ヒトオト / hotaru | 安眠妨害水族館

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ヒトオト/ホタル


1. たからもの。
2. 野良犬の詩
3. 未練
4. 死にたがりと天
5. 積木
6. ハロー

2004年にリリースされたhotaruのミニアルバム。
ex-ROUAGE、ex-STRAY PIG VANGUARDのRayZiさんがプロデュースを担当した作品です。

ホタルから、hotaruへ。
楽曲としても、それまでの昭和歌謡六区から、やさぐれロックへと変化していく過程で発表された、アンプラグド・アルバムとなります。

収録曲は、彼らのベスト的な内容。
代表曲である「たからもの。」、メッセージ性の強い「野良犬の詩」、昭和歌謡のイメージを焼き付けた「未練」、ロック色を強めながらも、歌われる内容は慎一郎節満載の「死にたがりと天」。
どれもが、"ホタル"名義の彼らを代表する名曲ばかりで、それがアンプラグドになって、どう変わっていくのか、期待と不安に溢れた一枚でもありました。

結果としては、熱量高い激唱が強みであるVo.慎一郎さんのテンションが低めになっていたこと、アングラ感が薄れ、なんとなくお洒落にリメイクされていたこと等、オリジナルバージョンで強烈なインパクトとなっていた部分が削ぎ落とされ、マイルドになってしまった印象。
音楽性が変わりつつあることに危惧していたリアルタイムのファンにとっては、ショッキングな内容だったのは確かでしょう。

一方で、発売から10年経って改めて聴いてみると、そこまでがっかりするクオリティではなかったな、と思えてくる。
素直に別バージョンとして聴けば、きちんとアレンジを再構築して、楽曲の今まで知らなかった一面を引き出そうと試みていたことがうかがえるのです。
「たからもの。」では歌詞が追加されていたり、「死にたがりと天」などは、あの原曲がここまでお洒落になるものかと驚かされる。
"慎一郎&杏太"としてアコースティックイベントにも出演していただけあって、こういう雰囲気が似合わないというわけでもないし、タイミングさえ間違わなければ、もっと正当な評価を得られていたのかなぁ。

なお、ボーナストラック的に、新曲も2曲収録。
「積木」は、その他の楽曲の雰囲気を引き継いで、物悲しく、淡々と言葉を詰め込むタイプのミディアムナンバー。
コーラスを重ねて、声で空間を埋めていくようなアプローチが面白いです。
終盤、声を張り上げていくあたりも、なんだかんだでツボ。

同じく新曲の「ハロー」は、賛否両論巻き起こりました。
アコースティック・デュオが路上で歌っていそうな、ハッピーチューン。
確かにアンプラグドではあるのだけれど、彼らに明るい楽曲は求められておらず、なかなか評価は伸びなかったですね。
ジュリィーの活動も踏まえて聴けば、案外馴染んでいるとも思えるし、悪くはないのだけれど、やはり、これもタイミングということだろうか。
作品全体の雰囲気からも、浮いていたところは否めませんでした。

オリジナルバージョンを一通り聴いているようなリスナーにとっては、"カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバー"みたいな感覚で楽しめるかしら。
歌詞が重過ぎて、ホタルの楽曲は聴く気になれないなぁ、というときにも、これならさらりと聴けるというのも魅力なのかもしれません。

ただし、本作から彼らの音楽を辿って行こうとすると、ミスリードになってしまうかな。
あくまで本質の部分を堪能したうえで、アンソロジー的に聴いておきたい一枚。

<過去のhotaru(ホタル)に関するレビュー>
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歌謡サスペンス激情