貴方だけを壊して飾ってみたい / Chanty | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

貴方だけを壊して飾ってみたい/Chanty

 

1. 貴方だけを壊して飾ってみたい

 

2016年にリリースされた、Chantyのライブ会場&通信販売限定シングル。

恋愛ゲーム「貴方日記~ユーフォリア~」のテーマソングとなっています。

 

表題曲、1曲を収録。

ハネたリズムが特徴的で、このままお祭り騒ぎ的なノリで進行していくのかと思いきや、サビに向かうにつれ、メロディアス性が高まっていきますね。

イントロを聴いて想像した曲調と、サビが終わったときに残る印象。

この二つのギャップが肝であるのかと。

 

まず、序盤は軽快なスタートを切る。

楽し気な雰囲気で、これは盛り上がるアッパーチューンだぞ、という予感を与えます。

しかし、サビに入るとテンポを落として、聴かせる展開に。

緩急をつけて、切なさを際立たせていく手法を採用していました。

 

もっとも、これだけであれば、よくある選択肢のひとつ。

必ずしも驚かされる構成ではないのでしょうが、彼らは、ここからが上手かった。

テンポを落とすのは一時的で、サビの後半は、憂いを帯びたまま再び疾走。

曲の切れ目を意識させない繋ぎとなっており、結果的に、次の展開が読めないドキドキワクワクが生まれていたのでは。

歌い尻でトーンを落とすメロディも効いていて、気持ちの良い夕方の風が通り抜けていくようです。

 

このギャップを理解したうえで、もう1度耳にしてみると、更に面白い。

先ほどは楽し気に聞こえていた和メロが、今度は少し寂しげにも聞こえてくる。

そのまた次は、物悲しかったサビ入りの部分が、優しく感じられたりもする。

同じ曲を聴いているはずなのに、再生するたびに、表情が変わっていくのだ。

これは、なんとも興味深い体験でしたよ。

 

1曲入りで1,000円という価格設定は、やや高い気はするものの、それだけの自信を感じさせる。

何度も楽しめる楽曲であることを踏まえれば、"確かに見合っている"と納得してしまうぐらいの仕上がりでした。

ただし、発売予定の2ndアルバム「Chantyの世界へようこそ2」に、バージョン違いが収録されるとのこと。

販売経路が限定されていたため入手していない、あるいは価格的に手が出しにくいというリスナーは、無理に手を出さずに、こちらを待ってみるのも一案だと思います。

 

<過去のChantyに関するレビュー>

不完全な音楽

Chantyの世界へようこそ