月の花/FANATIC◇CRISIS
1. 月の花
2. 月の花(instrumental)
FtCのインディーズ3rdシングル。
「Rain」と2枚同時でのリリースとなります。
1997年にメジャーデビューする彼ら。
本作が発表された1996年は、それに向けてスパートをかけるように目まぐるしい活動ペースでした。
フルアルバム「MASK」、シングルの2枚同時リリース、そして、ミニアルバム「MARBLE」。
まったく出し惜しみする気のない展開で、規模を一気に広げることに成功し、結果として、メジャーでの息の長い活動の下支えとなったのは言うまでもないでしょう。
さて、この「月の花」は、Gt.Shunさんが作曲を担当したメロディアスチューン。
サビからのスタートですが、そのフレーズがインパクト抜群だったのですよ。
小刻みに叩き込まれるドラムのキメが特徴的で、突っ込むような印象を与える。
それが、実際のテンポ感以上に勢いを感じさせ、ノリの良さを演出していました。
更に、Vo.石月努さんが紡ぐポップなメロディが効いてくる。
楽器隊のアレンジとしては、ダークな雰囲気を残しているものの、メロディそのものはキャッチーさを追求しており、演奏のギミックだけでなく、しっかりと歌メロも耳に残るのです。
その意味では、歌謡曲調のメロディが映えるテンポに抑えたことも重要なファクター。
マイルドな印象になりすぎないように、勢いや激しさを上乗せするギミックを加えたサビを頭に置き、ファーストインプレッションを鮮烈にした構成は、見事というほかありません。
ちなみに、インディーズ期は、まだ努さん特有のカタカナを交えた歌詞は登場せず、耽美さを意識したワーディングが多いでしょうか。
退廃的な世界観から、サイケなイメージを切り取って、ポップネスに昇華していくFANATIC◇CRISISの音楽変遷。
この辺りからも、過渡期だからこその試行錯誤が感じ取れるので、俯瞰的に楽曲構造を見てみるのも面白いですね。
結果論的ではありますが、彼らの歴史の中でもV系の王道にもっともすり寄った時期でもある1996年。
アイテムとしては入手が難しいシングルとなりますが、導入として聴くには、これ以上ないぐらいのキラーチューンに仕上がっているのかと。
なお、カップリングのインストヴァージョンは、カラオケではなく、イメージSEとして大幅にリアレンジされたもの。
8cmシングルの骨董品的な価値も手伝って、コアなファンであれば手元に置いておきたい1枚です。
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