ダーウィン/umbrella
ダーウィン
3,240円
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1. anima
2. ヨルノカーテン(Darwin_ver.)
3. SCAB
4. ヤマアラシの涙
5. ミラーガール
6. hollow
7. 五月雨(Darwin_ver.)
8. O3
9. 叩けば誇り。
10. アラン(Darwin_ver.)
11. 夕立
結成から9年目を迎えて、遂にリリースされた感のあるumbrellaの1stフルアルバム。
「五月雨」、「アラン」、「ヨルノカーテン」のアルバムバージョンを含む全11曲が収録されています。
まず、通して聴いたときに感じたことは、"変化"はないけれど、"進化"をしているな、ということ。
移り変わりの激しい音楽シーン、"変化"と"進化"を同義で捉えてしまいがちですが、前者は瞬間的にできること、後者は時間をかけないとできないこと、という明確な違いがあるわけで。
多くの場合、それまでに積み重ねてきた土台に、何らかの"変化"が加わった化学反応をもって、"進化"したという感想に至るのだと思う。
その意味で、"変化"を伴わない"進化"に立ち会ったのは、実に新鮮な感覚でした。
もちろん、umbrellaが8年間の活動の中で何も変わってこなかったはずはなく。
1日の中で、ゆるやかに太陽や月が空を流れているように、傍から見れば変わっていないように感じるだけなのですが、ここにきて集大成的な作品が出てきたことにより、改めて"変化していたのだ"と気付くきっかけになったのですよ。
大局的に客観視できるようになったことで、はじめて感じることができる"変化"。
それこそが、本来の意味での"進化"なのではなかろうか。
まさに、作品タイトルの「ダーウィン」で連想される"進化論"というワードがシンクロしていて、とても趣深いネーミングです。
では、その"進化"の根拠なのですが、光が見える表現のバリエーションにあるのではないかと。
どちらかと言えば、ネガティブさや暗さを帯びた世界観のイメージだったのだけれど、いつの間にか、随分と救いのある歌詞やメロディも似合うようになったのだな、とか。
当初はバンドサウンドで再現できる範囲内で音楽を奏でているイメージだったのだけれど、いつの間にか、同期や効果音を取り入れて幅を増やしていたのだな、とか。
その結果、これまでは、雨という言葉で置き換えられていた音楽性が、バンド名のとおり、"傘"になっていた。
痛みや切なさは、変わらずに描かれ続けていても、道を照らす光の表現が添えられることで、深みが大幅に増したのでは。
そのうえで、シャウト等は一切使わず、歌モノに特化したスタイルは不変。
やり続けることによる経験値は極めて高く、ボーカルの安定感にしても、演奏のメリハリにしても、1stアルバムにして円熟味は十分ですね。
土台が揺るがないから、果敢なチャレンジもバランスを崩すことなく実現できる。
特にボーカルラインとギターのフレーズは、このコード進行でそれを選ぶか、というマニアックさも兼ね備えていて、歌モノ=ストレートということでもないから面白いです。
「anima」、「ヤマアラシの涙」や「O3」あたりが本作を象徴するナンバーかと思うのですが、「アラン」で盛り上げてからのバラード、「夕立」でのクロージングが個人的にはツボ。
歌モノに強みがあるバンドの本気のバラード、そりゃ、響かないわけがないじゃない。
また、ブックレットにおいて、1曲ごとにアートワークやフォントを変えているのも、演出上のポイント。
捨て曲を作らず、ひとつひとつを大事にしているスタンスが、よくわかります
V系オルタナギターロックが好きなリスナーであれば、聴いて損はないであろう1枚。
<過去のumbrellaに関するレビュー>