壊創するシンポジウム/Chanty
「壊創するシンポジウム」 初回盤
2,916円
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1. 綺麗事
2. 赤いスカーフ
3. ねえ。
4. まっさかさまにおちていく
5. 優しいあなたへ
6. 雨傘
7. piano♯4
フルアルバム「 Chantyの世界へようこそ2 」から8ヵ月という短いインターバルで制作された2ndミニアルバム。
初回盤と通常盤で一部収録曲が異なっており、それ以外の楽曲も曲順が入れ替えられています。
4人編成が馴染んできた結果として、メンバーの個が強まった。
本作を聴いての第一印象は、まさにそんな感じでした。
メンバーだけでの音で、という拘りを捨て、楽曲にとって最善であれば上モノも解禁。
特に鍵盤の音色が至るところで効いていて、表現の手段も広がっているのかと。
1曲目の「綺麗事」から、見事としか言いようのない構成ですね。
アコースティックギターとボーカルのみのシンプルな出だしから、バンドサウンドとなってピアノも絡みだす美しい展開。
徐々に花が開いていくような華やかさがあって、後半で疾走しながらVo.芥さんがガナり続けるという意外性もすんなり受け入れられるから不思議なものだ。
これ以上ない導入なのだけれど、通常盤ではラストに収録されているということで、最初に聴いたのがそれであれば、どう響いていたのかも気になるところです。
「赤いスカーフ」や「ねえ。」は、特に楽器隊の主張が強く出た形。
これ以上主張したらバンドとしてのバランスが崩れるのではないか、というギリギリを求めるアプローチで、これまでの優等生的なイメージを覆していきます。
ただし、これだけ音がガチャガチャしていても芥さんの声を活かすという最優先事項だけは押さえており、その絶妙な感覚がChantyのサウンドだ、という確信を与えてくれるのですよ。
「ねえ。」においては、その芥さんまで暴れ出すという踏み込み方をしている部分もあるなど、相変わらずチャレンジ精神は旺盛。
イメージを壊しておいて"らしい"と思わせることができるのだから、面白いもので。
ストレートにヴィジュアル系を突き詰めたような「まっさかさまにおちていく」も、これまでにはあまり見られなかった方向性。
彼らなりの逆ダイ曲といったところで、歌モノを追求しても、こんなにライブ映えしそうな楽曲が出来上がるのかと感心してしまいます。
初回盤にのみ収録された「優しいあなたへ」については、PIERROTのフォロワー的なサウンドメイクになっていて、これはこれで往年のV系ファンであればニヤリとできるのでは。
終盤に送り込まれた「雨傘」は、形としては正統派の歌モノですが、よくよく聴いてみると、変拍子を多用したマニアックさ、シンセギターを取り入れた雰囲気作りなど、一筋縄ではいかない工夫が敷き詰められています。
やりがいを感じているのか、成人さんによるドラムが活き活きしているような。
「piano♯4」は、ピアノとギターとコーラスのみで構成されたセッション的なインスト曲。
初回盤のクロージングを飾るナンバーとして機能しており、"色々なベクトルを示してはいるけれど、なんだかんだChantyだったよね"と思わせるには十分なほど、彼らの世界観を感覚的に表現していました。
ある意味で、短い制作期間でアルバム単位で楽曲を書き下ろしたのが奏功したのではなかろうか。
綿密なアレンジによってひとつのキャンバスに絵を描くような徹底された統一感があるわけではありませんが、そのおかげではみ出したメンバーの個性が、新たなスパイスとなってバンドサウンドを活かしているのだもの。
セールスコピーとしては、現体制での集大成の作品とのこと。
確かにその通りなのですけれど、むしろ伸びしろや可能性を提示したスタートと捉えたほうがしっくりくるでしょうか。
まだまだ、この先を感じることができる1枚。
<過去のChantyに関するレビュー>