傘はいらない。/umbrella
1. 傘はいらない。
ゲリラ的に配信されたumbrellaのデジタルシングル。
6月11日は"傘の日"とのこと。
それに乗らない手はないと言わんばかりにリリースされた新曲は、「傘はいらない。」とどこか皮肉交じり。
"心に傘を"をコンセプトに活動している彼らだけに、勘繰ろうと思えばいくらでも勘繰れるタイトルですが、歌詞に耳を澄ますと、いやいやこれこそ彼らの提示してきたメッセージの本懐だろう、と。
心に傘があるから、傘はいらない。
このタイトルは絶妙でしたね。
さて、サウンドについては彼ららしいオルタナ風のギターロック。
生音だけでアレンジを構築しているという意味では骨太な演奏と言えるのですが、その言葉が誤解を与えそうな繊細さがあって、Vo&Gt.唯さんのファルセットを主体とした歌声も相まって、浮遊感を生んでいます。
誤解を恐れずに例えれば、ソロワークスにて打ち出してきた柔らかい表現を、バンドで再現することで化学反応を起こそうとするアプローチ。
唯さんのソロプロジェクトにおける作風が好きな人であれば、より刺さるのでは。
叙事的な表現もあるものの、受け取る印象としては叙情的。
天気の描写が心模様とリンクしていて、結局アウトロが鳴りやむまでに雨は止まないのだけれど、それは通り雨だと言い切るラストシーンが胸に響きます。
細かいところは一切書いていないのに、どういう心境の変化があったのかは明確。
そして、ここからどうなるのかの選択肢は抽象的な言葉でぼかしていて、複数の解釈を受け入れている。
最後の1節だけで、ドラマの脚本が1本書けるぐらいにイマジネーションが広がっているのですよ。
ほんのりとマニアックさは漂わせつつ、聴きやすい歌謡曲的なメロディのバランスも良し。
じわりじわりと沁み込む1曲です。
<過去のumbrellaに関するレビュー>