挽歌 / アマミツゝキ | 安眠妨害水族館

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挽歌/アマミツゝキ

 

1. おはよ、

2. 上昇気流

3. 真夜中のエチュード

4. 挽歌

5. イワンにばかって言っておいて

6. hollow

7. 助けてメアリアン

8. ダイスキ

9. サーカス

10. こんぺいとう

 

アマミツゝキにとって初となるフルアルバム。

2021年10月、オフィシャル通販限定でのリリースとなりました。

 

Vo.眞田一航のソロプロジェクトとして始動。

1stEPの「自作自演デモ」は、すべての演奏を自らこなすなど、ソロ作品色を強めていましたが、本作のリリースとともに、バンドに昇格。

マクラカ壊死、ANONYMOUS等で活躍中のBa.Ivyと、梟のメンバーでもあるDr.Lottoの加入が発表されました。

ともに、サポート期間を経ての正式メンバー入りであり、既に連携や相性は確認済み。

驚きがなかったわけではないものの、納得感は十分かと。

 

先行して発表されていた配信シングル3曲を含む、全10曲。

バンド編成になっても根っこにある音楽性は変わらず、耳馴染みの良いメロディと、胸を打つ歌詞はそのままに。

東京ミカエル。からの流れを汲む、歌モノ路線の楽曲たち。

制作時は、まだソロプロジェクトだったこともあってか、現時点では一航さんの色が強く出ていると言えるでしょう。

 

シンプルなメロディのみで構成したミディアムテンポのショートチューン「おはよ、」で幕開け。

良い意味で派手さのない、素朴な楽曲ではあるのですが、最後に歌声が掠れていく表現があり、心がきゅっと締め付けられる演出に。

あまりの"らしさ"にニヤリとしてしまいます。

そこから、デジタルシングルの第一弾として発表された「上昇気流」に繋げていく展開で、スピード感に頼らずアルバムの口火を切る、彼らにしか出来ないスタートダッシュだったな、と。

 

表題曲である「挽歌」は、序盤から中盤に差し掛かるタイミングで早くも登場。

ほんのりとダークな雰囲気を忍ばせつつ、サビに向かうにつれて、たおやかで切ないメロディに着地していくメロディアスさがたまらない。
そのうえで、一航さんの声色と、Ivyさん、Lottoさんが放つリズムによって、硬さ、柔らかさの質感までも再現してしまう表現力。
それほどメロディパートが多いわけではないものの、メンバーの個性が場面展開のドラマ性を引き出しており、なるほど、バンド編成になったメリットは、ここにあったか。
タイトルに選ばれた理由も見えてきそうな、3人のカラーが絶妙に融合した1曲でした。
 
「イワンにばかって言っておいて」、「hollow」という、じっくり聴かせるパートを経て、本作中もっともアグレッシブな「助けてメアリアン」、疾走感のあるロックチューン「ダイスキ」を畳み掛けると、待っているのは、ポップさと切なさを同居させた「サーカス」。
それは楽曲単体でグッとくるというよりも、アルバム全体の流れで、ここでグッとくるように仕向けられたと思いたくなるほどで、じわじわと蓄積されていた切なさの欠片が、突き抜けてキャッチーなナンバーによって遂に決壊。
エンドロール的に締めくくる「こんぺいとう」も含めて、とにかく構成力がずば抜けていましたね。
何度聴いても飽きがこない、すっきりした口当たり。
だけど、その味わいは薄れることなく、強く印象に残るのです。
 
飛び道具らしい飛び道具はないのに、こうも衝撃を与えられるものか。
歌モノ派にはたまらない、粒ぞろいの1枚。

 

<過去のアマミツゝキに関するレビュー>

イワンにばかって言っておいて

ダイスキ

上昇気流

自作自演デモ