habit/マオ
1. 枯渇
2. HABIT
3. 縄と蝶
4. Closet
5. 恋の泡
6. 深海
7. 最低
8. ROUTE209
9. 青い雨
10. 最後の恋
シドのVo.マオさんによるソロとしては初のフルアルバム。
マオ from SIDとしてリリースした「Maison de M」以来、8年ぶりとなるソロCD。
シドへの導線や経験値の還元を前提としたソロ活動ではなく、自身がやりたいことをやるためにと、名義から"from SID"が外れた形。
ただし、差異化への意識もフラットにした結果、マオ from SIDよりもシドのヴォーカリストとしての生き様が前面に出ているのが本作の特徴でしょう。
マオさん自ら作詞・作曲を手掛け、プロデュースもセルフ。
サウンド面ではロック色が強い作風となっていて、シドからの自然な流れで聴くことができるアルバムに仕上がっています。
ダークでディープな「枯渇」でじっとりとスタートすると、表題曲である「HABIT」は、歪んだギターとギラついたノリが爽快な歌謡ロック。
この序盤のラインナップが、シドとソロとの結びつきを印象づけたと言えるかと。
変化が出てくるのは「縄と蝶」からで、これがヘヴィーなハードロックだったから驚かされます。
キーも低めに設定して、なんともオールドスクール的なナンバー。
歌メロよりもサウンドが先行している楽曲がマオさんから飛び出してくるのが意外でしたよ。
既にライブで披露されていた「Closet」から「深海」までの流れは、ジャズやR&Bをベースに、アコースティックでも映えそうな歌モノ路線。
「Closet」まで昭和レトロに振り切れると、これはこれでシドの原点回帰と受け取れるのですが、総合的には「Maison de M」からの流れを汲んでいるパートとなっていて、どの時期の音楽も血肉になって「habit」の音楽に繋がっているというのを象徴していました。
スパートをかけてくるのは、「最低」からの終盤戦。
ソリッドでメロディアス、要するにビートロックをルーツとした王道ヴィジュアル系で攻めの姿勢に転じると、リードトラック「ROUTE209」は、パンク要素を強調したスピードチューン。
終盤のマオさんのシャウトは、今となっては貴重では。
声が出なかった時期を無駄にしないように、と制作された「青い雨」も、シドの1stシングル「青」と「私は雨」を連想させて、偶然なのだろうけれどドキッとさせられます。
そして、最後は作曲家という観点でマオさんの処女作となる「最後の恋」。
シンセが主体の淡い音使いから、壮大なバンドサウンドに昇華していくドラマティックなバラードに仕上がっていて、構成などに拙さはあるのかもしれませんが、その初々しさが出せるのも1stアルバムだからこそ。
キャリアを重ねたヴォーカリストが、ここにきて作曲にチャレンジすることで初期衝動をぶり返しているからたまりません。
なお、初回生産限定盤はLPサイズ仕様で、写真集とA2ポスター、トートバック、布パッチ、缶バッジセットが同梱。
CDがグッズとしてのニーズになりつつある中、映像ではなく実用品が付属する豪華盤も増えていきそうですね。
<過去のマオ(マオ from SID)に関するレビュー>