イワンにばかって言っておいて / アマミツゝキ | 安眠妨害水族館

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イワンにばかって言っておいて/アマミツゝキ

 

1. イワンにばかって言っておいて

 

Vo.眞田一航によるプロジェクト・アマミツゝキ、活動1年目の集大成となるデジタルシングル。

 

3ヶ月連続で配信されてきた楽曲群の最終章。

最後に届けられたのは、切なく胸に刺さるミディアムバラードでした。

アコースティックギターの音色を効果的に用いて静けさを表現しつつ、徐々に広がりを見せて、一航さんの歌声の魅力を最大限に発揮。

優しいファルセットから、力強い歌唱に切り替わる感情のスイッチの切り替えには、いつもながら目を見張るものがありますね。

 

イワンとは、トルストイの小説などで知られる、愚直であるが最後に幸運を手にする主人公。

本作は、それを前提に、現実では、そんなに都合よく幸せにはなれないよ、という皮肉が込められています。

もっとも、それは悪態をついて批判的な立ち位置をとっての皮肉ではなく、精いっぱいの強がりのような。

聴いていると、その裏に見え隠れする後悔や孤独、寂しさや侘しさが積もり積もって、波のように押し寄せてくるのです。

このタイトルで、こうも涙腺を刺激されるとは思わなかったな。

 

初夏から夏本番に向けての連続リリース。

想い人が隣にいない、という情景には無機質な冷たさを感じさせる一方、漂う空気は熱を帯びていて、じっとりとした湿度を纏っている。

目を閉じて、この曲を耳にして思い描いた季節感は、間違いなく夏。

暑さのピークにぶつけてリリースする音楽性としては意外なのかもしれませんが、アマミツゝキにとってみれば、この裏切り方をするからこそ、このタイミングでドロップする意味があるといったところでしょう。

相変わらず、純粋に響く作品だな、と感心するしかない1曲です。

 

<過去のアマミツゝキに関するレビュー>

ダイスキ

上昇気流

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