我輩ハ、殺女成リ…/ヴィドール
1. 我輩ハ、殺女成リ…
2. Route 「U」
3. 新聞マスコミ関係者の方へ…
Vo.ジュイ、Gt.ヒデ、Gt.ユキネ、Ba.ラメ、Dr.テロという編成だった第二期ヴィドール。
本作は、2004年にリリースされた、第二期を象徴するシングルです。
10,000枚限定でリリースされた初回限定盤は、トールサイズ仕様の特殊ジャケット。
メインジャケットは表題曲のもとなっていますが、他の2曲についてもジャケットサイズのアートワークが用意されており、見開きやCD裏にデザインされています。
新聞記事風の小ネタも散りばめられており、現物を手にする意味がある作品と言えるでしょう。
また、完売を受けて、半年後に2nd Press盤を発表。
2004年6月26日に開催された単独公演から、「曖昧主演女優」のライブ音源が追加収録されていました。
ジュイさんが作曲を担当した「我輩ハ、殺女成リ…」は、とにかくタイトルのインパクトが絶大。
これで"わがはいは、ころすけなり…"と読ませる、ダークな世界観の中にコミカルなフレーズを放り込むセンスが、なんともヴィドールらしいよな、と。
猟奇趣味に魅せられ、ゴスロリを愛好していた10代のカップルが家族を殺害した実在の事件をテーマに、メロディアスなダークチューンとして昇華。
ジュイさんの艶やかな歌声を存分に活かした、展開の多い楽曲に仕上がっています。
どもりも含めた台詞調の歌詞からのスタート、というのも衝撃度が高かったのですが、曲が進行するにつれ、当初のイメージを塗り替えていくドラマティックな構成も、意外性を生んだ大きな武器。
ライブ映えもすれば、歌モノとしての魅力もある、代表曲にふさわしい1曲でした。
ヒデさんがコンポーズした「Route 「U」」は、ドロドロとしたミディアムナンバー。
最初のワンコーラスは英詞が中心となっているのですが、開けたメロディになるタイミングで印象的な日本語詞を投入。
サビのイメージを鮮烈にする工夫としています。
言葉遊びも随所に見られ、アプローチこそ異なれど、これもヴィドールらしさを詰め込んだナンバーですね。
最後に送り込まれる「新聞マスコミ関係者の方へ…」は、ラメさんによる楽曲。
ハネたリズムと、ライブを意識した盛り上がりの作り方が、いかにもラメさんらしいのでは。
コメディになるギリギリのラインを狙って、シリアスなテーマにリアリティをもたらす独自の手法は、この曲にもよく表れています。
ベタにハードに攻めるのかと思わせておいて、サビに和メロを持ってきたのも良し。
他の2曲との違いを生み出しながら、バラエティを豊かにしており、その後の作風にも繋がっていきました。
3曲とも作曲者が異なるにも関わらず、ヴィドールの芯は感じられる。
少ない曲数で勝負するシングル作品だからこその割りきりではありますが、いずれもサビではメロディアスに、という構成が徹底されており、強みを明確にしているとともに、強引にでもそこに辿り着くようにしたのが奏功し、複雑性が個性に。
大きなインパクトを生み出しているのですよ。
時事ネタをテーマにしているという点で、リリースから18年、歌詞の共感性が弱まった部分もあるのかもしれませんが、真似しようと思っても真似できないギミック面でのオリジナリティは、改めて聴いても色褪せていない。
ヴィジュアル系のタブーを、定番に変えてきたバンドの、渾身の1枚です。
<過去のヴィドールに関するレビュー>
Crescent gazer
Monad
十年後の今日此処で…
Deathmate
Chocoripeyes
シャットダウン
昔懐カシ総集編+オマケつき
ロマネスクゴシック