咲うカゲロウ/スキゾフレニカ
1. 咲うカゲロウ
2. アディショナル・ヘヴン
2021年にリリースされた、スキゾフレニカのネオシングル。
初回盤はクリア・ジャケット仕様となっており、透けて見えるCD盤も含めたアートワークになっているのが、とてもお洒落。
歌詞の印字も、セットされた帯も、すべてがデザインの一部となっている"CDでリリースする意味"を追求した作品と言えるのかもしれません。
特典CDにもこだわった結果、オフィシャル通販等での販売開始が遅れたうえ、それでも特典が間に合わないというのも、妥協せずに、とことん品質にこだわる彼ららしい。
おかげで耳にするタイミングは年明けになってしまいましたが、待たされた分も良いスパイスになったのではないでしょうか。
表題曲となる「咲うカゲロウ」は、軽やかなリズムと華やかなシンセが瑞々しさを感じさせるロックチューン。
季節外れではあるが、ヘッドフォンで聴きながら瞼を閉じると、夏の暑さとノスタルジックな清涼感に包まれるようで、阪本知、幸子のツインヴォーカル編成を活かした彼らのポップセンスが弾けた1曲と言えるでしょう。
もっとも、複雑なリズムや、ところどころ織り込まれる不気味なフレーズなど、一筋縄ではいかないところは彼ら流。
抽象的な歌詞も特徴で、共感とともに想像力が駆り立てられる部分もあれば、途中まで組み上がっていたイメージを崩壊させる部分もあって、健全な夏が少しずつ頭の中でぐんにゃりと歪んでいくのが、爽やかなサウンドとのギャップも相まって癖になりますね。
もう1曲の「アディショナル・ヘヴン」は、難解さを突き詰めたカオティックなナンバー。
複雑に絡み合うサウンドに、ポエトリーリーディング調のふたりの声が重なって、その情報量の多さに脳のリソースが圧迫されていく感覚。
阪本さんは激情を伝えようとする叫びにも似た語り口で、幸子さんは闇深さを表現するような淡々とした語り口で。
演出も絶妙で、少女性の高い幸子さんの歌声は、無表情に徹することで不穏な空気を演出するのに効果的。
エフェクトがかかるタイミングでは、何度聴いても鳥肌が立ちました。
なお、どちらも、Gt.青木淳平さんによる作曲。
多くのメンバーが作曲に携わることも強みであるスキゾフレニカですが、そのうちのひとりだけでも、このコントラストを生み出してしまうのだから、バンドとしてのポテンシャルの高さは言わずもがな、ですよ。
どちらの曲がスキゾフレニカに対して抱くイメージに近いかは、リスナーによって分かれそうかな。
アプローチとしては両極端ではあるけれど、スキゾフレニカにおけるど真ん中を貫いたようでもある1枚。
<過去のスキゾフレニカに関するレビュー>