れやすい竃が収蔵されていることは奇跡です。

 

この展示の見どころは、実際に道具を使って作業する場合に、人が道具を正面にして座る位置でセッティングされている。そして竃の焚き口もそれに則した向きに置かれていることだと教えていただきました。真摯に研究調査なさっているからこその細やかな配慮にも感激しました。

 

 

 

 

 

 

ミュージアムエリアの後は、企画展『皇室のご養蚕とシルク岡谷』を拝見し、宮坂製糸所さんのエリアへ。繰糸の歴史をしっかり学んだ後の工場見学は、大変充実したものでした。

 

参加者さんは、養蚕や座繰り、機織りを学んでいる方なので、質問内容が濃かったです。ton-caraのスタッフは2回目の訪問でしたが、岡谷蚕糸博物館は何度伺っても新たな発見があります。参加者さんの満足した表情に、スタッフも企画して良かったなと嬉しかったです。高林館長、研究員の林さん、宮坂製糸さん、博物館のみなさん、大変お世話になりました。感謝申し上げます。

 

岡谷蚕糸博物館  

長野県岡谷市郷田1-4-8 TEL : 0266-23-3489

開館時間:9:00〜17:00 / 休館日:水曜日・祝日の翌日

 

以下、岡谷蚕糸博物館のオススメ内容!!

【館内ガイドツアー】

製糸機械が一堂に並ぶ常設展や、実際に稼働している製糸工場の内部まで、職員が楽しくご案内いたします。

◆ 開催日:毎週土・日・祝日

◆ 時間:10時半〜/14時〜 

◆ 申込不要(要入館料)

 

【フランス式繰糸機の復元器 実演】

富岡製糸場の実際に明治時代から使われていたフランス式繰糸機の復元機での糸取り実演。

◆ 開催日:毎月第2土曜日

◆ 時間:11時〜/14時半〜

◆ 申込不要(要入館料)館内ガイドツアーと併せてご覧いただけます。