アダルトチルドレン / 梟 | 安眠妨害水族館

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アダルトチルドレン/梟

 

1. 人間じゃない
2. ビニールチルドレン
3. ソシオパス
4. サヨナラだけじゃ
5. 「接吻」
6. BAR FUKURO

 

 

1stミニアルバムから4ヵ月という短いスパンで届けられた、梟の2ndミニアルバム。
 
アートワークに文字が入らない、印象的なジャケットは前作同様。
CD盤はライブ会場とオフィシャル通販のみでの販売となっていますが、同時にストリーミング/ダウンロードでの配信も開始されています。
全曲、Vo.Yoshiatsuさんが作詞、Pf.Daisukeさんが作曲を担当。
ギターレスのピアノロックという特殊な編成を活かした楽曲を展開しており、ギターを上モノとして用いる骨太なロックバンドとも、同期を取り入れてデジタルサウンドに強みを持つバンドとも違う、新鮮味のあるサウンドワークが武器になっていますね。
 
歌詞の世界観としては、都会的な印象。
ただし、華やかでスマートなイメージというよりも、喧噪の中でぽっかりと空いた喪失感や、それを埋めようとして夜を彷徨う不器用さが主軸に置かれている気がします。
激しさを求める「人間じゃない」は、それを象徴するスタート。
慣れるまで、ハードな楽曲にギターが入っていないことに違和を感じてしまうのだけれど、勢いに任せて強引にリスナーを巻き込んでくるので、いつの間にやら彼らのサウンドの中毒になっていました。
ここから、「ビニールチルドレン」から「サヨナラだけじゃ」までのシリアスチューン3連コンボに突入していくだけに、ブラフとも言える導入で梟流のピアノロックを意識付けたのは、実は大きかったのではないかと。
 
アップテンポに戻って妖艶なスタイルを示していくのが、リードトラックとなった「接吻」。
かなり極端に静かな歌モノを続けていただけに、大人びた装いの楽曲ではあるけれど、テンションを上げるには十分機能しています。
ラストの「BAR FUKURO」についても、バンド感を強めた、ドラマティックな構成。
彼ららしく湿り気のある歌モノで、アプローチこそ異なるものの、エモーショナルに感情を揺さぶってくるので、盛り上がりを一過性のものにすることなく、感動的なラストシーンを演出していました。
アップテンポの楽曲でインパクトを創出し、ベースとなる歌モノでアルバムを形作る、彼らでしか出来ない作品構成。
完成度の高さに、溜め息がこぼれますよ。
 
マーケティングとしては、サブスク時代に対応した販売方法と言えるのだけれど、このご時世では珍しく、6曲のうち5曲が5分超。
小手先のリスナーを増やすのではなく、じっくり聴かせる意識が強いのも特徴的でしょう。
MVが作成された「接吻」だけは、4分台にまとめたうえ、フックとなる歌からのスタートにしているのが、なんともあざとい。
シーンの中でどこまで浸透するか、期待値の高い1枚です。
 
<過去の梟に関するレビュー>