梟の森/梟
1. 梟の樹
2. NEO TOKYO
3. 神様はいないから
4. カデンツァ
5. 卑怯者のロマンス
6. 「いつかは死んでしまう僕らは」
活動休止中のDADAROMAのVo.Yoshiatsuさんを中心に結成された梟。
本作は、結成のアナウンスと同時にリリースされた、1stミニアルバムです。
始動メンバーは、Vo.Yoshiatsu、Pf.Daisuke、Ba.Yutara(モンストロ)、Dr.Lotto(ex-トーマス、ex-Sioux)の4人。
ギターを置かず、ピアニストを擁する異色の編成ですが、同時期にほ結成された3470.monとともに、シーンの中にピアノロックという選択肢が増えるきっかけにもなりそうです。
公式通販にて販売された数量限定初回盤は、メンバー直筆のサイン入り。
文字の入らないジャケットは、それを見越してのデザインということでしょうか。
作詞はYoshiatsuさん、作曲はDaisukeさんが担当。
ブックレットには、歌詞に加えて散文詩も掲載されており、その世界観を深めていました。
リードトラックとなる「いつかは死んでしまう僕らは」は、その音域に驚かされるほど低音と高音を行き来するドラマティックなバラード。
しっとりとお洒落に、だけどエモーショナルな方向に振り切れる余地があって、なるほど、こういう歌モノ路線でいくからピアノロックなのか、と納得してしまいそうになります。
しかしながら、アルバムを通して耳にすると、また違った景色が見えてくるから面白い。
YutaraさんとLottoさんによるグルーヴは、ライブ映えしそうなノリを生み出しているし、「NEO TOKYO」のように、ダークでダーティーなサウンドで攻めるナンバーも。
ベースがギターソロのようなフレーズを弾き倒す場面もあって、想像以上にロック然としています。
それに加わるのが、聴き慣れたギターではなく、新鮮味のあるピアノのアプローチというのが面白い。
特に「梟の樹」などでは、じっくりと楽曲の世界に没入させる演出効果が高められており、これは化学反応が生まれそうだぞ、と。
思いのほか、すんなりとギターレスのバンドサウンドを受け入れてしまったな、というのが率直な感想ですね。
ちなみに、「いつかは死んでしまう僕らは」はクリックなしで録音した一発録りなのだとか。
現代的に表現するなら、"THE FIRST TAKE"となるのでしょうが、あえてそう言わず、リード曲に据えてしまうのが彼ららしい。
あくまで、生のライブ感こそが"完成形"であり、もはや誰の音楽かわからなくなった昨今の加工頼みのCD音源に対するアンチテーゼ。
そのスタンスやアイディアも然ることながら、誤魔化しが効かないバラードで、それをやってのけてしまう技術力も、間違いなく彼らの武器となっていました。
Daisukeさんの繊細な旋律に、Lottoさんの乾いたドラムが、ばっちり映えている。
YoshiatsuさんやYutaraさんも、これまでには見せてこなかった分野でのスキルの高さを見せつけており、シリアスで緊張感のあるサウンドワークとは裏腹、伸び伸びと演奏しているのが印象的です。
"夜を見つめる者"である彼ら。
暗い世の中に飛び立った梟が、シーンを塗り替える日は近いのかもしれません。