壊れた太陽/ホタル
1. 壊れた太陽
2. 9才(2019.11.30 live収録)
3. 西口改札ラプソディ―(2019.11.30 live収録)
4. 落夏星(2019.11.30 live収録)
5. サクラチル(2019.11.30 live収録)
6. 四季(2019.11.30 live収録)
ホタルの会場限定シングル。
再録曲1曲と、ライブテイクを5曲収録した、実質的にはミニアルバムサイズとなっています。
本来は、2020年4月の単独公演から販売される予定が、コロナ禍によって11月にリリースがズレ込んだ形。
そのため、リリースの発表から半年以上待たされることとなったわけですが、その時間も味わいになっているのかな、と感じます。
というのも、ライブアルバムとしての要素も強い作品だから。
約1年前、フルアルバム「事件」を初披露した際の単独公演のライブテイクが使われているので、この1年の間で、彼らがどう音楽と向き合ったのか、ライブで聴く今の音と、CDで聴くあの時の音、これを比べられるのが肝になっている気がするのですよ。
ライブ会場限定でのリリースになっているのも、そんな思惑があったりして、というのは考えすぎでしょうか。
唯一のスタジオ音源は、「壊れた太陽」。
これは、2004年に一旦のラストシングルとして発表された「手」のカップリングとして収録されていた楽曲ですね。
昭和歌謡六区から"やさぐれロック"にコンセプトを転換していた後期hotaruを象徴するような楽曲だっただけに、当時としては、初期の面影がある「手」だけに注目してしまっていたのだけれど、ここにきて復活を果たしたといったところ。
昭和歌謡六区をなきものとしない復活後のホタルが改めて演奏することで、邪念なくすっと聴くことができたのです。
歌詞については、何を伝えないのかよくわからない抽象的なもの。
Vo.慎一郎さんの表現力を活かすには物足りない、というのは依然としてあるのだけれど、サウンド的にはタイトに攻めるスリリングなロックンロールで、聴かせることとライブ映えすることを両立しているのではないかと。
結果論ではあるけれど、オーディエンスを巻き込むことができないライブ環境下において、この曲を発掘したというのも、運命めいたものを感じます。
導入での勢い付けにも使えるし、歌モノパートが続いたときのアクセントにも良さそう。
なんだかんだで、やさぐれロックにも懐かしさを感じる今、足りない部分を補う最高のピースになったと言えるでしょう。
ライブテイクについては、「落夏星」以外、すべて復活前の楽曲。
素材がアルバムのレコ発ライブだったことを踏まえれば、この偏りには意図を感じます。
体に染みついているから、世に出すライブテイクに恥じない演奏になりやすい、という単純な話なのかもしれませんが、ここは、復活前も復活後も同じホタルなんだよ、というメッセージ性を受け取りたい。
現在、セルフカヴァー作品を制作中という彼ら。
もしかすると、このアレンジでのライブ演奏はもう聴けないかもしれないわけで、そう考えてみると思い入れは更に高まっていくのでは。
「壊れた太陽」というマニアックな選曲や、このご時世において会場限定という販売形態は、コアなファン向けと捉えてしまいがちだが、コンパクトながら、ライブテイクがベスト盤的な構成になっているので、実は初心者向けと言えなくもない。
オーディエンスの盛り上がりが、声として収録されている本作。
これを再現するようなライブが再び開催できる世の中に戻ると良いな、と願いつつ、余韻に浸ってしまう1枚です。
<過去のホタル(hotaru)に関するレビュー>