beautiful world / FANATIC◇CRISIS | 安眠妨害水族館

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beautiful world/FANATIC◇CRISIS

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1. beautiful world
2. 恋の匂い
3. ノクターン
4. フローズン
5. source
6. 真冬の花
7. white rush
8. ハッピーピープル
9. source(Piano)

FANATIC◇CRISISのコンセプト・ミニアルバム。
2001年の作品です。

テーマは、"冬"。
この頃は、すっかりダークでサイケな印象は薄れ、完全にカジュアルなポップロック路線が定着していたFtCですが、強みであったカラフルなメロディワークを、冬の持つ"白"のイメージに凝縮したことで、キャッチーさが際立つ構成となっています。

メインコンポーザーであったVo.石月努さんのキャッチーさに長けた歌メロのセンスは、このテーマとの相性は抜群。
ところどころ、ヒットチャートを賑わすような歌謡ポップス的なアプローチが取り込まれているので、所謂白系バンドが得意とする真っ白な世界観というよりは、若干、垢抜けたお洒落さがあるでしょうか。
そのバランスが、また絶妙で、都会に降る雪を連想させるというか、ドラマのワンシーンで流れてきそうな雰囲気がある。
キラキラした冬の町並みが、サウンドと一緒に映像として浮かび上がってくるのですよね。

浮ついた感じがしない、石月さんの歌い方もハマっているかと。
甘く響くミドルボイスが、ときに切なく、ときに暖かく、耳から体内に染み渡っていく。
「真冬の花」が、特にグッときます。
ラップなのか語りなのか、よくわからない間奏でのくだりは蛇足な気がするけれど、それでも十分に名曲感が出ている。
基本的に、ポップな曲と、切ない曲で構成されたアルバムですが、単調には聴こえません。
歌モノ6曲にインスト3曲という、コンパクトにまとめたことも奏功。
大胆、かつ潔かった。

また、驚かされたのは「ハッピーピープル」。
こういうテーマを選ぶと、どうしても、季節モノとして織り込まれるイベントは、クリスマスに限定されてくる。
しかし、この楽曲は、高らかと「ハッピーニューイヤー!」と合唱をはじめるのです。
ヴィジュアル系で、新年ソングとは、なかなかニッチなところを。

本作においては、デジタルなサウンドは控え目。
デジデジしたアレンジの代替として、ピアノやストリングスを主体としたアンサンブルを用いています。
ツインギターのフレーズは活かしつつ、上モノで雰囲気を強めていく方向感。
シックというか、大人というか、一段と成熟味が増したような気もするなぁ。

バンドサウンドでガツガツ攻める、あるいは、サイケデリックに艶かしく・・・
そういった時代のFtCを求めてしまうと、落ち着いたな、メジャーシーンに馴染んで丸くなったな、という感想になってしまうのは否めません。

しかしながら、これはこれで、メロディメーカーとしての才能に特化した作品であるともとれる。
相変わらず、リズムが軽いのが気にはなるけれど、やはりポップスとしては良質なわけで。
個人的には名盤だと思っている一枚です。

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