正体不明/Chanty
1. piano♯6
2. 逆上のパルス
3. ファントムミュージック
4. パッチワーク
5. 君と罰(正体不明 Ver.)
6. スライドショー
7. おやすみ
Chantyの3rdミニアルバム。
ex-FIXERのGt.白さんが加入してからは、初のアルバム作品となります。
現体制になって、間もなく1年。
ライブの本数を重ねていく中で、白さんの存在感が日増しに高まっていく彼らですが、改めて新譜がリリースされて思うのは、もうすっかり馴染んでいるな、ということ。
新しい血が混じったという感覚はなく、従来どおりのChantyが正当な上積みをしてミニアルバムを制作した。
良い意味で、そんな風に感じたのですよね。
本作の幕開けは、ピアノをメインにしたインストナンバー、「piano♯6」を導入に用いて、勢いのある「逆上のパルス」から。
性急なリズムで焦燥感を煽り、サビではメロディアスに疾走していく爆発力も持ち合わせたファストチューンで、展開でのこだわりを見せつつも、直感的にゾクゾクするスピード感を与えてくれます。
続く「ファントムミュージック」も、実にスリリング。
わちゃわちゃしたお祭り騒ぎ的なノリも、サビで開けていくメロディも、複雑なリズムパターンも、絶妙なアレンジで衝動的に聴かせてしまう構成の妙が、なんともChantyらしいのですよ。
ここまでの流れは、そのままの曲順でライブのセットリストに固定できるな、というぐらいのパワーを帯びていて、ライブで得た手ごたえをそのまま音源に反映した前半戦、と言えるのかもしれません。
また、少し空気を変えよう、というタイミングで送り込まれる「パッチワーク」も、なかなか興味深い1曲。
お洒落なギターリフで紡がれるイントロに、繊細なコーラスワーク。
楽曲の流れとしてはとても自然なのだけれど、よくよく細部まで聴いてみると、ギター、ベース、ドラムがそれぞれ個々に異なる盛り上げ方にチャレンジしており、まさにパッチワークのような仕上がりでした。
そして、その自然な不自然もまた、彼ららしさを感じさせる要素。
特に新鮮な驚きが用意されているわけではないのだけれど、ひとつひとつのレベルアップが、成長を物語っています。
「君と罰」にしても、それを端的に示していると言えるでしょう。
なぜなら、2ndシングル「よくのかたまり」のリードトラックを、現体制で再録したものであるから。
大切に育ててきた楽曲を、今の彼らによるエモーショナルな演奏で再現することで、大幅なアレンジに取り組まずとも、進化を見せつけることに成功しているのです。
四拍子と三拍子が行ったり来たりする複雑性がある一方で、それらを自然な表現として受け取らせてしまう魔法がかけられているかのように。
終盤は、王道的に疾走していく「スライドショー」、広がりのあるミディアムナンバー「おやすみ」にて、こういうのも聴きたいなというリスナーの期待に、丁寧に応えていたイメージ。
もっとも、それを狙って制作されたわけではなく、結果としてそうなったというだけのことなのだが、要するに、収録された7曲すべてにChantyらしさを感じるのだ。
現体制になって数年が経過したベテランバンドならともかく、加入して1年未満のギタリストがいる彼らにおいて、ここまでの仕上がりは奇跡的。
もう少ししたら、手癖にプラスアルファを乗せていかないと厳しくなる局面は出てくるにしても、それにより本作の価値を貶めるものではあり得ません。
なお、タイトルのとおり、「正体不明」の不安が蔓延っている昨今。
このタイムリー性は、決して偶然ではないでしょう。
歌詞に込められたメッセージを、深読みしてみるのも面白かったりして。
<過去のChantyに関するレビュー>