モノクローム / umbrella | 安眠妨害水族館

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モノクローム/umbrella
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1. セカイノオワルヲト
2. 風穴
3. ワスレナグサ
4. モノクローム
5. 太陽光線
6. 微熱
7. LoV

いよいよフルメンバーが揃ったumbrella。
約1年ぶりとなるミニアルバムがドロップされました。

"モノクロの豪雨を五線譜に乗せてアナタの心に・・・"
そんなコピーが印象的な本作ですが、あまり、豪雨といったイメージは受けなかったかな。
絶え間なく音をぶつけてくるというよりも、ときにやさしく、ときに激しく、季節や時間帯によって表情を変える雨の情緒を、楽曲で表現していこうとしているような。
テーマ的には、必ずしも雨がモチーフではなくなってきているところもあるけれど、バンドとしてのスタイルは、そう見受けられます。

透明感のあるインスト、「セカイノオワルヲト」からのスタート。
これが地味に好きだったり。
淡々と、だけど、ゆっくりと淡く透き通った世界観の中に入り込んでいく。
導入でこの手のインストを持ってきたことにより、歌に入ったところで、一気にヒートアップさせることに成功しています。
続く「風穴」が、シングルにでも持ってこれそうな楽曲なだけに、その効果は更に大きい。

音楽性としては、基本線は歌モノ。
打ち込みも程よく織り込まれていますが、バンドサウンドをベースにしていて、コピーに示されているとおり、モノクロを連想させるシンプルさがありますね。

「風穴」、「モノクローム」が、ソリッドなギターロック。
鋭く突き刺すような雨ですが、こういう雨は、割とすぐに上がってしまうもの。
歌詞は少し暗さも帯びていますが、曲調からは、悲観的な部分だけでなく、前向きな気持ちも表現されているような気がします。

「ワスレナグサ」、「微熱」は、世界観重視の雰囲気モノ。
どちらもミディアムテンポで、物悲しさがある。
ファルセットが効果的に使われていて、水彩画のような淡いタッチが美しく映えます。
鬱々とした雨空であっても、あたたかい温度も感じられるというか。
しばらくやみそうもないのだけれど、足止めされている時間も悪くない。
そんな甘酸っぱさが、胸を締め付ける。

後半の締めくくりに配置された「太陽光線」や「LoV」は、ポップさがあって、メジャー感すら読み取れてしまうほど。
テーマ性としては、弱く感じてしまいましたが、アルバムをまとめるにあたって、重要なパーツであることは事実。
地味なアルバムで終わってしまうことを阻止するべく、彼ららしさを失わない範囲内で華やかさをもたらす、重要な役割を担っているといったところでしょうか。

総合的に、音楽性は1stミニアルバムの延長線上。
しかしながら、明らかに、ひとまわりレベルアップしています。
粗さのあった音量バランスや、ピッチの安定感については、見違えるくらいに改善された。
特に、Vo&Gt.唯さんの渋く穏やかな歌声は、やすらぎを与えてくれそうな包容力あり。
バンドが持っていたポテンシャルに、音源のクオリティが追いついてきましたね。

他に必要なものがあるとすれば、やはり、インパクトか。
バンドサウンドが強まり、耳馴染みは良くなってきましたが、彼らだけの強みといった側面が、ややぼやけてしまっている。
素直に良い歌をたくさん作っているバンドですので、普遍的な歌モノバンドとしてスタイルを確立できそうな気はするのですけれど。
可もなく不可もなく、という評価ではもったいないバンド。
あとひとつ、踏み込んだ攻め方をしてみても、面白いと思いますよ。

<過去のumbrellaに関するレビュー>
アマヤドリ