自作自演デモ/アマミツゝキ
1. だめだこりゃ
2. 95センチ
3. うそ、うそ。
4. ホルムアルデヒド
5. ロックに殺された
ex-東京ミカエル。のVo.眞田一航さんが、実に9年ぶりに音楽活動を再開。
本作は、会場限定盤と配信版でリリースされた1stミニアルバムです。
会場限定盤と配信版では、2曲が差し替えられており、曲順も一部入れ替えられている仕様。
本来であれば、ほぼ同タイミングのリリースを想定していたのだと思われますが、新型コロナ感染防止のための自粛により、主催ライブが延期になってしまったため、配信版が大きく先行する形となりました。
会場限定盤に収録されている「あおく燃える」、「シーラカンスは夢を見る」は、SPOTで聴くだけでも名曲感あり。
こちらも気になるところですが、限定300枚ということで、情勢も加味するとなかなか入手は難しそうですね。
デモという名のとおり、サウンドとしてはとてもシンプルなギターロック。
ほぼ一航さんがセルフでの制作だったということで、正真正銘のインディーズスタイルと言えるでしょう。
煌びやかな現代ロック的な見地からすれば、まだまだ改良の余地はあるのだろうけれど、彼の作風を踏まえると、このぐらい素朴なほうがグッとくる気もするので、デモ音源という位置づけであっても、聴かない理由にはならないのです。
配信版の1曲目となるのは、「だめだこりゃ」。
はっちゃけた感もあるロック色が強いナンバーで、アルバムのスタートの景気づけにはぴったり。
雰囲気のある「あおく燃える」からスタートする会場限定盤のほうが、一航さんらしさはあるようにも思いますが、プロジェクトの1曲目に少し邪道な楽曲を送り込んでブラフにする天邪鬼っぷりは、これはこれで"らしい"と言えるから面白いもので。
この曲を噛ませたうえで聴く、切なさをぎゅっと凝縮した「95センチ」での"これを待っていた!"という高揚感。
これはたまらないですよ。
もう1曲、配信版のみに収録された「うそ、うそ。」は、切なさを更に増幅させて届けられたミディアムナンバー。
繊細に紡がれたメロディが、感情優先で掻き鳴らされるシンプルなギターによって、よりエモーショナルなものになる。
綿密なアレンジも良いのだけれど、プリミティブな化学反応だけで歌い上げるからこそ感じられる強さもある。
一航さんの真骨頂が、このシンプルさの中に垣間見えました。
アクセントとなる「ホルムアルデヒド」でタメを作って、ラストを駆け抜ける疾走チューン「ロックに殺された」でクローズする流れも見事。
ロマンティシズムと感傷が交錯するメロディラインと、沈黙を破って音楽活動を再開する期待や葛藤が重なっているようにも見える歌詞のメッセージ性が、こうも胸を抉るのかというインパクトを残しています。
地下活動が長かったことが奏功しているのか、良い意味でイチゼロ年代で積み上げられたシーンの流れに染まっておらず、彼の音楽が純粋なままここにあるという事実は、もっと広く当時のファンに知られるべき大事件かと。
もっとも、当時を知らなかったとしても、十分に満足できる音楽を奏でているのは間違いないので、まずは先入観なしに触れてみてほしいものです。