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marvelous+/FANATIC◇CRISIS

¥3,240
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1. クラウディア
2. 鴉〈KARASU〉
3. 彼女は天使だった。
4. インヴェンダー
5. 月の魔法
6. Satire~憂いのサタイアン~
7. 檸檬
8. 神風
9. 真珠
10. KNIGHT!
11. everlove

FANATIC◇CRISISが2004年にリリースしたフルレンス。
結果として、これが彼らの最後のオリジナルアルバムとなりました。

カジュアル・ヴィジュアル系バンドとして全盛期にはヒットチャートを賑わせつつも、後期はなかなか結果が出せなかった彼らでしたが、本作はチャートのトップ20に食い込むなど、最後の力を見せつけた形。
氷川きよし、ビリケンとのユニット、CROSS#CLOVERでの楽曲をリリースするなど、メディアへの露出が増えたことも寄与していたのでしょうが、やはり、底力があったということでしょう。

内容についても、その実力を証明するものとなっているのかと。
インストを含まない全11曲で、どれもが粒ぞろい。
Gt.KAZUYAさん作曲のポップナンバー、「クラウディア」でスタートすると、歌謡曲とロックテイストが融合した「鴉〈KARASU〉」、渋い路線で来たなと驚かされる「彼女は天使だった。」、彼ら流のダンスチューンでニヤリとさせられる「インヴェンダー」と、一見、方向性はバラバラ。
だが、根幹がしっかりFtCのサウンドに染まっているのがわかるというか。
初期のサイケデリックな音楽性は部分的に出てくる程度に抑えられてしまっているが、その分、積み上げてきたVo.石月努さんのポップセンスにより個性化されており、アルバムとしての筋が通っているのですよ。

その後も相変わらずアプローチは様々。
シングル「月の魔法」を中盤の盛り上がりとして持ってくると、ダークでデカダンな「Satire~憂いのサタイアン~」、ポップでほんのり切ない「檸檬」、本作中、もっとも激しさに特化した「神風」と、ある意味、やりたい放題です。
ただし、上記のとおりで一本の軸があり、俯瞰的に見渡してみると、なるほどメリハリがあるし、流れもあるような気がしてくるから面白い。
個人的には、「神風」は、努さんらしいキャッチーさと、バンドサウンドでガシガシ攻めるハードさが両立されていて、お気に入りのナンバーですね。

メッセージ性の強いバラード「真珠」からは、クライマックスに向かっていく。
ラストの「everlove」もバラードなのだが、間に切ないロックナンバー「KNIGHT!」が入ることで、それぞれが良さを失わない構成も見事。
そして、この「KNIGHT!」、大きなインパクトを残すわけではないが、名曲なのです。
ここできっちりリスナーの耳を引き付けるから、短いインターバルでバラードを続けるという曲順にしても、ダレずに、飽きずに聴くことができる。
どこまでが狙いかわかりませんが、この配置しかありえないという絶妙さがありますな。

1曲1曲の個性が強いのに、こうもバランスの良い作品に仕上がるのか。
オムニバスアルバムになってしまうそうなラインナップなのに、オリジナルアルバムとして成立しているのだから恐ろしい。
音楽ジャンルや、サウンドアプローチの方向性を飛び越えて、そこにズバっと芯を通すことができるメロディラインは、神業とすら思えます。

ポップさが強まり、歌詞もストレートに変化していったのは事実。
初期のファンからしてみたら、彼らが行き着いた音楽が求める形ではなかった、ということはあるのかもしれません。
しかしながら、だからといって、本作が評価されないというのは、あまりにもったいない。
FANATIC◇CRISISの集大成と呼ぶにふさわしい一枚。
全盛期しか知らないという人も、レンタルでもいいので耳にしてみてほしいものです。

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